家業の後継者の痛みはどこからやってくるのか

親の会社の跡継ぎとして家業に勤め始めると、後継者は親との関係に悩み始めるケースが多いと思います。私の場合、放っておいてほしいのに、ずかずかと心に土足で入り込んでくる、なんて感じたことが少なからずありました。なんというのでしょうか、親は自分にとって最も痛いところを突いてくる。そんな感覚はないでしょうか。

後継者と先代、子と親、という関係がそうさせるのかもしれませんが、実はそこは、後継者が乗り越えるべきポイントである、といえるかもしれません。

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最もウザいことをピンポイントでついてくる親

親子だからとかズケズケ言うからという問題ではない

きっとこの文章を読まれているあなたは、親の会社を継ぐために仕事をしているものの、親との距離感がつかめないとか、なぜか親といると落ち着かないとか、仕事や将来に対しての不安ばかりが募るとか、そんな感覚をもって検索をされたのではないでしょうか。

思春期を過ぎると、親というのは子供にとってちょっとうっとおしい存在だったりもするでしょう。それでも成人して、少しは親との距離もちぢまって何とかうまくやっていけるかも、と思って親の会社に就職する。しかし、そうしたときにだんだんと精神的にきつくなってくる。そんな自覚が芽生えると、何が原因かと考えるわけです。

ああ、それは自分の仕事に対する知識や技能が未熟だからとか、親子だから普通は言わないことをずけずけ言うからだとか、言葉を選ばないからだとか、いろんな理由を考えます。たぶん、第三者もそんな風に見ていて、親子といえどもう少し気を遣えばいいのに、という意見もあるでしょう。

ただ、どうも言葉や言い方、自分の仕事上の成熟度だけの問題ではないのではないか、というのが最近の私の考えです。

親はなぜか最も痛いところをピンポイントでついてくる

いろんな事業承継中の親子を見ていて感じるのは、単に言い方とか、言葉の選択ではないように思うのです。では、なぜ痛いのかというと、後継者にとって最もつつかれたくないところをピンポイントでついてくるからです。言い換えると、後継者自身が気づいていない、心の傷に塩を塗るような内容の言葉を、親は後継者に対して投げかけがちなのではないでしょうか。

もちろん親である先代も、意識をしているわけではないので、後継者を痛めつける意図があるわけではありません。ある意味自己防衛本能から出てくる無意識の攻撃ではないかと思います。

後継者にとっての痛み

書籍『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジ』(由佐美加子、天外伺朗)に記されたなかには、人間には4つのメンタルモデルがあるといいます。この4つの特質のすべてを人は持っている可能性があるのですが、その中でそれぞれに比較的大きな影響を及ぼすどれか一つのモデルがあるといいます。その一部をここにピックアップします。

A.価値なしモデル

●痛み・繰り返される不本意な現実
(こんなにやっても)「やっぱり自分には価値がない」何か価値を出さないと自分の価値は認めてもらえない。

●特性と特徴的なキーワード
・人に価値を出せなければ自分はいる意味がない、いる価値がない
・人からの期待にこたえたい
・勝てないゲームはしたくない。確実に勝負できるものを無意識に選ぶ

●代償
他人軸で生きるため、自分がなくなる。

●作り出したい世界
何ができてもできなくても、自分はいるだけで価値がある、誰もがいるだけでいいと認められる、存在する価値ですべでの人の価値が認められている世界。

B.愛なしモデル

●痛み・繰り返される不本意な現実
(こんなにやっても)「やっぱり自分は愛されない」自分のありのままでは愛してもらえない

●特性と特徴的なキーワード
・恒常的な「寂しさ」があり、つながりを失って一人になってしまうのが怖い
・人に与えてばかりで疲れてしまう傾向がある
・本当のことを人と分かち合いたい
・問題があるときはちゃんと話して分かり合いたい

●代償
人に過剰に尽くして自分の真実を生きれない。

●作り出したい世界
誰もが自分を無条件に愛し、真実からありのままを受け入れられ、理解しあえる関係性で人間同士がつながっている世界。

C.ひとりぼっちモデル

●痛み・繰り返される不本意な現実
「所詮自分は独りぼっちだ」人が去っていく、離れていく、つながりが断たれる分離の痛み。

●特性と特徴的なキーワード
・人はいなくなるし、去っていくものという孤独感
・来るもの拒まず、去る者追わず
・人に過剰に入れ込まない、執着しない
・集団の中では個性的で一匹狼だ
・人間が面倒くさいと感じる
・「好きにしたらいい」が口癖

