跡継ぎの悩みはどこか捉えどころのない状態にあるのではないでしょうか。
その原因を私は、「複数の問題が次々現れるから」と考えています。
会社が時代にそぐわなくなってきたからこれを変えていかない、と感じる後継者。
それをやり始めると、社内や先代から受ける反発。
そこで力を緩めると、周囲から見た二代目という自分の境遇から、なかなか立場がなくなる。
業績が今一つなのは自分の問題というより、会社が変わらないからなのに、と感じる。
そして動けなくなる自分に自己嫌悪する。
何か一つ解決しようとすると、別の問題が覆いかぶさってくる。
これが跡継ぎが袋小路にハマってしまう原因です。
詳細は拙著に詳しいのですが、今日は「時代にそぐわなくなったビジネス」について考えてみたいと思います。
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時代とともに、一つのビジネスは衰退していきます。
恐らく永遠に続くビジネスなんてないのではないかと思います。
日経ビジネスが編纂する『会社の寿命―盛者必衰の理』という本では、
日本の過去100年間のトップ100社を分析し、ある結論を出しました。
「企業の寿命は30年である」
というのです。
トップ100社ということですから、基本、上場企業です。
上場企業と、中小企業では状況は違うのでは?と感じる方もいるでしょうが、
私の肌感覚で言えば、まあ30年~40年の間ぐらいに一つの区切りがあるように思います。
実際にはこんな感じです。
創業者はだいたい30歳代で起業します。
その会社がそこそこ安定すると経営者は40歳~50歳代。
しかしちょうどそのタイミングで、そのビジネスがだんだんと賞味期限切れが近づきます。
これまでさほどシャカリキにならなくとも成り立っていたビジネスが、
けっこう営業努力をしないと成り立たなくなってきます。
営業もかつては単純に量を重ねれば何とかなったものが、
よほど工夫しないと成り立たなくなってきます。
創業当時から行ってきたビジネスの商品あるいはビジネスモデルが、社会の発展から取り残されてる状況です。
ところで、普通、起業する際は「社会より進んだ商品やサービス」を市場に持ち込みます。
社会より進んでいるからはじめは受け入れられにくいのですが、次第に社会が発展してくるとその商品とバッチリ合うタイミングができます。
その時、たぶん会社の商品はバカ売れしたことでしょう。
しかし、社会はどんどん先へ進んでいきますから、会社は取り残されます。
大事なのは、それより先に「次の5年、10年の間にバカ売れ刷るであろう商品やサービス、ビジネスモデル」を創り出すことが今まさに求められています。
第二創業と言いますが、まさにそういうことです。
まだ時代には受け入れられないけど、何年か経てば人が欲しがるものを今まさに仕込む必要があります。
これはある意味、今の本業で得た栄光を捨てるとまではいかなくとも、その世界では高かった経験値をかなぐり捨て、まったく初心者の世界で飛び出すことになります。
けっこう覚悟のいることなので、さすがに60歳代の創業者にはなかなかできません。
それを担うのが一般的には後継者なわけです。
となると、誰もが理解できないことを社内でやり始めなければなりません。
これは孤独でもあるし大変なことなのですが、後継者の役割と言えるでしょう。
そしてこれはある意味、失敗して当たり前なのです。
なぜかと言えば、起業するも同然だからです。
何度も何度も失敗します。
そして社員には冷たい目で見られるかもしれません。
さらには、無責任な世間の目は、後継者が何をやってるかを知らずに能力不足だと勝手な判断をします。
その中でも、一人チャレンジしなければならないのが後継者です。
後継者も、創業者も、
世間も、取引先も、
誰もが知っていていただけるとありがたいのですが、
今のタイミングは誰が指揮を執っていても難しい局面です。
それをなんでも後継者のせいにはしてほしくありません。
なんとなくうまくいってそうに見える会社は、創業者が「会社を変えない」ようにしている可能性があります。
もしかしたら、後継者が「チャレンジしていない」可能性もあるでしょう。
むしろ波が立つのが普通で、創業者でも跡継ぎでもいいので会社を変えなければならない時期である会社がほとんどじゃないかと思います。
某大手家具販売会社も、親がやってても娘がやってても、いずれあのままではダメになってたと思いますよ。
要は、経営の力があるとかないとか、
そういう話じゃないんです。
チャレンジしたかどうかです。
そしてチャレンジしていなければ、当面は波風が立たずいい後継者と言われるかもしれませんが、
なかなかその後の20年、30年、会社を持たせるのは難しいんじゃないでしょうか。
良い方向に行くにしても、そうでないにしても誰が責任をとるか、です。
会社を変えなければ、最後は後継者のせいにされます。
会社を先代が変えれば、先代の光が強くなって後継者は影の人になります。
後継者が会社を変えれば、うまくいかなければ後継者のせい。上手くいけば、後継者の手柄。
つまり、後継者がHappyになれる道は、会社を変えて、それを成功させることしかありません。
ちなみに、『会社の寿命―盛者必衰の理』では衰退する企業の特徴をこう述べています。
本業比率70%以上、平均年齢30歳以上の企業は明確に衰退の道をたどる、と。
そこから抜け出すには、「変身」以外にはない、と結ばれています。
後継者の役割はここにあるのだと、私は考えています。
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