後継者

跡継ぎから見た、家族経営を上手くやりぬく3つのコツ

周囲の人たちは、家族経営であることをうらやんでいるかもしれません。
気楽でいいよね、なんて。
しかし実際のところ、跡継ぎの方は気楽とは程遠いストレスと闘っているのではないでしょうか。
そのストレスを軽減し、家族経営の会社をあるべき方向へ向かわせるにはどうすればいいのでしょうか?

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家族経営の問題点

運命共同体なのに一丸となれない!?

そもそも、経営者が役員を家族で固めるというのは、何かしらの理由があります。
それは例えば、頼みごとをしやすいからとか、まったく知らない一般社員と違って信用できるとか。
私がいろんな経営者に聞いて回った中で多くあった話は、やはり、
「素性の知らない他人に会社のコアな部分を触らせたくない」
という方が多かったように思います。

「やっぱり身内だね」と言いつつ親せきで経営の中核を固めるのですが、逆にこれがいろんな弊害を生むことになります。
「頼みごとをしやすい」関係においては、「言いたいことを言いやすい」という事が言えます。
これは、会社という場は一般的には論理的な話が中心になるのに対し、感情論のウェイトが強くなりがちです。
結果として、役員同士が感情論でビジネスを切り盛りするようになります。
これが危険であることは、解説の必要はないでしょう。

一方、親類縁者が一つの会社にいるという事は、会社がつぶれれば一家総倒れです。
そんなリスクを抱えている以上、協力して会社の維持発展を目指せばいいはずなのですが、そういった論理的な脳はお休みをしてしまうようです。
権利を奪い合って、会社をあらぬ方向に向かわせることが散見されます。

会社の未来というより権力争いに!?

家族どうして、未来の夢を語るってシーン、想像できるでしょうか?
親密だからこそできそうな話ですが、逆に親密だからできないことが多いようです。
特に親子関係においては、子どもが夢を語れば、親は「もっと現実を見なさい」と諭した関係があるのではないでしょうか。

そういった関係は癖になりますから、いずれ子どもは親に自分の思いを語らなくなります。
親子であまり会話がないというケースは多いと思いますが、それは口を開けば何か小言を言われるとい恐れを持っているのかもしれません。
思春期あたりから子どもが親に口を利かなくなり始めるのは、そんな理由かもしれません。

このことから、会社のなかでの情報共有は非常に難しくなってきます。
いろんなことが個人の胸の中でしまわれます。
そして会社の方向性について話す場合でも、本心を表さずとりあえず無難な意見しか交換しないのではないかと思います。
本来柔軟な形態と思われがちな家族経営は、次第に組織として硬直化してきます。

すると、お互いが疑心暗鬼に陥り、結局は「自分の立ち位置をいかに確保するか?」ということに集中する傾向が現われます。
親子であれば、親を会社から外すとか、子の動きを止めるような親子の確執がおこります。
それ以外の叔父や叔母が入っている会社なら、それぞれの親類の子供を交えて、会社の勢力争いを始めることもあります。

家族経営を上手く運営する3つのコツ

コツ①他人の「尊厳」を奪わない

自分の思いどおりに動かない人が社内にいるとき、一般的には「どうすれば自分の思い通り動かすことができるか?」という事を考えがちです。
ルールを作って強制する、罰則を作って従うか排除されるかを選択させる、高圧的な態度で相手を屈服させる・・・などなど。
こういったことがうまくいくのはまれで、現実にはモラルが低下したり、社内の雰囲気が悪くなったりする弊害の方が大きいと思います。
こういった施策を講じる側も、自分の思いどおりにルールを守らない人へのイライラを募らせてしまい、誰も得をしなかった、というケースが多いと思います。

これは何をしているのかというと、相手の人間性や、自主性、能力を疑ってますよ、と相手に主張しているようなものです。
これは少し大げさな表現をすれば、他人の尊厳を傷つける行為です。
特に家族経営の中で関係が非常にセンシティブな状況にある中でこれをやると、その関係性はより悪化します。

だから、家族経営において生産性を高めていきたいとすれば、逆にまずは相手を尊重することを考えてみてください。
相手を否定する前にまずは、しっかりとその言葉に耳を傾けます。
大抵の場合、こういった関係になった人たちとは、相手の話を途中でぶち切って自分の意見を主張していることが圧倒的に多いのではないでしょうか。
そこまで直接的な行動をしなくとも、相手の意見を聞く姿勢を持っていない可能性が高いと思います。
相手の言葉を耳に入れないのはまさに、相手の尊厳を奪うことにほかなりません。

すべての意見に従う必要はありませんが、まずは受け止めてみてください。
それだけで相手の出方は変わってきます。

コツ②分かち合いの精神を持つ

私が立食パーティーの席で嫌いな行為があります。
それは、同じテーブルの人のために、たくさんの料理をとってくる、という行為。
これ、テーブルで同席した人はありがたいのですが、会場全体でみると一気に食べ物がなくなり非常に非効率になるし、廃棄料理も増やしてしまいます。
だから私は、立食で他人の料理を取ってきませんし、そう宣言します。

