後継者

後継者は”体験”をデザインしよう

先代と衝突する、というのは後継者の悩みではよくあるパターン。
じゃあ、衝突って、なぜ起こるのでしょう?
簡単です。
違う意見がぶつかるから衝突するわけです。

で、相手を説得しようとする。
それはいいかえれば、相手を(自分の都合に合わせて)変えようとする行為です。
まあ、普通は反発します。

何も知らない第三者は「親子で話し合う機会を作れ」と気軽に言います。
しかし、親子での話し合いは、喧嘩を誘発し、深刻な確執を生み出す。
その理由は簡単で、双方が相手を説得しようとするからです。
じゃあ、どうすればいいのでしょう?
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後継者としての理想は、
「ああ、お前の言うとおりだ。お前に協力しよう」
先代が素直にあなたに協力する状態ではないでしょうか?
そんな状態を作りたいがために、親を説得しようとする。
けど、説得しようとすればするほど、会話は険悪になる。
結果、ケンカして終わる。

良くあるパターンじゃないですか?

それもそのはずで、説得というのは冒頭に書いたとおり、
相手をこちらの都合に合わせて変えようとする行為。
普通人は変わりたくありませんから、当然反発する。
だからケンカになるわけです。

 

しかし、いろいろ観察してみると、面白いことに気づきます。
例えば、私の父は、ある日、これまでの言葉を180度転換させたことがありました。
それは、体調を崩して、身体が動かしにくくなった時。
これまで引退すると言いながらしなかったのに、こういい始めました。
「自分はもう仕事ができる状態じゃないから、後は頼んだ」と。

まあ、幸い体調は復活して、またも180度転換。
「生涯現役だ」
といってますが(笑)

この先代の変化をもたらしたのは、”体験”です。
身体が動かない状態を五感で感じ取った。
だから、今まで通りにいかないことを学び、そこに応じて主張を変えたのです。

 

経営コンサルタントの大前研一さんの有名な言葉があります。

人間が変わる方法は3つしかない。

1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目は付き合う人を変える。

この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。

これは何をやっているのか、というと、触れる情報を変えているということではないかと思うのです。
情報というのは、文字や言葉だけではなく、五感をフルに使った”体験”です。

ハワイに行ったことがない人が、いくら旅行ガイドを読んでみてもハワイの一部しか知ることができません。
しかし、実際に行ってみると、意外と空気が湿ってるとか、あちこちで肉の焼くにおいがするとか、
けっこう風があるとか、ワイキキなら結構英語ができなくても何とかなるとか、まあ圧倒的な情報量が五感を通して入ってきます。
だから行ってみた人は、また行きたいと思うし、行った事のない人は、まあこの程度かな、と想像で終わる。

 

さて、話を元に戻しましょう。
相手を変えようと思うとき、説得しようとすれば反発されるなら、あなたにできることはその人の体験をデザインすることです。
たとえば、あなたが「会社は今と同じことを繰り返していてはいけない」と繰り返し主張しても、きっと先代はなかなか意見を変えません。
しかし、先代があなた以外の環境から知覚する情報を変えると、コロッと意見を変えるかもしれません。

社内で交わされる言葉、会社の中にもたらされる各種の情報、社風などなど。
先代を取り巻く環境を変えるといえば大袈裟ですが、先代が知覚する情報をかえれば、コロッと先代も変化する可能性は高い。
これを私は、「場づくり」と呼んでいます。
回りくどく見えて、自発的に人を変えるには、環境を整えるのが一番なのです。

だから、私が提案するのは、先代を説得するんじゃなくて先に会社を変えましょうよ、と。
それは物理的に変えるとハレーションも起こるので、人の関係性を変えていくわけです。
それがうまくいくと、先代は自然に変わります。
副作用としては、あなたがデザインした環境であるにもかかわらず、
「自分が自発的にやったことだ」
といいとこどりをされる可能性はありますが(笑)
まあ、そこは大きな心で許してあげてください。

さて、このことは”先代対策”だけの話ではありません。
社員教育はもちろんですが、自分の成長においても使える話です。
先代の体験、社員の体験、自分の体験、デザインしてみませんか?
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