「正攻法」がうまくいかない時代に後継者はどう会社を変革するか?

私が学生のころ、本を買うと言えば、駅前の個人営業の書店でした。
小さなお店ですから、収められている本の種類は知れています。
しかし、当時の私にとって、本と言えばそこで出会えるものがすべてでした。

それが今となっては、ネットを開けば千万単位あるいは億単位の種類の本があり、
クリック一つで翌日には手に入る状態です。
消費者としての私はその広がった世界を手放すはずもなく・・・。
そんな状況を見ていると「もし、私が個人書店を継いだとしたら、どうするだろう?」と考えてしまうのです。

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書店がたどった紆余曲折

個人書店から大規模郊外店へ

1990年代だったでしょうか。
私の住む大阪の北部では、郊外の大通り沿いに次々と駐車スペースをもった大型書店ができました。
小さな書店ではなかなか自分の欲しい本と出合えないため、足はその大型書店に向かいがち。
いつしか、駅の小さな書店は小ささゆえ、敷居をまたぐのさえプレッシャーを感じるようになりました。
個人書店と言えば、眼鏡をかけた白髪のオヤジが、立ち読み客をはたきで追い返すイメージが私の中にはありますから(苦笑)

そして2000年代に入るころには、大型ショッピングモールが次々できて、そこには比較的大きな書店が入るようになりました。
しばらくは、休日の買い物ついでに書店を覗くのが、いつもの本の買い方になりました。
そして今や書店で立ち読みし、Amazonで買う・・・なんて事さえしばしば。

品ぞろえと効率には限界が・・・

これまで、リアルに見える範囲こそが、自分の世界の限界でした。
本でいうなら、誰かに進められない限りは、書店に並ぶ本以外の選択肢が存在することさえ見えなかったわけです。
それが今や、ネットで調べる、SNSでシェアされるなどして、本という縛りで考えただけでも、リアルを超えた世界がネットにあります。
すると、それを現実の中で見せるという、リアルな書店には限界があります。

リアル書店がどんどん大型化したところで、こんどは見切れない現実が出てきます。
つまりここには限界が生じます。
Amazonのように、億単位の種類の在庫を置くことは資金効率的にも難しいと言えるでしょう。

リアル書店の価値

思いがけない出会い

知的好奇心だったり、ビジネスや生活上の問題の解決だったり。
本に求めるものは、人や状況によってまちまちです。
「検索できること」は確かに効率がいいのですが、そこには問題があります。
知りたいことを、明確なキーワードとして自分でわかっている必要があります。
そしてもう一つは、自分の発想を超えた出会いが起こりにくいということです。

たとえば、会社の売り上げを上げようと思い、その方法を検索していたとします。
その時に、自分の頭に「営業」という文字しかないとすれば、営業に関する情報が出てくるでしょう。
「営業を成功させる10か条」とか「トップセールスを記録した敏腕営業マンが使っている30の秘訣」とかいう情報です。
しかし、そもそも商品開発の問題や、広告の出し方や、ネーミング等に問題があっても、それに気づくことは難しい。

そこでフラッと立ち寄った書店で、「商品名を買えたら死筋商品が売れた!爆売れするネーミングの技術」なんていう本が目に付いたとしましょう。
その時初めて、「営業の問題だけじゃないかも」なんていうことに気付いたりすることもあります。

本が主役ではない書店

ビレッジバンガードという(一応)書店があります。
遊べる書店をコンセプトとして、ほぼ雑貨屋さんになってますが、うちの娘なんかもよく立ち寄ります。
なにか面白い出会いがここにあるのかも、という期待があるようです。

また、日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由(東洋経済ONLINE)という記事を読むと、ニューヨークでは小規模書店が元気がいいのだとか。
そこはたいていカフェなどを併設していて人がつながる仕掛けをしているようです。

そういえば、Amazonがリアル書店を作るといったことが話題となっていました。
小売再生 ―リアル店舗はメディアになる(ダグ・スティーブンス)によると、これはネットを制覇したAmazonがリアルにも販売網を広げたというものではない、と言います。
リアルな書店での思いがけない本との出会いを作ることがその目的のようです。
そしてその選択や行動は、Amazonの会員制度の情報に蓄積され、次のレコメンド情報に反映されていくのでしょう。

「商品」に依存しすぎたこれまでのビジネス

ありがちな多角化戦略

じゃあ、うちも多角化しよう!
CDやDVDも置いて、雑貨も置けば地域の書店でも生き残りができるかも・・・。
そう考える人もいると思います。
何もやらないよりかはマシでしょうが、あまりうまくいくとも思えません。