これはテーブルという小さな世界では「分かち合い」があるように見えますが、会場全体においては「奪い合い」を演じていることになります。
結果として、「料理が足りない」という事態が起こってしまいます。

先ごろ、コロナウィルス騒動のせいで、トイレットペーパーやティッシュペーパーが売り切れたりもしましたが、同じですよね。
流通がダウンしているわけではないので、必要な人が必要なだけ買っていれば何の問題もなかったのに、奪い合いをしてしまったから一時的に足りなくなりました。
たぶん、なかなかはけないストックを家にため込んでいる人もいるのでしょうね。

会社のなかでも、地位や立場はもちろん、お金や労働、役割や権力について、分かち合いの精神を持つことができればたぶん、争いはそんなに怒らないと思います。
なぜかというと、安心できるからです。
周囲の人たちが皆、分かち合いの精神を持っていることがわかっていれば、無理に奪わなくとも平等に配分される安心感があります。
そうすることで、家族経営はかなりスムーズになります。

しかしこれ、はじめにやる人は、けっこう精神的に安定している必要がありますね。
いうほどは簡単ではないのはわかっています。
それでも誰かが、分かち合いを始めないと、永遠に奪い合ってしまうことになります。
言うは易く行うは難し、といったところであることは重々承知していますが、ここに気付いた人から少しずつ始めていかないと物事は改善しないでしょう。

コツ③夢を持つ

家族経営でうまくいかなくなるのは、たいていの場合「相手を自分の意図の通りに動かしたい」という思いが原因ではないでしょうか。
相手はこうあるべき(自分の考え)なのに、実際にはその通り動かない。
ならば、どうやって相手を思い通り動かせるかを考え、策を弄する。
このパターンが基本にあると思います。
なんだかこう書くと、ドラえもんにお願いしたい仕事ですね(苦笑)

ここまでは、相手への行き過ぎた干渉を止めるという事に終始してきました。
こんどは、経営陣を一定の方向に向かって動かしたいところ。
そういったことにこの「夢」というのが一役買いそうです。

前半で、親子において子が親に夢を語るのをやめてしまった、という話をしました。
しかし、関係を修復したうえで、新たな関係の中で夢を語るのは結構大事なことだと思います。
たとえばOKRというGoogleなどで使われてきたと言われる目標設定法は、目標を完遂出来ないレベルに設定すると言います。
達成できる目標だと低すぎるというわけです。

また、そんな事を語るためには、それなりに自分の本当の夢って何?というところに始まり、ビジネス上の戦略をどう立てていくかなど、いろいろやるべきことはあります。
ただ、そういったことを考え学んだことを社内で共有するには、ここまでお話しした社内の土壌整備が必要になってきます。
夢の設定の準備とともに、社内の関係整備を同時に始められるといいかもしれませんね。

後継者が担うべきたった一つの目的

専門的な問題というよりも・・・

実は多くの会社で起こっている問題というのは、家族経営に関わらず、そこに集う人とそのマネジメントの問題じゃないかと私は思っています。
ここに書いたことも、ビジネスの専門知識については全く言及していません。
逆に言うと、組織がそれなりにしっかりしてくると、専門的な分野は必要に応じて学ぶ機会ができてくる、と私は考えています。
何か新しい試みをやれば、必ず問題は出てきます。
そこに対処するために、組織は知識やスキルでの成長を求められます。

そうやって自然に組織は育っていくものだと思います。
それは、組織のなかでの関係性が健全で、少なくとも前に進むという事にコミットしていればたいていは大丈夫じゃないかと思います。

生まれ変わるぐらいの変化

もし組織がそれなりにしっかりとしてきたとしたら、後継者の役割はここで初めて前に進みだします。
私は、企業の寿命を決めているのは、その企業の主力の商品・製品・サービス・ビジネスモデルだと思っています。
これが寿命を終えるとき、会社の寿命が潰えます。
だから後継者は、世間に新たな価値を問う会社改革を行わなければなりません。
組織を整えるとか、夢を語るというのはあくまでその手段です。
今のリソースを使って、どんな新しい価値を世間に提案できるか、
そしてその価値は、10年、20年、会社の屋台骨を支えるほどに大きな商いに成長させることができるか。
後継者はできるだけ早く、この事に着手・専念すべきだと思っています。

今日が2020年3月18日です。
この時代を生きている方なら恐らく、ビフォーコロナと、アフターコロナを意識せざるを得ないと思います。
そうなった時、ビフォーコロナの世界とアフターコロナの世界が同じものと感じられる要素は少ないのではないでしょうか。
今の事業の存続さえも危ぶまれる事態だと思いますが、思いは、アフターコロナに世の中にどんな価値を提供するかをしっかりと考えて備えたいと思います。

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