後継者

跡継ぎとなった人が考えたい業界予測とその対処

会社はこのままではじり貧。
そんな危機感を持っている跡継ぎの方は多いのではないでしょうか。
しかし、具体的に何をやっていいのかわからない。
そんな時に参考になりそうなこと、少し考えてみたいと思います。

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どの業界もいろいろ変わっていく?

話に聞いたある業界の不安

先日ある場で興味深い話を伺いました。
たとえば、出版業界。
もともと彼らは特殊な流通があるのですが、それが今変わりつつある。
電子版の雑誌や書籍の台頭とならんで、Amazonが書籍買い取り制度を出版業界に提案しているようです。
一般の書籍は、書店に並ぶ本は実は書店が仕入れているというより、売れるまでは出版社の持ち物。
ある意味、書店というのは場所貸しのビジネスなんだそうです。

長年築かれてきた流通の仕組みが根本から変わる可能性をはらんでいるようです。

いろんな業種のお客様と話をしていると、どこともビジネスが大きく変わりつつあると言います。
それは私のところでもそうですし、これを読んでる方の業界でも多くの場合そうなのでしょう。

古参企業VS新興企業?

こういう時、なんとなくイメージしがちなのが、
古参企業と、新興企業の攻防戦、みたいな対立の構図。
自分達の業界をよそ者から守れ、的なムードがあなたの業界にもないでしょうか?

私の知る保険業界も同様で、お客様にAIを使って保険提案というと、その考えをはじき出そうという考えが頭をよぎります。
「いやぁ、あんなの、いい加減ですよ」「やっぱりプロの知見がだいじなんだ」
業界の中で、自分達のやってきたことへの自我礼賛が始まったりします。
世の中がどんなに変わろうと、私たちの持っているものの価値は変わらない・・・と。
逆に新興企業を指さして、あんなのまがい物だよ、と言い合って安心すること、けっこうあると思います。

 

しかし、たいていの場合、新興企業やよそ者は、お客さんのニーズを的確に把握していたりします。
じゃなきゃ、後発なのに、事業が伸びるわけがないのです。
それが既存業者の持つ正義とはズレていようと、お客さんの心をつかんだ者が勝つのはたぶん商売の基本でしょう。

どこを見ているか?の違い

古い企業にとってのライバルは、相手にとってはライバルではない!?

で、気を付けたいのが、たぶん新興企業は「古い会社をつぶしてやる~!」という気持ちでやってるわけではない、ということ。
そんなことはどうでもよくて、お客さんがどうすれば振り向いてくれるか。
それだけを考えているんじゃないかと思います。
けど、古くからその業界で食べてる企業は、「俺たちの市場を荒らすな!」とばかりによそ者を排除しようとしたり、よそ者と何かと競おうとする。
悪意はないんですが、お客さん一筋、という路線から外れてしまうんじゃないかと思います。
それが「顧客の囲い込み」なんて言う言葉に現れてきたりします。
「ほかの人を見ちゃいけない」なんて言い出す独占欲の強い恋人みたいな感じですね。

そもそも「新興企業や異業種による脅威」なんていう言葉を使うと、宇宙人の襲来みたいな感じで排除しなくちゃならないような気がします。
そこに顧客のメリットはおざなりにされることも、たまにはあるんじゃないでしょうか。

業界の未来が不安なら・・・

簡単未来予測

そこでどうするか、なんですがこれはあくまで個人的な仮説・・・というより自分の思考実験のようなものです。

初めに、自分たちの業界のざっくりした未来予測をしてみましょう。

まず、STEP1です。
自分達は、どんな価値を顧客に提供してきたか、を振り返ってみます。
たとえば私の父は保険の販売店でした。
普通の人が知らない保険の効用や、普通の人が意識しない突然のアクシデントを見える形にして、その対策を提供すること。
あとは、保険という商材を合理的な組み合わせを提案すること。
これが近年の保険の販売業の提供してきた価値です。
当社の特徴的な部分としては、総務部の手間を削減するという価値提供も行ってきたように思います。

