親の会社を継ぐことになった後継者。
とりあえず、仕事を覚えるのに必死になります。
しかしそこを超えたときある疑問が心にもたげます。
良い後継者になるためにはどうすればいいのだろうか?
私なりの考え方をお伝えしたいと思います。
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Contents
後継者の役割
会社の後継者が背負う三つの役割
「立派な後継者」とはどんな後継者なのでしょうか?
まずはそこを明確にするために、後継者が背負う役割を考えてみましょう。
法政大学大学院教授である、久保田章市氏はその著書『二代目が潰す会社、伸ばす会社』で後継者の役割を以下の三つとしています。
①会社を潰さない
②社員の力を結集させる
③経営革新
大雑把にみると、私もこの考え方に賛成です。
仮に、「立派な後継者」をこの3つの役割を全うした後継者である、と定義づけて考えてみましょう。
後継者は親のマネをしてはいけない?
後継者が陥りがちな感覚として、後継者として親から下位者を引き継いだ以上、会社を大きくしなければならない、という思いにとらわれがちです。
売上を伸ばし、社員を増やし、拠点を増やす。
たしかに、会社が成長し続けることは重要です。
しかしその尺度を単なる売上とか社員数とか、拠点数と言った物量での判断だけで会社を測るのは危険です。
一昔なら、人口も経済も成長している、つまりパイが成長しているなかでしたから、単純に物量で測れる成長を目指せばよかったと思います。
しかし人口も経済も委縮し、社会が大きく変化をする中で、物量において右肩上がりに成長させようとするのはかなり危険な思考でしょう。
こういった思考は恐らく親から引き継いだものであったり、そこから抜けきれない社会の誤った認識の中で培われたものでしょう。
ある後継者の失敗
私が知る二代目は、まさに親と同じことをやり、親と同じことを言い続けました。
親は鬼軍曹的な厳しい社長でした。
それをマネしようとした後継者です。
しかし、古参社員にしてみれば、あとから入った若造に偉そうな顔をされるのは忸怩たる思いだったのでしょう。
先代がいるうちは何とか回っていたのですが、先代が亡くなってからは社員の士気は一気に低下。
そもそも事業自体が、将来性の薄い事業だったこともあり、売り上げはどんどん下がります。
頑張っても売れない営業担当の尻を叩き続け、ある時限界がやってきました。
幸いにしてその会社は、先代は無借金経営をしていました。
キャッシュフローは楽ではないものの何とか回っていたのですが、後継者は会社の経営を投げ出してしまいました。
そして会社を整理し、もうその会社はありません。
不幸中の幸いだったのは、社員がみな先代と近い年齢だったこともあり高齢化していたこと。
会社資産を売却をして、わずかばかりの退職金を支払い会社は無に帰したのです。
もちろん、会社をきれいに精算するのも一つの選択肢だとは思います。
しかしこのケース、後継者が後継者の役割を果たせず終わってしまったことを考えると、残念でなりません。
経営革新なくして後継者は務まらない
社会の変化を見るとわかる会社の在り方
20数年前。
私が社会人になって間もないころ、請求書は手書きでした。
まだ白黒コピーは1枚数十円かかっており、パソコンなんてない会社がほとんど。
そこから20年余りで、私たちが使う道具は変わりました。
今となっては、ボールペンや計算機を使う機会はごくわずか。
ほとんどがパソコンの中で完結します。
会社の備品はもネットを通じて購入し、
調べものがあればインターネット検索を使う。
そんな時代に、今まで通りの仕事で、お客様が満足し続けてくれるということはあり得るでしょうか?
私の会社においても、こんな変化がありました。
・文具の購入 →近所の文具店の人が定期的に御用聞きに来ていたが現在はアスクル
・資料や書籍購入 →以前は書店を探したが現在はAmazon
・チラシの印刷 →以前は印刷業者に頼んだが、現在はカラープリンターとプリントパックやラクスルといった業者の使い分け
・粗品の購入 →以前は文具店に相談したが、現在はWEB上のカタログで検索
・書類のやり取り →以前は郵便しか方法がなかったが、現在は大半をPDFでメールなどの送付が中心。実物が必要な場合は郵便のほか、宅配便などを利用
・出前 →以前は近くのお店に頼んだが、各種ケータリングサービスがWEBで選べるようになった
どのジャンルにおいても、より便利であったり、より安いものがどんどん出てきています。
こういったことはBtoC、BtoBを問わずかなり大きく変化しています。
生活、ビジネスの環境はこれだけ大きく変わっています。
そのはざまで、私たちの取引先リストから名前が消えて言った業者がたくさんある、ということです。
逆に商品・サービスを提供する側として、お客様の取引先リストから消えないためには当然のように進化が必要なのは言うまでもない話だと思います。
やっぱり後継者は親のマネをしてはいけない
そう考えると、親である社長・先代は、その時代に合ったビジネスモデルを作ったのでしょう。
そして今の起業家は、当然、今の時代に合ったビジネスモデルを作ります。
しかし、中小企業で代を継ぐタイミングのときには、一昔前のビジネスモデルをそのまま引き継ぎがちです。
その背景には、「親は正しい」という後継者の思い込みがあるのかもしれません。
そして周囲を見回してみるわけです。
同業他社がやってることを見てみると、「ああ、うちとおんなじだ」と思ってほっとする。
しかし、そこで見える同業他社は、最近できた企業でしょうか?