●代償
常に自分や人、世界を割り切ってとらえ、決してなくならない孤独を抱える。

●作り出したい世界
人が命の全体性の一部を担っている、その一部として生かされている、というワンネスの感覚の中で誰もが自由に自分の人生を生きている世界。

D.欠陥欠損モデル

●痛み・繰り返される不本意な現実
(こんなにやっても)「やっぱり自分はダメだ」自分には決して埋まらない決定的な欠陥がある。

●特性と特徴的なキーワード
・自分は何か足りない、出来損ないだ、ポンコツだという漠然とした自己不信
・とにかく不安になって落ち着かない。「ここにいていいのか?」「私は大丈夫か?」
・他社と比較して自分の至らなさが気になる
・不安から行動しがちなのでやることが増える
・なかなか物が捨てられない
・人の役に立とうとする
・安心していられる居場所を求めている

●代償
人の中で安心して自分でいられない。心の平安がない。

●作り出したい世界
凸凹のままで人は完全で、誰もどこにいても内側に何があっても、ありのままで安心して存在していられる世界。

『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジ』(由佐美加子、天外伺朗)より抜粋

 

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メンタルモデル簡易診断

このザ・メンタルモデルの考え方は、私たち人間がそれぞれに持つ痛みというものがある、という前提を取ります。たとえば、私は独りぼっちモデルのようなので「どうせ、最後は一人(誰かとつながったところで、人は必ず去っていく、どうせ自分のことはわかってもらえない」という痛みを持っています。そんな私は人一倍、人とつながっている、という思いが強いので、つながりから外れる痛みに人一倍感じやすい性質を持っているようなのです。

だから、もう二度と人と離れる痛みを感じないように、もともと人と深くつながらないようにして人生を生きてきています。だから周囲からはドライとか、冷静とか、冷たい人とか言われることがありますし、自分でもそう感じます。

人や物事と離れることが人一倍つらいから、そもそもつながらないようにして社会に適合しているわけです。これが例えば、「価値なし」モデルだと、自分は価値のない存在である、という思い込みがあるので、自分の価値を周囲に主張するためにたとえばめちゃくちゃ頑張って、勉強したり、会社を興したり、出世したりして、いろんな冠をゲットしようと頑張ります。

一般的に、経営者はこの価値なしモデルと、ひとりぼっちモデルの人が多いようです。

あなたはどんなメンタルモデルを持っているでしょうか。それが見えるとたぶん、親との関係性の一端が見えてくるのではないでしょうか。なぜ親の言葉が異様にむかつくかというと、繰り返しになりますが自分の持っている痛みをピンポイントでついてくるからです。人とつながるのが基本的な資質としてあるはずなのに、家業の保険営業という仕事を通じて滅茶苦茶に断られることで、人に裏切られ続けている感覚を持っていたようにも思います。そこに来て、営業会社ゆえの人とつながることがお金につながるという社会にどこか嫌悪感を抱いていたようにも思います。そして、人とつながる痛みを避けて一人でフラフラしていたいところに、〇〇しなければならないという親の言葉が、どうしても受け入れられない、という感覚を持っていたように思います。

言ってみれば、お子様チックに見えるかもしれませんが、内面のお子様加減と、社会とのつじつま合わせの間にあるギャップに、私は苦しんでいたように思います。どうしても、その痛みを見せる相手が親であることが多かったので、ついつい親をスケープゴートにしていたような気もします。

後継者にとって現実社会がつらくなった時

Ahmad ArdityによるPixabayからの画像

「もうだめ」と思ったら

実は私、親の会社に入って以来、すっきりとした気持ちでいた記憶がありませんでした。不甲斐ない自分に落胆するときもあれば、仕事上のトラブルから逃げ回ってそんな状況に自己嫌悪していたり、挙句の果てにうまくいかないのは親のせいだと思ったり。もう、親の会社を継ぐ、と家業に入ったことが人生最大の過ちだ!と思ってた期間、実は結構長かったんです。当時それは、誰にも話しませんでしたけど。