そして、STEP2は、それを代替できるものはあるかないかを考えてみます。
ここはできるだけ広い視野をもってみていく方がいいと思います。
たとえば、AIが代替できるようになるだろうなぁとか、たまたま耳にしたのは歯科治療のサブスプリクション(定額使い放題)モデルが話として出始めてるとか。
もしこれが一般の医療の世界に導入されたら、医療保険っていらなくなるなぁとか。
この辺は情報収集力が大事なので、広くアンテナを立てたほうがいいと思いますし、いろんな人を巻き込んで考えてみるのも一考です。

STEP3としては、自分が一顧客となった視点でSTEP1と2のリストを見比べてどっちが魅力的かを考えてみます。
ここで気を付けたいのが、自分目線ではなく、顧客目線であるということ。
ここだけの話、保険の世界にいる人は、自分自身がチョイスする保険は意外と偏っていたりすることが多いものです。
たとえば自動車保険でも、自分である程度処理できるから、そこそこカットする内容も多い。
しかしお客さんには、「バランスよく」を心がけていて、違う選択をする人も割といます。
お客さんがどこまで自分でできるかを判断できないので、そうなってしまうことがあるのです。

業界人のプライドはいったん捨てる

もう一つ気を付けたいのが、あなたの商品を、お客さんはあなたが考えているほど重視していない可能性がないことが多い、ということ。
そんなちょっと冷ややかな視点で見てみてください。
たとえば、私の知る保険であれば、保険買うのに手間かけたくないし、安いのがいいと思う人はけっこう多いと思います。
いろいろ聞いてみたい気はするけど、人と会うのはちょっと面倒。
となると、AIで適宜いいタイミングでお知らせがあり、チャットボットでやり取り、というビジネスモデルは歓迎されそうです。

これらを総合的に考えると、パターン化できる内容については人が介在する価値は小さくなりつつあることは間違いなさそうです。
ざっくり5年くらいすると、だんだんと業界地図が変わってくる気配は感じ取れます。

なにを「選択」するか

どんな顧客と、どんな価値でつながる?

あとは、決め事を考えていく必要があります。

STEP1は、そんな状況においてどんな顧客とどんな価値でつながるかを考えてみます。
考え方は色々ですが、ざっくりこんな感じに大別されるのではないでしょうか。
①新しいサービスに飛びつく顧客(新興企業やよそ者に奪われる層)
②既存のサービスを使い続ける顧客
③今の顧客に新たな価値を提供する(顧客リストを重視して他ではない価値提供)
④新たな価値で違う顧客層を開拓する(自身の強みを生かして新たな市場開拓)

 

で、競争が一番激しいと考えられるのが、②だと思います。
なぜならば、既存サービスの顧客は徐々に新しいサービスを求めて移動していきます。
一方で、今までと変わらないサービスを提供し続ける業者の数は意外と減らないからです。
「決める」ことを避けた業者はみんな②にのこりますから、もう血みどろのレッドオーシャンです。

それでも最後の一人として生き抜けば、その先には未来があるかもしれません。
そういった場合は、生き残るための資源(有形無形含めて)があるかをチェックしたほうがいいでしょう。

それは自分たちにできることか?

STEP2として、その実行可能性を考えてみます。

①のように新興企業に飛びつく人たちをつなぎとめるには、彼らの提案を退けるほどの持ち味が必要でしょうね。
それが可能かどうか?を考えてみます。

③は割と簡単です。
既存客の役に立つために何ができるかを考えればいいだけです。
これを始めると、業種が変わる可能性があります。
ここで大事なのは、案外社内の意識改革かもしれません。

④は顧客開拓という難しさがあるのですが、これまで培ってきた強みは何か?を考えるいい機会になるんじゃないでしょうか。
今までのビジネスの中では、強みを明確にしなくても、何とかなったかもしれません。
しかし市場が混迷しているときは、自分たちがどんな強みを持っているかを意識しないと顧客からも見えなかったりします。

