後継者

後継者にとって「技術的成長」より「人間的成長」が必要な時代

後継者に向けて、多くの先輩経営者は割と道徳的なことを言うことが多いと思います。ゴミ拾いをするとか、公共の役に立つことをやるとか、そういったことを進める話、多くないですか?
たぶん、ほとんどのベテラン経営者はちょっとばかりええかっこしいをしているだけだと思うのですが、意外と本質的に彼らのいうことは間違っていないのかもしれない、というのが最近の科学の世界での考え方と言えそうなお話、今回はピックアップしてみました。

私自身はひしひしと感じるのですが、親の会社を継ぐコツとして大事なことの一つは、人として成長すべし、ということなのです。

※私自身理解度が浅いテーマですので、かなりまとまりのない文ですが、ご容赦ください。

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後継者が技術や知識を磨くより大事にすべきこと

大人の三つの知性レベル

今、世界的に「リーダーシップ」や「組織」を語るときに、欠かすことのできない要素の一つとして「リーダーの人としての格」のようなものが語られることが多くなっています。そのことを紐解くにおいて、ハーバード大学のロバート・キーガン博士とそのグループの研究を少し取り上げたいと思います。こういうと、とてもとっつきにくいもののように見えるかもしれませんが、中身を読んでいただくと「うんうん、あるある」という内容だったり、「ウチの先代はここにちがいない」とか、かなり興味深い内容になっていると思うので、少しだけ我慢してお付き合いください。

このロバート・キーガン博士は、大人の知性レベルを3つの段階に分類しました。
・環境順応型知性
・自己主導型知性
・自己変容型知性
の三つです。

まず、環境順応型知性の特徴は以下の通り。

・周囲からどのようにみられ、どういう役割を期待されるかによって、自己が形成される。
・帰属意識を抱く対象に従い、その対象に忠実に行動することを通じて、一つの自我を形成する。
・順応する対象は、主に他の人間、もしくは考え方や価値観の流派、あるいはその両方である。

すごーくざっくりいうと、いわゆる組織人といった印象が強いのではないでしょうか。特に大きな組織の一員で、周囲の期待値に合わせて自分を調整していく感じ。組織のメンバーとしてはこういった人がありがたいのですが、逆にリーダーとしては少し頼りない印象を受けるように思います。問題としては、リーダーの意向を強く汲みすぎる傾向があり、リーダーの意図しない忖度が起こる可能性が出てきます。人口に対する割合が、ここに至ろうとする人間が8%程度、この段階に到達した人が14%程度と言われています。

次に、自己主導型知性
これは、こんな感じです。

・周囲の環境を客観的に見ることにより、内的な判断基準(自分自身の価値基準)を確立し、それに基づいて、周りの期待について判断し、選択を行える。
・自分自身の価値感やイデオロギー、行動規範に従い、自律的に行動し、自分の立場を鮮明にし、自分に何ができるかを決め、自分の価値観に基づいて自戒の範囲を設定し、それを管理する。こうしたことを通じて一つの自我を形成する。

これは、環境順応型が、周囲の環境が主体なのに対し、こちらは自分の内的な判断基準が中心にあります。これは昭和的リーダーシップと言えばわかりやすいかもしれません。行き着く先が正しければ非常に効率の良いあり方なのですが、方向性が間違ったとき、違う方向へずんずんと突き進むリスクがあります。割合としては、自己主導型知性に向かっている人が32%程度、自己主導型知性の人が34%程度と言われています。

最期が、自己変容型知性

・自分自身のイデオロギーと価値基準を客観的に見て、その限界を検討できる。あらゆるシステムや秩序が断片的、ないし不完全なものだと理解している。これ以前の段階の知性の持ち主に比べて、矛盾や反対を受け入れることができ、一つのシステムをすべての場面に適用せずに複数のシステムを保持しようとする。
・一つの価値観だけいだくことを人間としての完全性とはき違えず、対立する考え方の一方に与するのではなく両者を統合することを通じて、一つの自我を形成する。

これは非常に柔軟に多様な意見を受け入れる許容性を持っていて、一つの思い込みに支配されないと言えるかもしれません。割合としては自己変容型知性に向かっている人が6%程度、その状態に至った人は1%に満たないと言われています。

