7年ほど前、ボンボン二代目経営者である私は窮地に陥りました。
と言っても会社経営ではありません。
ある、団体運営の代表として、です。
もうそろそろ時効になる話だと(勝手に判断して)
ここでお話ししたいと思います。
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私は、父の会社の仕事に就いて、何一つ誇れる実績を残せたとは思っていません。
特に、この事件が起こった今から7年前は、自分のやることに自信もなく、確固たる未来像は持てずにいました。
そんな折、なんの因果か、ある団体の長を拝命しておりました。
とるに足らない自分が、そんな団体を統べるなんてとんでもない話。
そう思ったものの、なってしまったものは仕方がありません。
その後は、とりあえずは平和、安定を基調に運営しようと思いました。
しかし、平和と安定を手にするには、この団体最大の行事をやめること、
さらには、膨らんだその団体にストックされているお金の流れを何とかすること、
この二つに手を付けないと、常にざわざわしてしまう。
そんな風に考え、ここに手をつけ始めました。
たぶん当時の仲間からすると、「殿のご乱心じゃー」
というインパクトもあったかもしれません(苦笑)
何しろその団体の代名詞となる例年のイベントを、辞めるというのだから。
(自分の)平和と安定のために、とんでもない提案をしていた折、大きな事件が起きました。
東日本大震災です。
幸いにして、団体の会員は全員無事でしたが、当然相応の被害は受けています。
彼らのお客さまも被害を受け、団体の会員の一部は商売どころではありません。
そこでストックされてる団体のお金を彼らに寄付するか、しないか、という議論になりました。
心情的に「こういう時にこそそのお金を仲間のために役立てるべき」という主張は理解できます。
しかし、私は原則「NO」という判断をしました。
ただし、仲間への寄付という判断に、全員一致で賛成するならその限りではない、
というのが私の決断です。
現実は、全員一致とは程遠いものです。
私の元には、非情すぎないか?という意見があれば、
いやいや、冷静な判断だ、という意見もあり、
賛成・反対をとわず、様々な主張がが次々と寄せられ、ずいぶんと胃の痛い思いをしました。
私は丁寧に説明したつもりです。
その団体の性質は、相互扶助団体ではないこと。
集まったお金も、本来の目的は会の発展、業界の発展、
そして会員が等しくメリットを受けられるために使われるべきものであること。
個人的な援助を団体として取りまとめることは行ってもよいが、団体のお金は全員の意見が一致しない限りはこういった用途に使う理由がないことなどを、説明しました。
それでも感情的には、私は悪者です。
こんな時に仲間を助けるために、余剰資金を出さないケチで冷酷な男に映ったかもしれません。
あるいは、ルールに縛られた役立たずにみられたかもしれません。
その数年後、その団体の会計を明朗化するために任意団体から社団法人化する過程で、団体の会員数は半分近くに激減しました。
それ自体はある程度予測していたことですが、件の被災した”仲間”が去って行ったのは少なからずショックではありましたが。
その出来事は、なんだかんだ言って甘い自分を成長させてくれるいい機会だったと思いってます。
今の自分なら、あるいは違う判断をしたかもしれませんが、当時の判断は、当時の自分の判断として、間違っていなかったと今でも思います。
その過程で、常に何度も自分に問いかけ、出した回答です。
たくさんの反論があるであろうことを想定し、それらの反論を飲み下した結論でした。
当時は苦々しい思いもしたものの、けっこうすっきりした記憶があります。
いろいろイヤな思いもあったけど、
ごっそり会員が減った時は背筋が寒くはなったけど、
自分で出した結論に対し、自分自身で支持することを決めたときのすっきり感。
これが原因でその団体を追われようが、仲間を失おうが、世間でどういわれようがもういいや。
そんな風に感じられた気がします。
ところで、後継者って良し悪しはともかくとして、親社長の庇護のもと仕事をしていることが多い。
私自身も長くそういう状態だったことは否めません。
そそれはすなわち、シビアな決断から逃げようと思えば逃げられる環境です。
しかし、この時の私のように追い詰められる経験も必要だな、と感じます。
本当に判断が難しいとき、たぶん、どっちをとっても何かしら遺恨が残るだろう、ということはあります。
そういう時に、恐る恐る決めてしまうと、「ああ、やっぱりあっちが良かった(正解だった)のか」なんて思うこともあります。
しかしシビアな状況であればあるほど、自分が選んだ選択肢に自分でYESと言えるよう「盲信」することも大事なのかもしれません。
正誤の評価を誰かにゆだねるのではなく、自分で「正しい」と決めてしまえばいいんです。
そうすれば、結果がどうあれ、それなりにスッキリするもののようです。
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