たとえば、医師が開発したサプリだとか、デザイナーが作るパッケージとか。
以前、何かで読んだのですが、あるメッキ屋さんがエンジンの部品にメッキで色を付けて、自動車メーカーに提案したケースがある、という話があったそうです。
高級車メーカーは、見えない部分の美しさにもこだわるようで、高いのにみんな乗り出してサンプルを見たような事例があったのだとか。
言い換えると、自分たちの提供できる価値を評価してくれる客層を探す、ということにもなるかもしれません。

STEP3は、小さなことでいいのでやってみる、ということ。
いきなり勝負に出るのもいいのですが、私はそれは怖い(苦笑)
だったら、小さな小さなテストをやってみる。
すると、出来そうとか、無理かもとか、実施にはこんな問題点があるとか、いろんな気づきがあったりするものです。
そこから再検討し、改善し・・・と、あとはその繰り返しですね。

お客さんは何を求めているか?

営業の常識

営業の世界で有名な言葉があります。
「ドリルを売るな、穴を売れ」

簡単に言うと、「ドリルが欲しいんです」と買い物に来た顧客に、ドリルを売るのは営業としてちょっと弱い。
ドリルで何をするんですか?と聞くと、棚を作るために穴をあけたい、と顧客は答えたとしましょう。
だとすると、わざわざドリルを買わなくたって、穴あけならこちらで開けて差し上げますよ、と提案できる、という話です。
真の顧客のニーズに耳を傾けることが大事、ということなんだと思います。

このケースでは顧客は、「モノ」が欲しいのではなく、「便益」を求めていた、ということなのでしょう。

ビジネスモデルとか戦略とかを考えるとき、この思考って結構大事だと思います。
保険屋さんなら、保険が欲しくて仕方ない人はたぶんいない。
安全で平和な家庭生活や、会社が倒産しないことが保険を求める理由です。

出版業なら、顧客は本そのものではなく、役立つ情報や娯楽を求めてるかもしれません。
学校や教育機関なら、勉強そのものが求められてるかもしれないし、そこで取れる資格や学歴が欲しいのかもしれません。
割と有名なのは、かつてアメリカの自動車業界をフォードが席巻していたとき、ライバル社の社長が「私たちは車ではなくステイタスを売ってる」的なコンセプトを明確にして一気に会社を伸ばした話があります。
余談ですが、逆に言うと、若者の車離れは、車でステイタスを主張する必要がなくなった結果なのかもしれません。
そこを読み違えて、商品開発するとちょっとまずい結果になりそうですね。

まあなんにしても、お客さんの本心(多くはお客さん自身も明確にはできていない)がどこにあるのか?というのを探ることが大事なんじゃないでしょうか。
創業当時はそれを考えて考えて、考えつくしてきたはずなんですが、後継者が会社を継ぐころにはその感覚は薄れがち。
なぜかというと、考えずともとりあえずは食べていけるレベルの事業ができているからじゃないでしょうか。

私たちはどうすればいいのでしょうか・・・?

いろんなセミナーに参加すると、こんな質問をよく見かけます。
「そんなに混迷の時代に、私たちはどうすればいいのでしょうか?と。
あるコンサルタントの方はぴりゃりとこうおっしゃいました。
「それを考えるのが、あなたの仕事でしょ」
そうなんですよね、他人が教えてくれるものではありません。

だから、もう一度、顧客の本当のおもい。
それも言葉にならないような隠れた思い。
これを想像する。
そうするとなんとなく、道が見えてきたりします。
で、やってみて上手くいくかというと、たいていすぐにはうまくいきません。
そうやって、考えて、経験してみて、修正していく、っていうのがきっと大事なんだと思います。
自戒を込めて言うなら、手数を増やせってことですね。
やり続けて、改善してるうちに、気が付いたらすごい独自性を発揮してるって会社はけっこうあるような気がします。
私たちは結果だけ見て評価するから「この会社、すげー」となるんですが、たぶん始まりは小さなトライアルだったんじゃないでしょうか。

まずは何か一つ、人に言うのも恥ずかしいくらいの小さな一歩でいいので、会社の中からスタートさせてはいかがでしょうか。
不安に震えて悩んでいても解決しない問題の糸口が、小さく動き始めることで見えることも結構あるものです。

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