たった一つの感情で理解できる、兄弟への事業承継の難しさ~解決策編~

前回の記事、「たった一つの感情で理解できる、兄弟への事業承継の難しさ~原因編~」では、
兄弟による事業承継が、どのような原因から分離の道を歩むかを考えてみました。

今回は、解決策編となります・・・が、これは何かをすれば、ある日突然うまくいく、というものではありません。
地道な取り組みが必要と言わざるを得ません。
その根底には、「よかれと思ってやった事」がことごとく裏目に出ることが多いのです。
兄弟の心理に配慮をせず、常識的な対応を行うことは非常に危険と言わざるを得ません。

裏目に出る親心

安易に「平等に扱う事」は危険な行い

実際のところ、兄弟による経営がうまくいかないとき、
親が兄弟を平等に扱おうとしてその関係がこじれることが多くあります。
これが、裏目に出ることが非常に多いのです。

そもそも、会社という組織では一定のヒエラルキーがあります。
社長が全体を統括し、部長が各セクションをまとめ、社員が現場で動きます。

ありがちなのが、こういったヒエラルキーに反して、
親は兄弟を同じように扱う事が多く、上役に対するマナーを教えない事が多いのです。

例えば、先代が社長の状態で、兄、弟の順で入社してきたとします。
先代の事を社長と呼ばせるのは当たり前としても、
兄と弟はどう呼び合いますか?
兄が例えば専務であったとすれば、兄の言動を優先させていますか?
恐らくそうではないでしょう。

兄は役職に不相応な扱いを受け、
弟は兄と同列とでもいう感覚をもってはいないでしょうか?

忘れてはいけない兄弟の性質

兄(姉)と、弟(妹)は経営上の扱いとして、平等ではいけないのです。
前回の記事、『たった一つの感情で理解できる、兄弟への事業承継の難しさ~原因編~』で指摘したとおり、兄(姉)はしっかり者であることを求められ続け、弟(妹)は甘え上手が身についています。

すると、弟(妹)は社員としてではなく、兄弟として親や兄(姉)と接するようになるのです。
そして兄(姉)は、まじめですからそこに違和感を感じる。
「自分が会社を背負って立とうという責任を持っているのに、弟(妹)はなんと楽な立場か。
しかもこれだけの重圧の中頑張ってる自分に好き勝手な主張を言ってくる」と憤慨します。

多くの場合、個人保証を行ったり、会社の裏方的作業をこなしはじめる代表者の役割に加え、金銭を伴った会社への貢献。
これらは評価される事も少なく、同列に扱われるのは、貧乏くじを引いたようなものとしか思えなくなります。

すると、兄(姉)の弟(妹)に対する扱いは、どんどん厳しくなります。
「親が甘やかすなら、自分が介入せなばならない」
という思いが膨らんでくるのです。

ここまでの話は、兄が上司で弟が部下というイメージで進めてまいりましたが、逆の場合でも同様で、
職責に応じた扱いを徹底し、兄弟を平等に扱ってはいけない
というのが私の結論です。

こういうと、大抵言い返されます。
「親としてそんなことはできない。」と。

そうやって、後々残るわだかまりを残すつもりなら、それも結構です。
しかし、会社にとっても、家族関係にとっても、決していい結果を残さないという事を覚悟してください。
ハッキリ言います。
事業承継においては、代を譲る立場の者も、譲られる立場の者も、
尋常ではない覚悟が必要になるのです。

この情報をお読みの方が、まさに渦中の方である場合は、ご自身が気を付けて頂くようにしてみてください。

すでに確執が起こってしまったら

考えられる3つの方法

もし、これから兄弟を社内に迎える、という場合は前段の内容を参考していただければよいと思います。
しかし、実際にはすでに確執が起こってしまっているケースのほうが恐らく多いでしょう。
そういった場合に、できることとして3つの方法を考えてみたいと思います。

