後継者

家業を継ぐ後継者が会社を辞めたいと思う時、何が起こっているのか?

家業を継ぐ後継者の中で、おそらく最も多い悩みが「親の会社を辞めたい」というものではないでしょうか。
私自身、そういう思いに駆られた経験は長く、その時にはどうしようもないストレスで苦しんでいました。

一方、たとえば「親が亡くなって急遽親の会社を継いだ」という人は意外とこういう言葉を漏らしません。
そもそも、日々の仕事にいっぱいいっぱいで、そんな事を考えている暇さえないのかもしれません。
しかし、親が元気で会社にいるという状態と、親がいない状態では大きな違いがある事は間違いないような気がします。

今日は、親の会社を辞めたくなる後継者の心の状態を明らかにし、そこを抜け出す方法について考えてみたいと思います。

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後継者はなぜ家業をやめたくなるのか?

私が家業をやめたくなったのはなぜか?

ある友人(親の会社を継いだ後継者)からのある年の年賀状は、こんな一行が添えてありました。
「やっと親の会社を辞める事ができました」
私自身、その気持ちはよくわかる、良く結論を出したな、と感じたものです。
なぜなら、私も親の会社を辞めたい、と思っていたからです。

じゃあ、なぜ親の会社を辞めたいのでしょうか。

当時を振り返ってみて、実は私は決定的な事件があったとか、どうしてもこれが我慢できなくて辞めたい!とおもったとか、そういう具体的な事例を思い出すことができません。
もちろん、小さな「ムカつくできごと」や「イヤに感じたキッカケ」は沢山あります。
たくさんあるんですが、一つ一つは小さなことで、それで会社を辞めるなんてちょっと甘えてるかも、と思えるようなことも多い。
家業をやめたいと言っても、図太い理由がドン!とあるわけではなくて、細かいことの積み重ねだったように記憶しています。

たとえば、仕事が自分に合わないなぁと薄々感じているとか、
つどつど口出しをする親のかかわり方がイヤだとか、
仕事にイマイチ誇りが持てないとか、
自分の能力が疑わしいとか、
このままでは将来が不安だとか、
言語化すると、妙に自分が弱々しく見えて嫌なんですが、たくさんの理由があって、それが束ねられたとき「辞めたい」という感情になる。

だから、なかなか一言では言い表せないというところがあります。
つまり、自分でもよくわかっているような、いないようなそんな感じだったように記憶しています。

小さな「社内の問題」が一つにまとまった結果?

一つ一つは小さなことでも、積み重なると大きくなる。
それはなんとなくわかります。
しかし、積み重なるものがバラバラだと意外と積み重ならないものです。
少しわかりやすく説明してみましょう。

たとえば、学生時代にテストで悪い点を取ったからといって、学校をやめたいとは思わないでしょう。
さらに、好きな異性に振られたという不幸(?)が積み重なっても、学校をやめたいとは思わないと思います。
同じクラスの子なら、バツは悪いでしょうが・・・苦笑

それとおなじで、会社の中で嫌なことがいくつかおこったからと言って、それが会社を辞めたい理由にはなかなかならないものです。
しかし、後継者は家業をやめたくなる。
つまり、一つ一つの嫌なことは、同じ種類の圧力を後継者にかけているのではないかと思うのです。

それを言語化すると、とてもシンプルな言葉になります。
それは、こういうことです。

誰も家業の後継者たる自分を尊重していない

という事なのです。
尊重されていないということは、居場所がないという事。
だから、「辞めたい」という言葉が頭に浮かぶのです。

後継者は尊重されていない!?

