二代目社長・後継者が親の会社に入って、何かを動かそうとしたときに、なかなか思う通りに行かないことが多い。
ところで私は数年前に禁煙しました。世の中では、禁煙を世に広げるため、パッケージの警告表示をより直接的なものにしたり、喫煙がこんなに健康に悪いといった様々な啓蒙PRを勧めたりしていますがこんなことがよくありました。警告表示をぼんやりして、「辞めたほうがいいんだろうな」と思いつつ次の煙草に火をつける。
ダイエット中ほど気になるおやつだったり、試験前夜になってなぜか部屋をかたずけたくなったり、人は何かを「しなければならない」と強制されたり命令されることによって、協力にそこに反発したくなる心理が顔を出すものです。
もしかしたら、二代目社長・後継者は、社員や先代に物事を強く強制し、自分の意見を通そうとすればするほど、周囲の人間は自分に反発してしまうという状態に陥ってはいないでしょうか。そんなときの対処方法を考えてみたいと思います。
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人は誰かになにかを強制されるのは大嫌いです。
小さな子供でも、親から何かを言われて、執拗に自分のやり方にこだわり、「いやだ、いやだ」を連発することがあるんじゃないかと思います。そこからわかるように、強制されたことに反発するのは、人に組み込まれた機能の一つといえるかもしれません。
とはいえ、二代目社長・後継者は自分の考えを社内に浸透させ、自分の考えの通り会社を変えていきたいと思うもの。どうしても今までの親である先代の路線とは違う方向に動かす分、大きな力が必要なわけですが、そこに力を入れれば入れるほど、先代のみならず、社員との距離を感じる事態に陥る人は少なからずいるのではないでしょうか。
本来こういった頭ごなしの命令や強制はマネジメントにおいて機能しにくいものではありますから、しっかりと人間関係という土台を築き、そこから徐々に人を変えていくということが大事になります。とはいえ、なかなかそれを待てっている余裕がない、という二代目社長・後継者もいらっしゃることでしょう。そんなときに参考となる方法を、書籍『THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術』(ジョーナ・バーカー)からご紹介します。
本書では、人を動かすにあたって、強制や命令、あるいは説得という方法に頼るのではなく、「変化の仲介」をすることに徹するべきと論じています。具体的に「変化の仲介」に関するカギは4つ。
1.メニューを提供する
2.命令ではなく質問をする
3.ギャップを明確にする
4.理解から始める
1.のメニューを提供するというのは、単純に「選択肢」を用意するということです。たとえば、今まで通りの方法やって仕事時間を増やす道を選ぶか、仕事時間を増やさずより効率的な方法を探す(仕事のやり方を変える)のか、どちらを選ぶか、的なものです。これほど極端な選択肢はやりすぎかもしれませんが、圧をかけるようなものではないフラットな選択肢を2~3つ相手に提示し、そこから選んでもらう。たったこれだけでも、自主性が表現されるため、本人は自分で選んだという認識を持ちます。
2.は質問をすることで問題を自分ごとにさせるというアイデア。たとえば営業の目標成績があった時、その目標に到達するにはどれだけの顧客と商談すべきか?という質問を考えさせてみる。で、現状はそれができているかに気づくと、自然と行動が増えていく可能性が高いという言こと。
3.は2.と近い部分もあるのですが、本書ではこんな実験が示されています。喫煙所にいる人に「火を貸してほしい」というと、みんなその人に対して、「健康に悪いからたばこはダメ」などというわけです。自分たちは目の前ですぱすぱ吸っているのに。何が起こっているかというと、「火を貸してほしい」と近寄ったのは小学生だったという、実験だったそうです。喫煙者たちが子供たちに言っていた言葉は、自分にも当てはまるものですから、それをフィードバックしたところ多くの人が喫煙に対する考え方を変えたそうです。自分ができていないのに人に対して文句を言っている人は結構多いと思います。そんな時、他人への不満は自分も直すべきところでもあるということをうまく伝えられると、その人の変化のきっかけにはなるのではないでしょうか。
4.の理解から始めるというのは、ベテランの人質交渉人が使うテクニックでもあるそうです。まずは相手の話を聞き、理解を示します。そうやって信頼関係を作り、相手の味方となり、相手を守ろうとしているという状況を作り出す。このあたりのテクニックはかなり高度なものが必要だと思われますが、とにかく相手を理解する、というところから信頼関係を築くフェーズが最も大事であるといいます。ある意味王道かと思います。
個人的な意見としてテクニックに走りすぎるのはどうかと思いますが、どうしようもない時の突破口としてはこれらの原則を知っておくと助けになることは事実だと思います。大事なことは、頭ごなしに命令しても人は動かないということ。急がば回れといいますが、まさにそういうことが必要になってくると思います。命令しても、命令しても、人がついてこないとすれば、やり方を変えてみることが必要なのではないでしょうか。
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