後継者

親子の事業承継で”被害者”がどの様にしてできるのか?

とかく、先代は後継者に負荷をかけようとします。
私が経験した中では、
・借金を背負え
・報酬を減らすぞ
といったものです。

先代が私を苦しめるために言ったわけではないのはわかりますが、
双方を被害者にしてしまう危険性をはらんでいます。

実は、事業承継における親子の問題の一つは、双方が被害者になっている、という事なのです。


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被害者とは、捨て置けない表現に見えるかもしれません。
しかし、実際、親子での事業承継の中では、お互いが被害者意識を持っている事が非常に多いように感じます。
そのカラクリを順を追って説明してまいります。

 

まず、先代は、後継者を会社に入れて、自分の思うような働きをしない後継者を目にする。
その時に考える事は、どうすれば後継者は自分の思うような働きをするのだろうか、という事です。
結果、行うのは負荷をかける事です。

借金を背負わせる、今の働きではこの給与は高すぎるから下げるぞ、他の社員の前で罵倒するなど。
あの手この手を使って、後継者を動かそうとします。

 

例えば、借金を背負わせるという話は、当社でもありました。
会社の社屋を建設する際、これだけの借金を背負え、と。
この時点で、私の父に対する不信感は、決定的になりました。
そもそも、私は社屋など建設しなくとも、賃貸のオフィスの方が便利だと思っていました。
ましてや、先の見えない時代に借入金など、バカげている。
この人は、アホちゃうか?と正直思いました。

理由を聞けば、まったく理解できない理由ばかり。
すべて論理的に反論すると最後は、「わしの夢やった。」という訳です。

 

その言葉で私はしぶしぶ保証人の印鑑を押しましたが、全く納得はしていません。
この時、私の心の奥底に沸きあがった文字はまさにこの一言でした。
「オレは被害者だ。」

当時は、相手の心境を考える余裕もなかったのですが、今改めて感じるのは、きっと先代も同じことを思っていたことでしょう。
親の言う事もきかず、好き勝手やっている息子。
どうも一生懸命さが足りないし、親の七光りに胡坐をかいている。
しかも、後継者のおしりに火をつけるべく行った事は、ことごとく理屈をこねて拒否をする。
なぜうちの後継者は、こうも熱心さが足りないのか、と。
後継者さえもっとしっかりしていれば。
そう。きっと先代も、被害者だという意識を持っていたでしょう。

 

「被害者意識」というのは厄介なもので、その中にどっぷりつかっているときはそれがあたかも正当な考えに思えます。
しかし、これは自分の責任を相手に転嫁しているだけの行為です。
実際に私自身、どこかやる気をなくしてくさっていた部分もないとは言い切れません。
先代もまた、人を動かす技術を学ぶべきタイミングで学んでいませんでした。

 

これは親子関係のみならず、社員との関係や、その他の人間関係においても言える事です。
おかれた境遇や、一人ひとりとの関係性、これをその境遇や関係のせいにするのは簡単です。
しかし、そうやって被害者を決め込んでいるうちは、何も変わらないというのも現実です。
私たちは、「自分が被害者である」という認識を隠れ蓑にして、変化することを拒んではいないでしょうか。

その状況を変えられるのは自分しかいません。
相手に期待すると、相手が変わらなければそれもまた被害者意識を増長します。
自分は変わらず、相手を変える。
この考え方が、何層もの被害者意識を上塗りしていくのです。

 

特に今の時代は、親子経営のコミュニケーションは難しいものです。
たとえば、私は、今の社内で「最も数多くの新規顧客」を創出している人間です。
しかし、これはWEB経由であり、親の目から見た「努力や苦労」がない状態ですし、実務には私の仕事時間の1割程度しか割いていません。
当然、親からは評価されません。
しかもそのために、頻繁にWEBサイトを更新する作業は、先代から見ると遊んでいるように見えるのでしょう。
むしろそれより、朝から晩まで駆けずり回って、1件の契約を頂いてくる営業マンの方が、先代の価値観には近いのです。

肉体労働的努力こそが、先代の考える努力です。
一方、それを労働生産性を低くしている諸悪の根源だ、と考える私とでは上手くいかないのも無理もありません。

そこに後継者として被害者意識を持つのは、当然かもしれません。
しかし、親に評価されることを基準に持たなければ、被害者意識などまったく感じることがなくなります。
言うだけなら簡単ですが、そうなるにはそれなりの苦労はあります。
ただ、目指す方向として、自分が親や周囲の人間に評価されることを目指すのではなく、自分として納得できる仕事に注力することで、この被害者意識を手放すことができます。

もし、親との関係で苦しい思いをされているとしたら、そんな事を考えてみてはいかがでしょうか。

 


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