恐らく同じくらい長い歴史を刻んでいる企業ではないでしょうか。
つまり、その企業もまた、少し前の時代に合わせたビジネスモデルで商売をしている可能性があります。
お互い古いもの同士で徒党を組む。
そこに新しいビジネスモデルを引っ提げてやってきた新規参入者を「同業者」の枠組みから排除しようとする。
そういった仲間意識から外すことはできても、お客様は正直です。
どちらが自分にとって役に立つかを冷静に判断されます。
その結果、業界全体が一斉に落ち込んでいく、という現象が様々なところで起こっているのではないでしょうか。
後継者が取り組むべき順序
三つの役割をどの順番で意識するか
冒頭にあげた、後継者の三つの役割を再掲します。
①会社を潰さない
②社員の力を結集させる
③経営革新
これらはどの順番でやるかが、割と難しい問題です。
会社をつぶさないためには、まずはキャッシュフロー。
つまり財務に明るくなる必要がありそうです。
一方で、社員を集結させなければ、キャッシュの元になる売り上げは確保できません。
しかしそれはあくまで短期的な施策なので、長期的視野に立った経営革新もまた待ったなしの問題です。
つまりは、すべてを同時進行でやらなければならない・・・という話になりがちです。
しかし新米経営者(新米後継者)がそんなことできるはずもありません。
だから、どこに集中するかを、私なりの考えに基づいてお話しさせていただきたいと思います。
これがなければ始まらないもの
引き継ぐ会社の財務状況にもよりますが、キャッシュが途絶えれば即倒産の道をまっしぐらです。
ここさえ押さえておけば、倒産しません。
とはいえ、それは可能な限り、先代に任せておきましょう。
とにかく、日常のお金にかかる運営は先代に完全にお任せしてその間にやることがあります。
それは社員の力を集結させる、ということです。
これができなければ、短期的な売り上げアップはおろか、長期的な経営革新もできません。
会社の中に新しい仕組みや戦略が定着しないのは、組織の問題である、と指摘する人はかなりいます。
たとえば、USJを部位字回復させた森岡毅氏、ブルー・オーシャン戦略を提唱した
となると、まずは社員の心を使うことが大事であり、そういった下地があってはじめて経営革新が可能になります。
経営革新において向き合う相手
多くの場合、後継者は経営革新を行うとなると、まず先代と向き合おうとします。
その結果、親子の確執が起こり、社内がざわつくということが起こりがちです。
私はそうではなく、先代の承認を受ける前に、まずは社内の人間一人一人が経営革新を受け入れる状況を作るべきだと思っています。
そうすることで、社内の空気が変わります。
社内の空気が変わると、先代の考えも変わります。
とにかく社内を盛り上げれば、半分は実現したも同然・・・と言えば無責任すぎるでしょうか。
【ポイント整理】
・状況が許すなら財務に関しては当面先代に任せる
・後継者はまずは社員の心をつかむ
・社員の心をつかめば短期的な施策を打てるようになる
・合わせて長期的な経営革新に着手
・マネジメント体制を作ったうえで財務の委譲を受ける
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田村の日常
毎晩、仕事を終えると犬の散歩に出かけます。
犬種はカニンヘン・ダックスと、パピヨンです。
デカい私に似合わず、小さな犬です。
いつも向かう公園があって、そこに近づくとふわっとある香りが漂います。
キンモクセイが満開でした。
私はあまり花には関心がないのですが、キンモクセイだけは大好きです。
夜の公園で木に鼻を近づけるおっさん。
たぶん、周囲から見ると、怪しい風景だったでしょうね・・・。