これらを図にしたのがこちらです。

『なぜ人と組織は変われないのか』ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー(p30)

 

少しわかりやすくまとめると、
環境順応型というのが、自我がない、若しくは薄弱という状態です。誰かに言われたからやる、ルールがこうだからやる。そんな感じです。
たとえば、大企業などで上司の指示は絶対で、悪いこととしりながら産地偽装をするとかという行動は、こういった環境順応型知性のメンバーを集めたところで起こりやすいのかもしれません。自己主導型になれば、一人一人が自分の価値観で判断できるようになるのですが、視野の広さに限界が出てきます。たとえば、後継者が部長や課長に昇進した時、「リーダーはこうあるべき」といった考え方をひとたび持ってしまうと、万が一そのことが問題をはらんでいたとしても、そのことの誤りを認めない、あるいはそのことにたいする他人の考えを全く聞き入れない状況に陥りがちです。この思い込みを取っ払ったのが自己変容型知性。ある意味、少し浮世離れしたイメージを持つことが多いかもしれません。なにしろ、全人口の数パーセントの存在なのですから。

「持論」の主張だけではうまくいかない時代

かつてのリーダーシップと言えば、「持論を主張し、反対意見をはねのける」ものだったのではないでしょうか。会社の将来ビジョンは、リーダーの頭の中にだけあり、そこに目指してとにかく動け、と。そしてその将来ビジョンというのは、大抵単なる拡大政策で、売上を上げ、社員と支店を増やし、あわよくば上場を狙えという非常に直線的思考と言えたように思います。それを力でねじ伏せるかのように、部下を従えさせる。まさに軍隊のイメージが近いかもしれません。

しかし今の時代は、たんに、今までのことを今まで通りやっていてもうまくいかない時代です。なぜなら、経済が縮小を始めているうえ、ライバルはピーク時と大して変わらない数のプレイヤーがひしめいているのです。そのなかで、相手をなぎ倒してかつ、というマネジメントが果たしてどこまでうまくいくでしょうか。

ここに、会社のチームとしての創造性が必要になってきます。会社によってはカリスマリーダーがその創造性を発揮して、社会に絶大なインパクトを与え続けている場合もありますが、ほとんどの場合はそうはいかないでしょう。一旦リーダーが思い込んだ目標に向かうことは、昭和から平成にかけての時代は十分機能したリーダーシップでしたが、令和の時代にはマッチしにくいスタイルと言えるのではないでしょうか。

となると、たとえば世代とか、性別とか、過去の経験とかから持ってきた自信のアイデンテティを打ち壊すような新たな常識が次々と社会では打ち出され、会社としてもそういった変化への対応が必要となってくるはずです。そんな時に、会社のなかの多様性を認め、自律を超えた新しい世界へ一歩踏み出すことが必要となることもあるのかもしれません。そんな状況を作ることができるリーダーは、すべての物ごとを大きな器で受け入れることが重要になってくるように思います。

許容度を広げる

「だめなこと」の根拠を考えてみる

では具体的に、後継者がそういった「自己変容型知性」を目指すにはどうすればいいのでしょうか。正直なところ私も道半ばなので、私的な理解に基づく内容にはなりますが、参考になれば幸いです。

まず一つ目の課題が、多様性を認めるということです。
会社の中での服装、私語、会社に来るとか来ないとか、会議のやり方とか、いろんなものが過去からの歴史として続いているんじゃないかと思います。これらのこと、一つ一つを機会を見て「今でも本当にこの方法で正しいか?」という疑いを持つことが大事だと思います。また、社員の人たちとの冗談のなかにもヒントがあると思います。会社がこんな風になればいいなぁ、という話が出た時、それを笑い話で終わらせるのか、実現の可能性を検討するのか、という行動の変化を起こしましょう。

今までなら、ジョークで終わる話を「いやまてよ」と再考してみるのがはじめの一歩かな、と思います。たとえば、私の友人で比較的お堅い業種の会社の経営をしている人がいます。彼がやったのは、会社のロゴマーク入りのポロシャツを作ったのです。これ、夏には背広も着ずにそのポロシャツでお客様を訪問しても、ロゴが印刷されているので「これ、制服なんです」と言えてしまいます。これでクールビズ問題は解消です。社内でも評判はいいようです。まあこんな細々した花だけでなく、今例えば、会社に皆来てるけど、来なかったらダメなの?という観点で考えて行くと、案外来なくてもよかったというのをコロナで感じている人も多いと思います。