1.物理的な兄弟間の距離をとる

企業規模がそれなりにある場合、兄(姉)を本社、弟(妹)を支店という形で物理的に距離をとることが考えられます。
但し、製造部と販売部の部門長であったり、管理部と営業部ぼ部門長といった具合に、
そもそも対立しがちな部署の長にそれぞれを置くと、会社全体の雰囲気が悪くなるので注意が必要です。

とはいえ、これはあくまでも緊急避難的な方法です。
コミュニケーションが取れない状況を作るので、いつまでたっても双方歩み寄る機会が少なくなります。

そこでお勧めなのが、兄弟のどちらかを社内ベンチャーという形で、新たなビジネススタイルを作り上げる、という仕事に就かせることです。
どちらがその仕事に適しているかは一概に言えません。
兄(姉)は、失敗を嫌う(引っ込み思案)傾向があり、弟(妹)は重大な決断を避ける(責任を負わない)傾向があります。
しかし、兄弟の確執が大きくなってくると、どちらかが「もう兄弟とはやっていけない」という結論に達しているケースもあるのではないでしょうか。
そういった思いがあるのか、ないのか、そのあたりを確認しながら物事を進めると、意外とスムーズに事が運ぶかもしれません。

この方法で、新たな事業が回り始めると、最悪将来分社せざるを得なくなった場合でも、比較的安心ですね。
そもそも元の会社自体も、大掛かりな転換期に入っている可能性が高いので、会社の改革の先鞭をつける意味でも、
試してみる価値はありそうです。

2.定期的なコミュニケーションをとる

もう少し穏やかな方法として、定期的なコミュニケーションをとる、という方法があります。
もちろん役員会・取締役会などで兄弟が顔を合わせる機会もあるでしょう。
しかし、出来れば1対1で話し合う機会を作る事は重要です。

というのも、もともとの確執の発端は、第三者から見れば些細なことであることが多いのです。
実際のところ、何が具体的にいやなのか、何が具体的に気に入らないのかは、本人たちさえも忘れていることさえあるくらいです。

そういったことを腹を割って話す機会を、月に1回くらいは持てるものであればベストです。
残念ながら、1回、2回のコミュニケーションではあまり何も変わりません。

しかし無理やりでも、時間をとり、話し合う事で歩み寄れる部分も出てくるものです。
お互い、何にコミットして仕事を進めるのか。
そういった論点で話をしてみましょう。

その際に、参考になりそうなのが、NLPと呼ばれる心理学におけるワークです。
「ポジションチェンジ」と呼ばれるものがありますので、一度双方で試して感情的なレベルでの理解はできないまでも、お互いの立場を知ったうえで話し合いができると効果的でしょう。

ポジション・チェンジ

地図は土地ではない」であるように、同じ状況を見ていても人によって見え方・感じ方は異なります。
ポジション・チェンジでは、まさに位置=ポジションを変えることで、
相手の見え方・感じ方を知ることができます。

人とのコミュニケーションにおいては、3つのポジション(知覚位置)があります。

3つのポジション(知覚位置)

第1ポジション(自分の視点)
第2ポジション(相手の視点)
第3ポジション(第三者の視点)

あなたにも、「あの人はこんな風に思っているんだろうな」と第2ポジション(相手の視点)から
考えた経験があると思いますが、ポジション・チェンジでは、そのように想像するだけでは
発見できない気づきが得られることがあります。
1.自分の椅子と相手の椅子、2つの椅子を用意します。
自分の椅子に腰掛け、理解したいと思っている相手を目の前の椅子にイメージする。

2.相手の椅子に向かって、伝えたいことを伝えます。

3.自分の椅子に自分の気持ちと体を置いたまま、第3ポジション(第三者の視点)に立ちます。
第3ポジション(第三者の視点)は2つの椅子を見ることができる中間位置です。

