ある二代目社長が起こした社内会議の大混乱(3)

一時的には、「どうなることか?」
と思えた会議もなんとなく順調に進み始めました。
R社長はこれからの道筋を自分で計画できるようになりました。
私に今後、4回分の会議のテーマの計画を聞かせてくれました。

私は、その話も対して聞かずに
「いいんじゃないですか」
と一貫して肯定しました。

ひとまずは手を放すべきタイミングが訪れたようです。

(前回の記事はこちらから)

ある二代目社長が起こした社内会議の大混乱(2)

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会議が紛糾し、一向に前に進まない。
そんな悲痛な叫びで私のもとにやってきたR社長。
二代目経営者のR社長はこれまで敷かれたレールの上をただ進んできた。
自分がレールの上を走ってることにさえ気づかずに。

その二代目社長が何かしらの気付きを得て、そのレールをはみ出そうとした。
すると社内は大混乱。
それがこれまでのストーリーです。
そこに対して私がしたアドバイスは、いくつかの質問を与えただけでした。

質問があなたを救う?

混乱は必ず起こる

R社長のこれまでの経過を振り返ってみましょう。
思うところあって、会社の考え方を変えようとスタートさせた。
ところが、社内は混乱に陥った。
R社長もその様子を見て、慌てふためいた。

そこから抜け出したきっかけは、何だったのでしょうか。
一つは、新しいことを始めよう、新しい考えを人や組織に取り入れると必ず混乱が起こることを受け入れること。
そして、その混乱を収束するためには正しい質問をすることです。

今回に関して言えば、「営業をなくすにはどうすればいいか?」という質問が、経営者、社員ともにしっくりくる質問だったようです。

質問で問題を細分化する

さらに具体的な行動を考えていくときに、より顧客像を明確にしなければなりません。
営業をなくすためには、お客様の関心ごとを知らなければなりません。
たとえば、お客様をざっくりと「中小企業経営者」としてもいいのですが、
お客様像がぼんやりしていればいるほど、提供するサービスもぼんやりしています。

もともとR社長も、社員さんも、マーケティングの本を読んで、
「中小企業はとがらなければならない」
というメッセージを共有しているので、先鋭的な分野に進むならもう少し絞り込んだ顧客像が必要です。
そこを意識して、その顧客像を明確にしよう、というところから顧客をインタビューする、という活動を起動させることにしました。

実はこのことは、単に顧客を知る事だけでなく、顧客からの心象も変化し、
なにより社員を育てるきっかけになりえるのではないかと、私は考えています。

体験を通して学ぶ

人の考え方が変わるきっかけの多くは体験によるものです。
いくらR社長が声をからせて言っても届かないことも、社員が現場で体験することで学ぶことは多いと思います。
たとえば、子どものころさんざん親に言われた小言を思い出してみてください。
当時は全く意に介さなかったけど、大人になって「ああ、あの時言われた事ってこういうことだったんだ」とわかることがけっこうあります。
これは自分がその場に身を置くことで、やっと理解できるということだと思います。

つまり、社員にいくら「お客様が私たちの商品のことを考える時間はわずかである」といって聞かせるより、
お客様が本当にそうであることをリアルに実感したほうが何倍も学びになるわけです。
おそらく、経営者やリーダーの仕事の1つは、こういった体験を通して「気づかせる」ことなのではないかと思います。

社員の体験をどう設計するかが、リーダーの腕の見せ所。
だから、混乱という体験もまた、社員教育の一つ。
今回は、R社長自身もいろいろと学ぶことがあったのではないでしょうか。

混乱に踏みとどまるか?混乱を乗り越えるか?

何をやるかは間違いながらでいい

さて、R社長の話はここでおしまいです。
シリーズでお読みいただいてる方は、R社長の今後のマーケティング計画をお知りになりたい人もいるかもしれません。
しかしその”答え”を知ることはあまり意味がありません。
私たちはとかく、最終完成形を模倣したい衝動にかられます。
確かにそれは近道になることはありますが、最近感じるのは、その過程で人が成長することこそが最も重要なことだと最近は感じています。
社内であーでもない、こうでもない、と揉んでみる。
社員一人一人が頭を使い、アイデアを絞り出し、問題にぶつかり、修正案を考える。
実はこのプロセスこそが、組織の成長には重要なのだと思います。

出来上がった模範解答を書き写すだけだと、その時はうまくいっても応用は効きません。
私もお手軽なノウハウ系のビジネススキルを追い求めてきましたが、どうやらそのほとんどはその場しのぎ。
長年の経験の中で学んだのは、結果を拙速に求めてはいけない、ということ。
最近はそんな風に思っています。

体験のデザイン

もういちど、R社長のたどった道筋を振り返ってみましょう。
会社に新しい風を入れようと思ったところ、会議は大混乱。
社員は、R社長の言葉を受け入れようとせず、古い価値観に固執していました。
それを打開したのは、社員の価値観にR社長が寄り添い、そこから共通の目的地を設定した。
社員さんはR社長に説得されたわけではありません。
言葉は悪いですが、妥協点を見出して動き始めた結果、R社長の思惑に近いところに進み始めています。

この関係は、どうも親子の事業承継にも当てはまりそうだ、というとこじつけに見えるでしょうか?
R社長のケースでは、さまざまな社員のさまざまな意見がありました。
登場人物は、
・R社長
・複数の社員
・本(の主張)
というところから始まり
・顧客
というフィールドに広がっていきました。

マーケティングにおける真実を握っているのは顧客。
この顧客の知られざる内面が明らかにされることで、R社長の会社は全社員の成長が促されます。
結果としてではありますが、そういう経験をデザインした形になりました。

親子経営では残念ながら、
・親
・子
という二つの対立軸しか存在しません。

親にアドバイスをする人もいれば、子にアドバイスをする人もいますが、それはそれぞれの中に秘められた形でしか存在しえません。
仲介役を立てたとしても、双方から信頼を得ている人でなければなりませんし、仲介役が「行司役」になってしまえば元も子もありません。
相手を説得するのではなく、相手に気づかせる。
そこに必要なのは「場」の設定と「体験のデザイン」ですが、そのためには登場人物を少し増やす必要がありそうです。

会社全体の体験

親と子という”サシ”の関係では、双方の影響力が強すぎます。
また、双方にとって、対立とは別のベクトルの刺激が少なすぎます。
だからどちらかが、どちらかを説き伏せる関係性しか作れなくなるわけです。
結局、どちらが正しいか?という議論になり、あいまいさを許さなくなってしまいます。

そこで一つのヒントは、その登場人物を増やせないか?ということです。
最も有力な候補は、社内の人間です。
その社内の人間は恐らく、”親派”に属する人が多いでしょう。
ちょっと偏りのある「場」となってしまいがちです。
だから、まずはその場を整えることから始めます。
それは社員を説得しようという話ではありません。
社員にあなたの考えに寄り添いたい、という思いを自発的に持たせる体験をつくるわけです。

ここで話を止めてしまうと、もやもやしてしまうかもしれませんが、そんなに難しいことではありません。
シンプルに、社員の信頼を後継者が獲得することから始めてください、ということです。
そうすると社内におこる先代が接する体験をデザインできます。
そんななかで、先代はきっと考えを少しずつ変化させてくるはずです。
もちろん、あなた自身も。

回りくどくてうんざりする?
たぶんそうですね。
けど、直接的に相手を操作しようとして疲れ果てているのが現在の状況じゃないですか?
だとしたら、やり方を変えるタイミングではないでしょうか。

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