ある後継者の方は、けっこうエキセントリックな先代の感情の起伏にヘロヘロになっているという話を聞きます。
仕事に対する厳しさはある程度覚悟はしていたものの、そういった厳しさとはどこか違うような感覚があると言います。
とにかく感情をそのままぶつけられるとのこと。
これが血縁関係のない社員だったらあっという間にやめてしまいそうなんですが、息子だけにそうはいかない。
逆にそれがわかっているのか、親である先代は一般社員には冷静に対応するのに、後継者にだけ異様に激しく当たってくるのだとか。
こういった後継者からの相談は割とあります。
そして、私に関して言えば後継者の立場からのお話のみなので、あるいは偏った印象があるのかもしれません。
ただ、私もそこそこエキセントリックな社長というのは時折お目にかかるので、誇張した話でもないような気がします。
ここでは後継者の訴えが、100%事実を伝えているという前提で考えていきたいと思います。
まず、一般社員さんには冷静に振舞えているのですから、先代は常に感情むき出しの人ではない、という事です。
つまり、普通に振舞おうと思えば、後継者に対しても普通に振舞うことができる人のはずです。
だとすると、あえて後継者に対して生身の感情をぶつける理由を考えてみると、
・後継者に対しての期待感のあらわれ
・後継者に対しての失望感のあらわれ
・後継者を育てなければという責任感のあらわれ
・後継者を見ることで自分の欠点を認識させられる(嫌な自分を後継者の中に見ている)
・他の社員へのアピール(後継者を特別扱いしないという姿勢を見せる)
・先代自身の心の問題
といったことが考えられそうです。
いろんなケースがありますが、色々とヒアリングしていくと、今回はどうやら先代の考える後継者の在り方と、後継者自身の性格のギャップにたいする心配というか、不安を持っているように感じました。
もう一つ、これだけエキセントリックになる背景には、先代自身の心の問題も絡んでいそうです。
詳しくはお話しできませんが、先代は配偶者へのガッカリ感と、後継者たる長男へのガッカリ感がかけあわされて増幅されているように思います。
恐らく、夫婦間がしっかり修復できれば、後継者の風当たりも変化する可能性は高そうですが、まあそれをやるのは本人たちの話。
後継者サイドからは、あまりできる事はありません。
であれば、後継者自身が変化するしかなさそうです。
とはいっても、今すぐ自信満々でそつなく社長をやれるような人になれ、と言ったってそれは無理な話です。
そこで考えたいのは、少なくとも後継者自身の反射的な行動を変えていくこと。
たとえば、先代から怒鳴られた時、後継者はどんな反応をしているでしょうか?まずこれを自分で観察してみます。
ガッ!と勢いよく怒りだしたら、仏頂面でそれをわかったかわからないような顔で聞いているとしたら、例えば「ハイ!」と大きな声で返事をしてみる。
それでもあまりよくない結果になるなら、議論してみるでもいいし、何か一つ行動することを約束してみるもいい。
実は、毎回毎回、怒られ、そのことで自分もふさぎ込む、という関係の中では親も自分も毎回同じ反応を繰り返していることがほとんどです。
その反応パターンを知り、次は違うパターンを試してみるという実験をしてみるとだんだんと抜け道がわかってくることがあります。
大事なのは、被害者意識にとらわれて思考停止にならない、という事です。
勿論程度問題ですから、親のエキセントリック度合いにもよりますが、そもそもそんな親でもときおり子への愛情を見せることだってあると思います。
ネガティブなイメージが先行しがちですが、ぽろっとこぼれる親の愛や期待も受け止めたうえで、広い視野でとらえていくことを意識してみたいところですね。