4.第3ポジション(第三者の視点)から二人の関係を客観的に見ます。

5.相手の中に入り込むようなイメージで、相手の椅子に座ります。

6.第2ポジション(相手の視点)から2の発言を受け止め、どのように感じるかを感じ取り、
第1ポジションの椅子に向かって、伝えたいことを伝える。

7.相手の椅子に相手の気持ちと体を置いたまま、第3ポジション(第三者の視点)に立ちます。

8.第3ポジション(第三者の視点)から二人の関係を客観的に見ます。
特に、6で相手の視点から自分を見るときに、
相手の姿勢やしぐさ、言葉づかいなどを真似てなりきると、思ってもみない発見が
得られることがあります。

言葉とは裏腹に自分に対する愛情があったり、そうとしか言えない苦しみがあったり・・・。
また第3ポジションで客観的にみることで、問題解決への糸口が見つかることもあります。

NLP (神経言語プログラミング)のポジション・チェンジは相手の理解や、
問題解決に大いに役立つ手法です。

出展:『NLP学び方ガイド』NLP-JAPANラーニングセンター

3.仲介者を立てる

あまりに確執がひどい場合は、仲介者を立てて歩み寄りを企てる方法もあります。
直接には話ができないほど、お互いを嫌悪している状態である場合でも、
双方が信頼する人が仲介することで、ウソのようにスムーズに話がまとまることもあるでしょう。

これは親子の確執でも同じで、「この人の話なら素直に聞ける」という人がいるなら、
そういった人に間に立っていただき、少しずつコミュニケーションを図っていくとよいでしょう。
仲介者は、同業界の大先輩や、双方の知人・友人、経営コンサルタントや、税理士の場合も
あるでしょう。

一度身の回りの人を見回してみて、「この人なら」と思える人がいれば、双方の言い分を聞き、
上手く調整していただくことができればいいですね。
そこから、2.定期的なコミュニケーションをとるへの意向も検討できそうです。

番外編:どちらかが会社を去る

どうしても修復不能な関係はあるものです。
そういった場合、常識にとらわれることなく、会社をどちらかが去るという選択肢も、
私は間違いではないと思っています。
これから、10年、20年と経営幹部として会社に携わる中で、
信頼のおけない人間がそこにいるとすれば、双方苦痛でしかありません。

一見、過激な意見に見えるかもしれませんが、会社から人が去ることなど今の時代、
日常茶飯事です。
それがたまたま兄弟だっただけです。

個人としてできること

固有の成長の機会

さて、兄弟の確執は親族内でのヒエラルキーと、会社でのヒエラルキーの矛盾といったアンバランスから引き起こされる妬みがその要素となっている、と私は考えています。

ここでは、あくまで兄弟間の二者、親を含めた三者間の関係性をもとにお話ししました。
しかし、もう少しシンプルに考えると、そもそも、妬みという感情を克服してしまえば、いやなアイツに惑わされることもなくなるのです。

自己の心理的成長で克服できる可能性も、探ってみるべきではないかと思います。
確執が起こることを、単に交通事故のような突然降りかかる災厄として捉えるのではなく、乗り越えるべきハードルとして捉えると、幾分見方も変わります。
目の前の現象に右往左往するのではなく、この問題は「自分にとってどういう意味があるのか?」と問い続けると、何かしら今まで感じ取れなかった視点を獲得できるかもしれません。

ありがちなのは、兄(姉)の場合は、思いを口にせず自己完結をしてしまう傾向があること。
単なる思い込みで、状況を決めつけていませんか?
弟(妹)の場合は、周囲の状況を上手く読めない傾向があること。
あなたの振る舞いは、周囲にどう映っているかを意識してみると何か感じるものがありませんか?

結論として、お伝えしたいのは、
人を変えることはほぼ不可能である
という事。

それよりもむしろ、おこった事実に対して自分がどう反応するかを変えることで、状況は変化します。
相手に変わってもらおうという期待を手放し、自分がどうあるかに集中してください。
すると、ずっと楽になるはずです。

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  1. 2016年 7月 27日

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