なんだかんだ言って、後継者は求められて会社に入っていることが多いと思います。
少なくとも、後継者の感覚としては、「親が継いでほしそうだったから家業を継ごうとした」という要素は少なからずあるはずです。
たとえば、私の場合、中学生のころには親の会社を継ぐんだろうな、というおぼろげな感覚がありました。
それはなんとなく、親がそれを望んでいるようだし、そうすれば喜んでもらえるだろう、という気持ちでした。
最終的に家業を継ぐと決めたときは少し不純な動機もありましたが、当時はそういう不純なものではなかったと記憶しています。

そうやって親のため、家業のため、自分は頑張らなくては、と思い続けた期間はそこそこ長い期間ありました。
しかし、会社に来れば、なんとも扱いが軽い。
もちろん、新人の頃は仕方がないのはわかっています。
他の社員より厳しく、というのもわかります。

しかし、ある程度仕事をおぼえても、いつまでたっても口を出す親。
しかも後継者である自分に何の相談もなく重要な決定を下す。
ひどいときには、先代と社員がみんなでなにかをしよう、と始めたことを後継者だけが知らない、という事も結構あります。

自分が一生懸命何かをしようと社内に働きかけても、一向に自分に従わず、親である先代の顔色をうかがう従業員たち。
〇歳までには退職する、と言っていた親は「後継者が頼りない」という理由で、退職年齢を伸ばす。
じゃあ、自分はいつになったら、一人で経営できるのだろう。
結局、自分なんていなくてもよかったんじゃないの?
そういう思いが、会社を辞めたい、という言葉になるのではないでしょうか。

けど、そんなことは誰にも相談できません。
言葉にすることで、まるでいじめられっ子のようで自分がイヤになるんです。

後継者の置かれた立場から抜け出す方法

いじけてしまえば苦しいだけ

たぶん、後継者は「家業をやめたい」と口にしますが、本当にやめたいわけではないはずです。
自分としては、中途半端に投げ出すのは嫌なはずです。
だから、「もう嫌だ!」と飛び出してしまわず、もう少し頑張ってみよう、と踏みとどまるのではないでしょうか。
実際に、辞めてしまって幸せになれるかというと、ずっと重い荷物を持っているかのような苦しみを抱いている人はけっこう多いようです。
劣等感がその後も追いかけてくるんでしょう。

完全に自分のせいじゃなくて、親のせいだ、と決めて、辞められる人はたぶん大丈夫と思います。
けど、多くの方は、そうはいっても自分も至らないところがあったし・・・なんて反省するんじゃないでしょうか。
そうすると辞めてからも結構つらいですよね。

辞めるにせよ、続けるにせよ、とりあえずここで一区切りはしておきたいところ。

もう少し続けてみよう、と決めた人に一つ提案があります。
それは、「社内で自分が尊重される居場所を作りましょう」という事です。
そのためにはちょっとばかり発想の転換が必要になります。
もしその覚悟ができたなら、この後を読み進めてみてください。

「認められたい」という依存心

まず知っておくべきことは、「誰かに受け入れられたい」、もっというと「誰かに認められたい」というのは言ってみれば依存心です。
何をしているかというと、「自分の評価を他人に依存している」という事です。
本来、自分の価値は自分で決めればいいのです。
自分が価値ある存在か、価値のない存在かを他人に決めてもらいたいから、人が自分をどう思うかが気になります。
人が自分をどう思うかを気にし始めると、人が自分を受け入れていない状態に気づくとたまらなく苦しくなります。

いきなり飛び込み営業をして、見ず知らずの人にけちょんけちょんにやっつけられるとします。
その見ず知らずの人は、私のことなんか何一つ知りません。
しかし、そのタイミングで(もしかしたら集中して仕事してたかもしれないし、誰かとケンカをしてイライラしてたかもしれない)、しつこくセールスされた(こちらにそのつもりはなくとも、イラついてるときのセールスはしつこく感じる)ことに腹を立てているだけかもしれない。
けど、うっとおしい!と見ず知らずの人に言われてしまうと、「ああ、鬱陶しい奴なんだ、オレ」と素直に思ってしまいがち。

他人の価値観・評価で自分を見る、というのはこういうことです。

親にとって子どもはいつまでたっても子供です。
頼りなく見えることも多いし、逆に、一気に成長したりすると自分の威厳が脅かされる恐怖を感じることもある。
私達が子どものころは、親に評価されたいがために、いろんなことをやってきたし、家業も継ごうと思ってここまで来たわけです。
しかし、それは親に依存していた期間で終わってもいいんじゃないでしょうか。

もう今は、ちゃんとした大人です。
しかも、これからは親からの評価を期待しても、がっかりすることが多いと思います。
なぜなら、同じ職場で仕事をしている以上、親はあなたのことをライバル視せざるを得なくなります。
なにしろ、自分の地位が危ないのですから。
ハッキリ言っておきますが、親があなたを後継者として会社に招いたのは、親が引退するためではありません。
親は、あなたが同じ道に進むことで、「自分がやってきたことを子どもに認めてもらうため」跡を継いでほしそうにしていたのです。

親である先代もまた、誰か(このばあい子である後継者)に認められることで、自分の価値を確かめたかったのです。

依存関係から抜け出そう!

