後継者

事業承継において誰も言わない視点

2016年12月、中小企業庁は「事業承継ガイドライン」を策定・公表しました。
そこで、以下のようなメッセージを発信しています。

中小企業経営者の皆様や、経営者の身近な存在として活動されている団体や金融機関等の支援機関の皆様に、本ガイドラインを参考にしていただき、価値ある事業をしっかりと次世代へ承継していただくことを期待しています。

特に、2020年ごろをめどとした「団塊経営者の引退」時期において、非常に危機感を募らせているようで、国の大きな問題の一つといえるかもしれません。
本レポートでは、具体的な経営権や資産の移転方法などにも踏み込んで書かれているので、参考にされるとよいかと思います。
ただ一つ、抜け落ちている視点を除けば。


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親の会社を継ぐ技術

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中小企業庁は、随分前から事業承継問題については、おおきなトピックとして注視していました。
改めてここまで踏み込んだレポートをこのタイミングで公開したのも、2020年に起こるであろう団塊経営者の大量引退への対応は待ったなしと考えているからでしょう。
しかし、本文にもあるとおり、

事業承継には明確な期限がないことから、差し迫った理由、例えば健康上の 問題等がなければ、日々の多忙さに紛れ、対応を後回しにしてしまうことはや むを得ない側面もある。

というのが現実です。

 

しかし、その背景には、多忙であるから後回しになる、という単純化された話ではないものがあるから少々複雑です。
このブログでは繰り返し話をしていますが、先代経営者の心の問題です。

創業当時、すべてをなげうって起業し、寝食も忘れ会社のために尽くしてきました。
創業社長にとって、会社は身体の一部のようなものです。
これを、たとえ親族であったとしても、人に譲り渡すのは、手足をもがれるかのような苦痛を伴うものです。

 

口では、「会社の存続」を重視する、と語るかもしれません。
しかし、自分の体の一部が、自分のコントロールを離れて生き続ける事に、果たして価値を感じることができるでしょうか。
自らの手足と同等である、自分の会社と、自分自身の心を分離する作業が必要となるのが、中小企業の事業承継です。

 

逆に言えば、そこさえ解決できてしまえば、驚くほどスムーズにいくはずです。
手段の問題ではないのです。

 

まったく後継者の話を聴くことなく、自分が経営者の椅子に座り続ける創業社長。
こういう社長は、ある意味自分に素直なのかもしれません。

後継者を立てて、あたかも事業承継が進んでいるように見せかけつつ、実権を手放さない創業社長。
こういう社長は、対面を気にするものの、最後の踏ん切りがつかないのかもしれません。

 

この時に、興味深い逆転現象が訪れます。
これまでは、創業社長は、会社を自分に依存させてきました。
決定権を自分に集中させ、人に渡さないことで、自分がいなければ回らない会社を作っています。

後継者としては、恐らく先代からはこういわれている事でしょう。
「これからは、わし(創業社長)がいなくても運営できる会社にするのがお前の役目だ。」
すると、先代を持つ社内の決定権を自らがもつか、社員におろしていかなければなりません。

しかし、それは先代社長からすれば、自分の地位を脅かす行為。
無意識に後継者の言葉を拒絶します。
明確に拒絶しなかったとしても、社内への影響力を残すために、朝礼や会議で演説を打ったりし始めます。
他にも、自分でなければできない仕事を、常に持っておこうとします。

 

この時点で、会社を自分に依存させていた状態から、
先代経営者が会社に依存を始める状態に移り変わります。

 

この難しい状況を、うまくコントロールすることが、後継者に求められる手腕です。
もちろん、会社の経営をきちんと正しい流れにすることに加えて必要なこと、という意味です。
こんなこと、世の事業承継の専門家の中でも、恐らく誰も言ってないと思います。
逆に言うと、この真実にたどり着いていない人がほとんどだから、事業承継が上手く行かないのです。

ぜひ、そういった視点を持っていただき、もう一度、ご自身と会社と先代の関係を見てみてください。
今まで見えなかったものが、一本の糸でつながっていることに気付くのではないかと思います。

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