じゃあ今はどうかというと、自分が決してたいした能力もないのに、親の会社で後継者という立場に立ったのは、すごくいいきっかけだったと思います。それはなぜかというと、「もうだめだ」となった時に、人間として一皮むける方向に行った(というか行かざるを得なかった)からです。たぶん、こんなことがなければ出会わなかった(隠し続けていた)自分がそこにいたのです。

先にご紹介した『ザ・メンタルモデル』ではそのメカニズムを説明していて、それがすごく腹落ちしたので私なりに要約してお話しします。私のメンタルモデルは、たぶん「独りぼっちモデル」です。人や物事とのつながりがあることが前提という感覚を持っているので、そこから引き離される体験はありえないほどの苦痛です。たとえば、心底信頼していた人とたもとを分かつような体験は、ほかのメンタルモデルの人以上に痛みを感じるという素質があるようです。それだけ別れが痛いので、生きていく中でそもそも出会わないようにするし、つながらないように生きてきました。だから人間関係についても他人にそんなにいれこむことなく、どこかクールで冷静です。けど本当は、つながっていることが自分にとって当たり前なのに、距離をとってるというのはすごいエネルギーがいるのです。そうやって、現実世界の中でそこそこうまく立ち回るわけです。

しかし、人間そうやって立ち回るのにも限界があって、どこかのタイミングで今の行動パターンではうまくいかなくなってくることがあります。たぶん、私だけでなく多くの後継者の方が、それを感じるのが家業を継ぐということで親と仕事をしているタイミングではないでしょうか。私に関して言えば、それまではほとんど人生で大きな失敗をせず、そこそこの高校に入り、そこそこの大学に合格・卒業し、人間関係もさほど大きな問題はありませんでした。それもそのはずで、たいして人と深くかかわっていなかったからです。

そうして本来持っている「つながっていることが当然」という思いが深く沈められたままではたぶん、いつまでたってもどこかしら空虚な感覚があったんだと思います。それが、親が目の前に現れることで呼び起こされたのではないかと思うのです。しかし、どう動いていいかもわからず、結局、痛い思いを強要する親の存在を排除して、昔の平穏を取り戻そう、と頭では考えるのですが、それをやったところで多分この問題は解決しないのです。自分の本心(私の場合、周囲とつながっている)という感覚をまずは自分で自覚することから始めていく必要があるのではないかと思うのです。

その痛みと、自分がしっかりと向き合うことができれば、実は親ともうまくやっていけることもあるのかもしれません。
何が言いたいかというと、「もうだめ」と思った時こそ、自分を変えるタイミングなのではないかと思うのです。
その時に、自分はどんな痛みを紛らわそうとして、親を敵視しているのかをほんの少し考えてみてください。そこに気付くと、もしかしたら世界の見え方が変わってくるかもしれません。

現実レベルの問題は実はたいした問題ではない!?

こんな話をしていると、「自分が変わったって状況は変わらない」「状況が変わらなければ自分の悩みは癒せない」なんて言う風に思われる方も多いかもしれません。しかし、シンシナティ大学のロバート・リー日の調査によると、こんな結果があるそうです。

アメリカでは、37%もの人が毎日のように不安を感じているというデータがあり(これでも日本と比べるとかなり少ないですが)、その人たちを対象に2週間、何が心配なのか等について、具体的に記録してもらいました。すると、心配であったはずの事柄の85%について、現実的にはむしろ良いことが起き、残りの15%についても、その約8割は予測していたよりも良い結果が起きた

『人は、なぜ他人を許せないのか?』中野信子

実は現実は私達が思っているほど悪くはないようです。

自分の物ごとの見方を変えると現実が変わるという話がよくありますがそれは、心配事は9割がた起こらないという事実を正しく見ることができるようになるだけなのかもしれません。

ここまで来ると、信じるか信じないかはあなた次第、という話になりますが、もしよければ心のなかを探求してみてはいかがでしょうか。それは自分の痛みを直視することなので、気の進まないことかもしれませんが、その覚悟さえもてれば、いろんなことが変わっていくかもしれません。

 

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