ここまで見て、ちょっと滑稽に感じるかもしれませんね。
子どもは親に認められたくて、家業を継ぐ。
親は、子どもに認めてもらいたくて、家業を継いでもらいたがる。

ここで、一つ一致したことがあります。
お互い認められたい、という事なんです。
そしてそのはざまに家業がある。
ある意味、家業は親子をつなぐ接着剤なのかもしれません。

ここで俯瞰してみましょう。
お互いが、相手に認められることを求めています
これが男女の愛情だったらうまくいくのかもしれませんが、親子ですからちょっとまずい。
じゃあ、まずは、求められているものを与えてみてはどうでしょう?

ええ、それが心理的に難しいことはよくわかっています。
なぜ難しいかと言えば、それだけ人として成長しなければならないからです。
人が成長するという事は、人を許す許容度がひろがる事だと私は思っています。

具体的に言うと、後継者はおそらく親や従業員を自由自在に操りたいと思っているんじゃないでしょうか?
それをいったん緩めてみます。
ええ、そうすると、後継者的には自分の将来のリスクが増すような気がしますよね。
それも含めて、「どーんと来いや」という気持ちで受け入れます。
すると何が起こるかというと、ああ、後継者は器の大きい人だな、というにんしきが広がります。
その結果、社員からいろんな相談が入るようになるんじゃないかと思います。

そうやって少しずつ居場所というか、求められる場所を作っていくというのは後継者としてアリな戦略だと思います。

私がいろんな方の相談を受けて感じるのは、親の方が後継者より子供っぽいケース、けっこうあります。
従業員は、そんな親に相談できないことを相談する場所を求めている場合もあります。
だとしたら、自分が親より強い部分を社内外で活かしていくという事を考えてもいいと思います。

「辞めたい」と感じたら

居場所を作る事から始めよう

ここまで検討してきたとおり、「辞めたい」と感じるのは多くの場合「居場所」がないから。
だとすると、自分の居場所はどこにあるんでしょうか?
それがないからひきこもる・・・という事ももしかしたら今の時代はあるのかもしれません。
その気持ちはすごくわかります。

私にしてみれば、ある朝起きたらすべての価値観が覆るようなことが起きてくれないかなーと思っていた時期もあります。
しかし、自分に都合よく周囲が変わってくれるという事はそうそうない、という事がよくわかりました。
(頭ではわかっていても、ずっとそれを待ちわびている自分がいたのは事実です苦笑)

そうすると、何か現実を動かしていかなければなりません。
その際に、今までのとらえ方で現実をとらえていると、まったく糸口が見えません。
大事なのは、少し高い次元で物事を見てみることです。

すると、辞めたい理由は居場所がないからとわかる。
であれば、居場所があれば今の会社も悪くないと思えるかもしれない、という仮説が立ちます。
その居場所がないという感覚は、あくまで「自分に対して他人がどうふるまうか」をもとに感じている、という事に気付けば、
他人のふるまいに左右されない自分の評価を持てばいい、という事になります。

それはシンプルに言えば、自画自賛。
自分はこれでいい、自分はここにいるべき人間だ、と自分で思い込めたらオッケーなわけです。
その思いを他人に強要すると、イタイ奴なんですが、自分一人で思っている分には問題なしです。

そして自分を大切にできる人は、他人にも寛容になることができます。
結果、他人から信頼を受けます。
するとそこには、まさに自他ともに認める自分の居場所が出来上がります。

世の中で起こることはすべてがシステムのようにつながっています。
やるべきことは、はじめの一歩。
自分を認めるという事から始めればいいのです。

 

そのてだすけとして、

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