後継者

後継者が事業承継計画や財産移転計画を期待しないほうが良い理由

事業承継って会社にとっては一大事です。
さらに言うなら、先代社長にとっても、後継者・アトツギにとってもやっぱり一大事です。
これを生涯のうちに何度も経験するものではないですし、しかも従業員なんかも抱えた会社という組織の存亡にかかわることです。
普通の感覚から言えばそんな一大プロジェクト、しっかりと内外のコンセンサスを得ながら進めていくというのが正しいと思われると思います。
しかし、実際にその通りに行われている企業はかなり少ないと思われます。
中小企業においては、しっかりとした計画に則ってやられているほうがレアではないかと思います。

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なぜ事業承継計画は実行されないのか?

事業承継計画は誰も歓迎していない!?

多くの企業において、今は代替わりの時期に入っています。とくに中小企業においては、目まぐるしく変わる経営環境への対応は、若く、新しい感性が必要である、というのは多くの人が認識しているところだと思います。しかし、社長が60歳を過ぎても、70歳を過ぎても、事業承継は始まらない。あるいは、事業承継計画はつくられない。
もしかしたら、税理士などにすすめられて事業承継計画はつくったものの実行されない。
特に後継者から見たとき、そういった事業承継計画があるのかもないのかもわからない状態であることが多いのではないかと思います。
先代である親はきっとそれなりに考えてるとは思うけど、後継者としてはどういう計画なのか全貌を知りたいというのは偽らざる本心です。

そもそもこんな大事なことを、当事者が知らずに日々が過ぎていくということが後継者にとっては非常に不安でもあり、恐怖でもあるかと思います。
そういって先代に詰め寄ったとしても、帰ってくる答えは今一つ要領を得ない。

なぜそんな状態が起こるのかというと、答えはシンプルです。
事業承継をだれも歓迎していないということなのです。

事業承継を歓迎しない理由

会社存続のために大事なことと言いながら、なぜ会社でそれをしっかりとやらないのかというと、誰も事業承継を歓迎していないということをお話ししました。
ここからはその理由について考えていきます。
まず、親である先代社長の立場について考えてみましょう。
先代社長は、会社の存続も大事ですが、もう一つ大事なものがあります。
それは、会社に関わり続ける、ということです。
これをもう少し言い換えると、「自分が存在する価値を実感できる場所」が大事だ、ということです。
今、高齢な社長はどんな人生を送ってきたかに少し思いをはせてみてください。

基本的に、若いころから仕事一筋で、寝るか食事するか風呂に入る以外は、ゴルフか飲み屋か仕事場にいたのではないでしょうか。
こういった昔気質の社長は、仕事と、仕事を通じた人間関係を取り外してしまうと、自分がいる場所がないというのがほとんどではないでしょうか。
大抵、仕事を通じた友人は仕事を離れると関係が薄くなっていきますので、結局自分一人。
男性の場合、奥様がいるとはいえ、奥様は逆に仕事熱心な夫にながいこと一人で放っておかれたので、地域での様々な人間関係を作っていますから、ご主人が疎ましい。
そうして、会社に行けなくなると、家にも居場所がなくなり、それ以外にいる場所がないという状況になってしまいます。

この事を先代社長が意識的に感じ取っているとは思いませんが、仕事をやめた先の自分の居場所が真っ暗でイメージできないと言った強い不安や恐怖心が無意識レベルで襲い掛かってきます。
だから、頭では「そろそろ代を譲らねばならない」という気持ちはあるのですが、行動は「今の立場をいかにして守るか」という方向に動くのです。

結果として、本音が勝って事業承継計画は実行されなくなります。
そういった話を遠ざけるため、誰かからその話をされると不機嫌に起こりだしたり、その場を立ち去ったりします。
無意識レベルの不安が、そういう行動をとらせているのです。

後継者だって先代社長の目論見に加担することも

そうやって事業承継を避けているのは先代社長だけとは言い切れません。
たとえば、後継者・アトツギだってそこに加担していることがあります。
それは、先代社長の後を受けて経営者となることの重圧から逃げたくなるということがあるのではないかと思います。
わからないことも多いし、いざとなるとかなりシビアな決断さえももとめられる経営者になることに恐れを持っていたりします。
だから、最後の責任は親がとってくれるという前提で、けど、自分が自由にやれたほうが嬉しい。
そんな立場を無意識で目指しているということもあるようです。

特に、「段階で気に事業承継を」ということを強調する後継者・アトツギの方は、まだ経営者としての覚悟が十分ではないので、少しずつお試しをしたいという気持ちが強いように思います。
やる、やらないの間で揺れているとき、先代社長が本気では譲ろうとしてないことを知ると、少しホッとする人もいるのではないでしょうか。

事業承継はある日突然にやってくる!?

先代社長の病気がきっかけになることも

このような事業承継の問題ですが、これが一気に動くときがあります。
それは先代社長の体調不良などがきっかけになることが多いようです。
例えば私の経験では、先代社長はリウマチを発症したり、動脈瘤の手術をしたりといういくつか身体の問題を抱えたことがありました。
ピンピンしてた時は、私がまだまだ頼りないとかで代を譲るような話はあまりなかったのですが、病気で動けなくなると「そろそろ代替わりだな」なんて話が出てきました。
しかし、治ると元の通りフルタイムで働いたりしてるんですけどね。

これが初めての経験だと、後継者・アトツギとしては精神的な動揺が大きいのではないでしょうか。
病気で動けないから後は頼んだ、と渡されたバトンを握って、力不足とは思いながらも必死に走ろうと思っていたら、トントンと肩を叩かれバトンを戻せと言われる。
けど、覚悟を仕切れない後継者の場合だとそこで少しホッとしたりするかもしれません。人には言えませんが私もそんな思いをしていました。

でなければ、きっと「今更しゃしゃり出てくるなよ」とまではいわないまでも、バトンを戻すこともなかったでしょう。
認めたくはありませんが、私も先代が戻ってきてホッとしていたように思います。

ただ、復活不可能なくらい体力がそがれてしまった場合、そこからは後継者の時代です。
その時はぜひ全力でやりつくしていただきたいと思います。

奪うか備えるか

前述の通り、事業承継計画がしっかりとつくられない、あるいは実行されない背景には登場人物それぞれの強い心の葛藤がかかわっています。
これを例えば強制的に動かそうとしても、不満が噴出し、双方の関係は良からぬ方向に行ってしまいます。
本当に今すぐ何とかしたい後継者であれば、こういったところが原因で親を無理やり追い出したり、自分が飛び出して起業するというシーンがけっこう多いようです。
しかしそこまでドラスティックなやり方を好まないのであれば、まずはいつそうなってもいいように気持ちを整える。言ってみれば覚悟を持っておくということが大事です。
精神論的になりますが、気持ちをどう持つかはかなり大事です。

一方で、親とのコンセンサスを得ながら一つ一つ薦めたいという場合は、親である先代の気持ちを理解すると動きやすくなります。
前段でお話したことを踏まえたうえで、親である先代社長の居場所を常に何かしらの形で保つということは大事な要件の一つだと思います。
仕事の特定の分野については可能な限りお任せするとかですね。
また、先代社長が社内で何をやっても言っても気にならないような、強固な従業員との人間関係・絆づくりも重要です。
先代社長が社内で変なことをいっても、ちゃんと軌道修正できるような状況というのは、その情報がフラットに入ってくる環境が大事です。
そのためには、社員との絆づくりが大きな力となります。

どうしても先代の「早く引退したい」という言葉を真に受けているとわかりにくい心の奥底を解説してみました。
皆様の今後のマネジメントの参考になれば幸いです。

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