なぜなら、本屋もCDやDVDを扱うところはたくさんあるし(TSUTAYAに勝てますか?)、
CDショップも、本を扱うところはたくさんある。
そもそもAmazonみたいな巨艦がそこにいるのに、品ぞろえを増やせばいい、という話が成り立つはずがありません。

ある業種の人が、別の商品を扱う副業を始めることはけっこうあります。
しかし、そこで行う「副業」には、それを本業にしている人が必ずいます。
そことの競争を考えると、副業部分は激安で提供するとか言う対処が必要になりがち。
利益率が下がることが多いし、そもそも手間ばかりが増えるということもあります。
そういった部分を、しっかりと検討する必要があるのではないでしょうか。

「需要」を創り出す

さて、品ぞろえや安さを武器にするというのは、「扱っている商品」に依存するビジネスです。
需要>供給
の時代であれば、ラインナップを増やせば売り上げは上がりました。
しかし、現代は過剰供給気味。
となると、需要を創り出すことを検討しなければなりません。

それは例えば、書店での思いがけない出会いだったり、人との出会いだったりなのでしょう。
Amazonのリアル店舗は、「需要を創り出す」ことが目的の1つなのかもしれません。

このことは、かのドラッカーが言う起業の役割としての、「顧客の創造」と言える行動かもしれません。

1万円選書

数年前話題になったのが、北海道の書店が始めた1万円選書。
プロフィールカードに必要事項を記入して送ると、書店の名物店長がその人のために選んだ選書ほぼ1万円分が届けられるそうです。
今も大人気で、ホームページを見ると年2回の抽選で、当選者だけがその選書を購入できるようです。

本好きの人は、日常的に本を買いますが、どうしても自分で選ぶ本は似たり寄ったりになりがちです。
そこで、他人の(しかも本屋の店長という本の専門家)目から見たおすすめ書籍を選んでもらう。
まるでワインのソムリエのようですね。
そんな思いがけない出会いを求めて、このサービスに申し込む人が後を絶たないのでしょう。

このサービスに大掛かりな投資は必要なかったと思います。
アイデアと、店長の選書の手間だけです。(たぶん、店長は楽しみながらこれをやってると思いますが)

別に大掛かりなことをしなくとも、発想だけでできてしまうことはけっこうあるのかもしれません。

ライバルは予想外のところから現れる

ビン入り清涼飲料

SNSで「この30年でなくなったもの」を聞いてみました。
いろんなものがなくなりましたが、そうそう、と思ったのが「ビン入り清涼飲料」です。
プラッシー、コーラ、サイダー、ラムネ。
みんなビンに入っていましたが、今やペットボトル。
ビンを飲料メーカーに納品していたところはどうしているのでしょう。

ビン業界のホームページを見たところ、ガラス瓶全体の売り上げは上がっているようなので、何かしらほかの用途で作られているようです。
飲料の入れ物としてだけ見たときに、かつては隣のビンメーカーだけを見ていればよかったわけです。
しかし、現実は、ペットボトルというまったく違う材質の物が普及してきました。
そう考えると、やはり商品ありきの考え方では、視界の外から変化がやってくるリスクには対応が難しそうな気がします。

私たちは何を提供するのか?

後継者の役割の一つに、会社の変革というものがあると思います。
その時に、考えたいのは顧客にどんな価値を提供するか?という問いだと考えています。
商品を提供するなら、誰でもできます。
その商品を提供することで、どんな価値を提供するのか、という一段深い考察が必要だと思います。

たとえば、ニューヨークで成功している書店は、出会いの場として書店を機能させているようです。
それは人と知識を結び付けるだけでなく、人と人を結び付けるコミュニティを作っているのではないかと想像しました。
1万円選書は、おそらく新しい体験、新しい世界を見せているのでしょう。
ビレバンも同じですね。

会社のコンセプトとして、「高品質な商品を提供する」というのはもはや当たり前になってしまって、その商品を通じてどんな価値を提供するのか。
これが、後継者の会社改革のヒントになる質問となるような気がします。

冒頭の「自分が書店を引き継いだとしたら・・・」という問いへの答え。
私ならやはり、ビジネス書をキーとしたコミュニティを作ろうと考えるんじゃないかと思います。
読書会、セミナー、異業種交流。
こんなものはどこにでもありますが、書店のオヤジが開催する交流会というのは独自の価値がありそうな気もします。
本を売るためのイベントではなく、結果として本が売れるながれを考えるんじゃないでしょうか。

皆さんはいかがですか?

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