友人同士だと、何の打ち合わせもなく一つの事に向かって行動できる。
別に友人同士でなくても、初めて顔を合わせたグループでもそれは可能です。
同好会や経営者団体でも、誰が取りまとめるでもなく、何となくやりきってしまう。
みんなで話し合い、工夫し、次第に効率が高まってくるのは普通の話です。
しかし、それを会社組織に移すと、なぜか上手くいかない。
言われたことをこなすことは誰でもやりますが、そこに工夫はない。
本来、会社組織だからこそ頑張ってほしいのに。
自分の会社に足りないものは、いったい何なのでしょう?
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先日、一般社団法人RINGの会という団体の主催するセミナーに参加してきました。
参加といっても、一般聴講者ではなく、主催者の裏方としてです。
前日から、資料を封筒に詰めたり、名札を作ったり。
そんな事を一会員としてやってきたわけです。
そこに集まるのは、ほとんどが経営者です。
日頃は、自分の会社の社員さんを顎で使っている(?)人たちばかり。
そんな人たちが、セミナー開催に際して、共同で作業をします。
下の画像は、イベント当日の朝7時半の風景です。
皆汗を流しながら名札を順番に並べています。
さて、この様子を見ていると、面白い事に気づきます。
特に打ち合わせはしなくとも、みな、上手に流れ作業で仕事をしています。
その場で「こうやったら早いかも」なんていいながら、役割分担を決めています。
この作業を指示した人は、最終的にこういう状態にしてほしい、という事はもちろん伝えています。
しかし、チームでのやり方や役割分担の詳細までは指示していません。
現場でたまたまチームになった人たちで、やってみて、改善して、またやってみる。
こういうサイクルを繰り返しています。
経営者の多くは、社内の仕事が常にこのように改善されていく様子にあこがれています。
そんな経営者ばかりが集まったから、そのように即興チームでも協働が上手く出来たのでしょうか?
恐らくそうではないでしょう。
学生であったり、小さな子供であったり、主婦でも、高齢者でも、レベルの大小はあれど、同じような仕事の仕方になるはずです。
しかし、これが、仕事の現場となると、なかなか起こりづらい。
はじめに言われたこと、やり始めたやり方を延々と繰り返すわけです。
では、こういった課外活動的なものと、仕事とでは何が違うのでしょうか。
私は、次の3つの要因があると思っています。
①その作業に対する報酬の有無
②上下関係というヒエラルキー
③心理的安全性の確保
この三つは常に連動しているので、項目を分ける必要もないのかもしれませんが、あえて理解を促すために具体的に分けてみました。
一つ一つ見ていきましょう。
まず、作業に対する報酬がある場合、これはビジネスです。
ビジネスである以上、報酬に見合った仕事内容が必要となります。
報酬に見合った仕事であるかどうかを判断するのは、雇い主です。
つまり、結果として、雇い主や上司の顔色をうかがう傾向が出てきます。
働く人の視点は、作業自体に注がれます。
作業のやり方の効率化や、作業のミスを起こさないやり方ではなく、自分が担当した作業にフォーカスします。
ボランティア活動は楽しいのに、仕事となると憂鬱。
これは、報酬とのかかわりがある事と深い関連性があります。
報酬が出る作業は、義務となり強制でもあるため、モチベーションが下がることが心理実験でも明らかにされている現実です。
会社の組織内部では、報酬を出さないわけにはいきません。
そこへの対策として、報酬と個別具体的な労働との関連性を薄める工夫。
そして内面から湧き出るモチベーションを刺激するため、社会性にコミットさせる方向にもっていくのが一般的のようです。
理念やミッションにフォーカスさせる経営が近年増えているのは、こういった背景もあるのではないかと考えています。
二つ目の上下関係について。
これは、仮に自分が思いついた改善案があったとしても、それを発言しにくい雰囲気を作る事があります。
下っ端の自分のいう事など、チームの参考にはならないだろう。
自分の中ではいいアイデアだと思うけど、自分が言わないほうがいいのではないだろか。
既に自分より経験のある先輩たちが、自分が思いつく程度のアイデアなんてすでに試した事があるのだろう。
「差し出がましい」という印象を自分に対して持ってしまう。
仕事以外の集まりでは、確かに多少の上下関係があるとはいえ、比較的意見が言いやすい雰囲気はあるのではないかと思います。
仕事上では、指示し監督する立場と、指示され監督される立場が明確になっていますが、仕事以外ではそれはあいまいです。
だから、仕事以外だと比較的発言が容易になるのではないでしょうか。
三つめの心理的安全性については、②と密接に関連します。
どんな意見を言ったとしても、受け入れられるという安心感。
気軽にどんなことでも口に出せる環境。
仕事上では、仕事における常識から外れた意見を言うのはご法度といった雰囲気があるでしょう。
柔らかすぎる意見を言うと、「何をふざけているんだ」と言われるかもしれません。
しかし、仕事をはずれると、それが冗談交じりに言えてしまう。
そういった雰囲気が、意外なアイデアを生み出すこともあるのではないでしょうか。
②におけるヒエラルキーは、この心理的安全性を確保しにくくなります。
近年、フラットな組織が好まれるのは、こういった事からでしょう。
随分前には、社内で役職で呼び合う事を禁止したりというブームがありましたが、それも最終的な目的はこの心理的安全性の確保だと言えそうです。
つまり、誤解を恐れず言えば、私たちは仕事について、まじめすぎるのではないかと思うのです。
もちろん仕事のレベルを上げていくとか、達成すべき目標に対して厳しくとらえることは必要です。
しかし、社内にいる間中、そんなにまじめである事を求めると、硬直化していくわけです。
仕事上におけるオンとオフを上手く使い分ける社員や雰囲気を作ると、冒頭のような自然と工夫できる組織ができそうです。
さて、後継者の重要な役割として、社内をまとめ、会社改革を行っていく事があげられます。
その中で、こういった、社内の雰囲気の改革というのは比較的優先順位の高いテーマといえるように思います。
そういった場合に、先代と社員との関係の中で防波堤となることが必要となることもあるし、通訳をすることが必要となることもあるでしょう。
とても大変な役割ですが、焦ると後継者であるあなたから気難しいオーラが出てきます。
ぜひとも、焦らずじっくり取り組んでください。
また、今回のように、社内を外れた組織(つまり2人以上の集団)の行動や、意思決定プロセスは、ちょっと第三者的に見ているととても参考となる部分が多いと思います。
ぜひともそんな会合に参加する機会があれば、会議の参加者として、という側面に加え、観察者として参加してみると面白いと思います。
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