「トラブルばかり起こす弟を会社から辞めさせようと思うのですが・・・」
思いつめた様子でそう口にするのは、従業員数50名を超える規模の会社の後継者。
彼は長男として会社を事業承継し、後継者として、ここまで会社を盛り立ててきた。
しかし、先代が会社に招き入れた弟は、トラブルばかり起こしている。
社内では弟は、社長である兄に敬意を払う事もない。
取引先からは弟について「彼がこのポジションにいる限りこれ以上取引は継続できない」
と怒鳴りこまれたこともあるそうな。
このままでは、会社に悪影響を及ぼす。
だから彼を会社から排除しなければならない。
苦しそうに言葉を紡ぐ二代目経営者。
なにかいい方法はあるのでしょうか。
私の著書です。
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創業者である会長がいて、長男が社長として事業承継。次男が取締役というファミリー企業。
ここでは、次男が行くところ行くところ、トラブルが起きます。
冒頭でお話ししたとおり、取引先からは三下り半を突き付けられ、社内では次男が先導してイジメが勃発している。
会社の売上は、それなりに伸びてはいるものの、会社の内外でまるでゲリラの市街戦のようにあちこちで問題を破裂される弟に対して、二代目を継いだ後継者長である長男は我慢の限界に達していました。
あいつをクビにしなければ、会社は空中分解してしまう。
さて、これを仮に法律の専門家に相談したらどうなのでしょう。
恐らく、取締役の解任の株主総会の決議をすればいいとか、辞任を求める証拠集めをしましょうとか、そんな方向に話はいってしまいそうです。
二代目社長は、もう弟を排除せねばならぬ、という意識を持っているようですからその意思を法的に反映させるならそんな流れになるのでしょう。
じゃあ、税務の専門家に相談すればどうなるでしょう。
詳細は分かりませんが、遺産分割でもめないような対策を、という進言をされるのではないでしょうか。
保険屋さんなら、税理士さんに近いのですが、保険料を贈与して生命保険を契約しましょうとか、そんな感じかもしれません。
これらの解決策を見て、
「よし!じゃあそうしよう!」
と二代目社長は決断をされるのでしょうか?
恐らくNOだと思います。
そこで質問しました。
「で、あなたは、どうすればいいと思いますか?」
こう聞くと、二代目社長は言います。
「たぶん、弟が一人で独立して完結する仕事をさせればいいかな・・・と。」
既に答えはお持ちなわけです。
それも、辞めさせるという結論ではない。
この状態で、法的な手続きを進めて、取締役解任をしたところで兄弟間の遺恨は残り、今度は相続が血みどろの争いになりそうです。
そこまでの結果は望んでいない。
そこで人間関係を少し紐解いてみました。
いくつか質問を重ねると、見えてくることがあります。
職人気質な会長は若いころ、長男にたいしても、次男に対しても厳しくあたった。
しかし、あるタイミングから、会長は長男を信用し始め、頼りにするようになったそうです。
その後は、事あるごとに会長と長男は、弟を育てようと愛の鞭を与えた。
この構図を見ていくと、どうやら次男は「なんで兄貴ばっかり優遇されてオレはこんなに冷遇されるのか」という思いを持っていそうです。
しかも、歳はさほど離れない兄弟なのに、片や後継者社長、片やほぼ平社員です。
兄にしてみれば、お前が不甲斐ないからだ、という主張があります。
しかし、弟の目から見れば、どうせ自分なんてどこまでいっても兄貴に使われる立場。
言ってみればいじけてしまっているとか、そんな状態。
誰にも頼りにされず、誰にも相談できず、苦しい状況に一人思い悩む弟がいるのではないでしょうか。
そんな話をすると、相談者である兄は何か思い当たることがあるようでした。
実は、親子や兄弟の関係を少し伺うと、かなりの確率で詳しい状況を言い当てることができます。
我ながら、占い師のようだな・・・と思ってしまうのですが、占いでも霊感でもありません。
それだけ、家族経営の関係性はパターン化されているということです。
そんななかから感じ取るのは、弟の孤独です。
誰一人彼を受け入れるものはいないなかで、兄に嫉妬し、親の関心を求めるがごとく問題を繰り返し起こす。
弟自身は無意識なのですが、寂しさからグレてしまう子どもに近いメンタリティがそこにある可能性が高そうです。
最終的に、クビにしたいなら、方法はありますから法律の専門家に相談すればいい。
ただ、そうすると、二代目経営者である兄としても、罪悪感や、その後のトラブルの種を生む可能性があるわけです。
はじめにやるべきことは、弟が「自分は受け入れられている」という安心感を確保する事ではないかと思います。
今や家族が断絶している中で、唯一細い糸が残っているのが社長の奥様のようでした。
そこから糸口をつかめないだろうか。
そんな話を少しして、このご相談へのアドバイスとさせて頂きました。
もう一つもうすこし実質的なアドバイスも含めて行いましたが、こちらは次のフェーズとなりそうなのでここでは割愛させていただきます。
その後この会社がどうなるかは、まだわかりませんが、少なくとも今までとは違う選択肢は提示できたのではないかと思います。
良くも悪くも、同族経営はどこにでもある家族のいざこざが濃縮されて表面化するものです。
基本は、家族関係の問題であることが多い。
そんな事を感じさせられる事例でした。
時折こういった個別のご相談を頂く機会が増えました。
今後メニュー化を検討していきたいと思っています。
個別相談とはいきませんが、正式なメニュー化するまでは後継者倶楽部の会員さんなら、お目にかかった際にはご相談にちょっとしたアドバイスができるかもしれません。
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