今までと違ったことを取り入れるということは、そういった体験を通じて、自分も組織も、新たな世界を学ぶことになります。だから今までだったら冗談でおわる話も「やってみたらどうなる?」「やらなかった理由はどこに?」ということを考えて行くことで、いろんな新しい働き方を作ることができるかもしれません。今までなら、特に考えもせずに従っていた「常識」を疑い、違う意見を募り、その新しい考え方や行動に関して、自分が責任を取るからやってみよう、と思えるところが一つのゴールではないかと思います。

このフェーズでありがちなのが、ついつい自己保身に走るケースです。何かしら問題が起きたとき、だれが責任を取るのか。それは自分なのか。そこがはっきりしていて、自分に被害が被らない場合しか前にすすめない、というリーダーはたぶん誰もついてこないんじゃないかと思います。結構大事なのは、メンバーは、リーダーが何かが起こった時に自分の責任において決断できるか?ということを見ていると思います。そういう時に逃げたり、他人のせいにしていると、リーダーとして認められにくいと思われます。その際に、一つはリスクに対する許容度、そして二つ目として他人の提案に対する許容度は、後継者がリーダーとしてふるまうに当たって重要なこととなるのではないでしょうか。

口出ししない

口を出さずに責任だけ取る上司。これは、部下側から見ると非常に理想的な上司に見えます。しかし、言うがやすし、するが固し。そもそも、口を出さない上司の下で自らの考えを発言し、実行し、成果を出すという行動ができる社員がそもそも多くはないと思います。口を出さなければ、社員は動かない。それはなぜかというと、社員が「環境順応型」にしつけられてきてるからなのではないかと思います。すると、彼らを環境順応型から、自己主導型に導き、さらには自己変容がたまでもっていきたい、というのが組織の理想論です。しかしまあ、そこに行くには上司はとても我慢が大事になってきます。なにしろ、部下に「教える」のではなく、学ぶのをひたすら待ち続ける必要があります。

それを促すのが、たとえば松下幸之助氏がよくいったという「君ならどうする?」という問いなのでしょう。ここで大事なことは、単に聞くだけではなくて、リーダーとしてそれを尊重するということも大事になってくるんじゃないかと思います。そうやって組織の成長を測るには、そもそもその過程で自分の成長も促進されるのは間違いありません。なにしろ、自分の考えより浅い内容を受け入れ、試してみるという環境に身を置くのですから。逆に言うと、そういったガマンが自己変容型の入り口なのかもしれません。組織を意識レベルとして成長させるには、リーダーがまず成長する必要がある、というのは納得です。

これを例えば、天外伺朗さんは、「社内の問題を毎週全社員に書かせ、張り出して共有する。けど、リーダーはそれに何の意見も言わずただ共有するだけ。社員が自ら何とかしないと、と言い始めるまでは何も言わず見守る」ということを進めています。これが、話題のティール組織をはじめとする自主経営の入り口だ、と。

まあそこまでのことを目指すかどうかは別として、私達は社員に口出ししすぎる傾向があるんじゃないかと思います。なぜなら、親が口出ししすぎる傾向があったと推察できるからです。ついつい口が出て、手が出る親に育てられたので私たち後継者もそういった行動パターンを身につけている可能性が高いわけです。そこはちょっと注意したほうがいいかもしれませんね。

まとめ

私たち後継者がもし、力でねじ伏せるマネジメントと違うチーム作りをしたいとしたら、ヒントは以下の三つに集約されるのではないかと思います。
①過去の習慣を疑い、自分の考えでその在り方を検討する
②チームメンバーの自主性を尊重し、できる限り口を出さない
③本文では話しませんでしたが、リーダーは適度な好奇心があるほうがいいと思っています。

この三つのことを意識することで、今までとは違ったリーダーシップが生まれるのではないかと思うのですが、、いかがでしょうか。

 

 

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