後継者が親子経営で守るべきものとは?

「後継者」という言葉は、どうも「守る」という言葉と相性がいいらしい。
家業を守る、社員を守る、伝統を守る、歴史を守る。
30年前に代を継ぐ後継者ならそれで何とかなったでしょう。
しかし、今の後継者にとって守る、という事が隠れ蓑になっていないでしょうか?






こんにちは。
中小企業二代目サポーター田村薫です。

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親子経営は住まいの建て替えに似ている?

選べる創業者、選べない後継者

20年近く前に講演した際の資料が出てきました。
そこには、後継者の難しさを家屋の建て替えになぞらえて説明していました。
創業者というのは、自分で好きな場所を見つけ、自分で好きな設計をし、基礎を作り、その上に家を建てるわけです。
しかし、後継者はそうではありません。
ここでビジネスをやる、という場所は特定され、自分に合うか合わないかにかかわらず、既に基礎があり、家屋がある。

一番楽なのは、今ある家屋をそのまま使う事ですね。
しかし、それは自分にフィットしない間取りであったり、老朽化が進んでいたり、見えない部分に白アリが繁殖しているかもしれません。

後継者であるあなたの仕事は、その家屋の使える部分は残しつつ、使えない部分を刷新していくことですよ、と。

この話に足りないもの

そこに住まう住人は、私たちだけではありません。
従業員がともに暮らしている。
だから、彼らにとっても住みよいものでなければならないし、一気に改修するのも難しいのです。
しかも、先代もそこに鎮座してるので、和室も残さなくてはなりません(笑)

我ながら、事業承継の難しさをうまく表現したな、と思います。
一方で、一番大事な話が抜けてるな、というのが今の私の感想です。

何が抜けているのか。
その事を少し詳しく話をしたいと思います。

先代の想いは時代遅れなのか?

作り、売ることが社会貢献だった時代

親子経営で、事業を継承する際、よく言われるのは「先代の想いを継承しよう。」という話。
じゃあ、その先代の想いって何なのでしょう。
テレビのインタビュアーよろしくに、先代にマイクを突き出したとき、どんな言葉が出るでしょうか?
多分、たいした話は出てきません。
それは、時代背景の問題ではないかと思います。。

たとえば、戦後から1980年代頃までは、物を作り、流通させる事が社会貢献の一つだったのではないでしょうか。
物が不足しているところに、出来るだけ早く、安く提供する。
当時は、そうやって提供される「物」に人々(お客さん)は目を輝かせていたように思います。
新たに発売される商品は、明らかに生活の質をあげてくれたのです。

近年のベンチャー企業に見る方向性

作って売れば喜ばれた時代は終わり、最近の勢いある企業はその存在意義を明確化しています。
社会の中で何を成し遂げるべきかを明確化し、そこに向かって突っ走る。
興味深い事に、こういった企業は、会社の理念やビジョン、ミッションを若手社員でさえ明確に伝えることができます。
〇〇をすることで、△△な社会にすることを目的とした会社、と簡潔に説明できるのです。

彼らにとっては、今扱っている商品やサービスはあくまで手段。
この手段を使って、どういった事を成し遂げるかを明確にしています。

一方、多くの既存の企業は、商品そのものが目的です。
その商品を販売し、普及させる事こそがその会社の存在意義、と考えているケースが多いように思います。

後継者が引き継ぐべきもの

商品への思い入れの先にあるもの

繰り返しになりますが、先代が活躍した時代は、商品こそが目的であり手段でした。
商品を作り、広めることが、世の中を便利にし、多くの人の生活や社会活動をサポートしてきました。
だから、商品やサービスを、売り、広めれば社会からも認められた時代です。

先代は、その商品やサービスに強い思い入れを持っています。

ただ、ここで振り返ってほしいのは、実は先代も商品やサービスを売ることが目的だったのではなかったのではないか?
という考え方です。
苦しい創業時代に先代がイメージしていたものは、
その商品やサービスを手にした時のお客さんの悦びの表情や声
だったのではないかと思うのです。

誰も実感として意識していないかもしれませんが、お客さんに喜んでもらうため、
失敗しても失敗しても懲りずに商品を開発したり、
軽くあしらわれて笑われても営業に駆けまわったり、
夜中まで働き詰めの日々を過ごしたり、
といった努力をされていたのではないでしょうか。

目的と手段

残念ながら、
本来的な目的であるお客さんの悦び
は、商品やサービスという実体のあるものに隠れて見えにくくなります。
先代は自分でもそのことを強く意識していないこともあるし、
言葉にするのも照れくさいし、どことなく嘘くさくなってしまうこともあるでしょう。

しかし、経済の原理から言うと、そうでないと会社が成り立つはずがないのです。

一方で、世の中では、”手段”である商品やサービスを維持する事こそが、事業の継承であるという話がなんとなく信じられているようにも思います。
もちろん、今の商品やサービスを手放す必要があるという事を言っているのではありません。
本質はそこではない、という事が言いたいのです。

後継者が引き継ぐべきものは、お客さんがどんな状態になって頂く事を目的に会社が創業されたかというものではないでしょうか。

家屋のたとえ

この事を、冒頭の家屋のたとえになぞらえて考えてみましょう。
家に必要なのは、雨風をしのげることであったり、時にはステイタスの証でもあるかもしれません。
どうしても、後継者がもつ固定観念の中でこんなふうな誤解をしているかもしれません。
先代が家を建てたから、自分も家を建てないといけないとか。
しかし、本質は、そこに住まう人が、快適で心豊かな時間を過ごすことが目的ではないかと思います。
その目的が満たされるのであれば、それはもはや”家”である必要さえないのかもしれません。
広場であったり、公園であったり、キャンプ場であったり。

同じような家を立てようと思うと難しい事も、ちがうアイデアを出せたなら、その自由度は無限です。

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