後継者

なぜ後継者は、親と仕事をすることを選ぶのか?

私のもとには基本、悩みを持たれている後継者がお越しになります。
だからかもしれませんが、皆さん「親と仕事がしたかった!」という思いで親の会社に入った人はあまり多くはありません。
みな、立場上、しょうがないよな的なニュアンスが多少なりともあることが多いです。

それでも、なんだかんだ言って親と仕事をしている現実があるわけです。
それはいったい何がそうさせるのでしょうか。

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私の中で「二代目」的な立場で、とても印象に残っている人が長嶋一茂さん。
国民的スーパースターを父に持ち、彼自身野球の世界に飛び込んだとき、テレビを見ながら「あーあ」なんて思ったものです。
親と比較され、大変な思いをするのは火を見るより明らかだったからです。

きっと彼自身、そのことは認識していたと思います。
それでもなお、野球だったわけです。

 

 

 

 

実は、長嶋一茂さんは著書『乗るのが怖い―私のパニック障害克服法』の中で、こんなことを明かしています。
子供のころ、空手と野球に強い関心を示していて、どちらを本格的にやるのかをずいぶん悩んだそうです。
結果、野球を選んだとのこと。

たぶん、多くの人は、もう一つの道があるならば、空手を選べばよかったのに。
そんな風には思わないでしょうか。
私は激しくそう思いました。
実際に彼は、野球を引退してから、かなり本格的に空手を復活させたそうですから、やっぱり相当好きだったのでしょう。

私の勝手な想像ですが、たぶん、長嶋一茂さんは茂雄さんに認めてほしかったんじゃないか、と考えています。
すごく象徴的なので一茂さんを取り上げましたが、日本中の後継者のみなさんも近い思いがあるんじゃないかな、と思います。

親の会社を継ごう。
こういう決心はけっこう大変なモノなんですが、そうすることで親に認められたかった。
そして親と同じ道で、それなりに能力を認められたかった。
自分では意識していないかもしれませんが、心の奥底にそんな思いがあるんじゃないかと思います。

即座に肯定できないかもしれませんが、そういう可能性があるかも、という考えは心の奥底にとどめておいてください。
それが行動の原理になっているからです。

 

そうすると、いろんなことが理解しやすくなります。
たとえば、親の会社でいるとなぜつらくなるのか。
それは複合的な理由がありますが、一つは、親に認められるために会社に入ったのにないがしろにされるからです。
それが、自分を鍛えるためだったらいいのですが、実はそうとは思えない仕打ちを受けることがある。

それはそれで親にも複雑な心理があって、親は自分の立場を守りたいと思っています。
それが年を取ると余計にその傾向は強まります。
だんだんと孤独感が深まる中、会社という唯一自分を必要としている場所から離れることに不安を感じるのです。

Stephanie AlbertによるPixabayからの画像

認めてほしい子と、自分の立場を守りたい親。
まあリーダーの座を争うぐっちゃぐちゃの世界ですね。

これを断ち切るには、
・他人に認めてもらうということを必要としない後継者
・会社で人に頼らる事がなくても生きがいを見出せる親
という状況にもっていくのが理想的です。

するとたいてい後継者(私を含む)は、「親が会社以外で熱中できることや場所」へ親を追い出そうとしがちです。
まあ親も変わってほしいけど、よくよく考えれば、まず自分でしょ、ということになるべきじゃないかと思います。
じゃあ、自分はどうすればいいかというと、他人ではなく、自分で自分を認められればいい。
そういうカラクリがわかると、いろんな対処法を考えることができます。

ここに「自己肯定感」という最近よく聞くキーワードが出てきます。
もし、今の状況がきついなら、「自己肯定感」を上げる工夫をすればかなりのことが改善します。
その方法はたぶん、たくさんの本が出ていますので、参考にしてみてください。

最近の私の勧めは、『シンクロちゃん――一瞬で人生を変える「10秒スイッチ」の法則』です。

にわかには受け入れがたいかもしれませんが、30年近く親子の確執をウォッチしてきた私の見立てです。

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