後継者

ある後継者に欠けていた視点 ~後継者がイエスマンになるリスク

「ウチは先代とは結構うまくやってますよ。」
こともなげに語る2代目の方は結構いらっしゃいます。
「先代はもうほとんど会社にも来なくなったし、悪くない状態だと思いますよ。」
良かったですね・・・といいたいところですが、彼には一つ欠けてる視点があることに気付きました。

 


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後継者にとってバラ色の経営環境?

先代の実質的引退で分かった後継者の物足りなさ?

先代が実質的な引退を果たし、自分の思う形で仕事ができる。
後継者にとっては、バラ色のような状況ですね。
しかし、こういったケースでは気を付けないといけないのが、後継者の内向きな視点です。

 

実際彼は、とてもまじめで仕事ができる人間です。
だから、今までやってきたことを疑いません。
彼が見ているのは、外の世界ではなく、会社の中の世界。
社内はそこそこうまく回っていて、大きな問題もなく順調だといいます。

 

そりゃそうです。
社内の登場人物が、先代から後継者に変わっただけで、社員にとっては何の変化もないのですから。

新聞販売店で考える事業の未来

しかし、ほんの少し外の世界に視点を移してみたら、本当に大丈夫といえるのでしょうか。

よく私が例えに使う話ですが、今時の新聞販売店というのは非常に厳しい岐路に立たされていると思います。
新聞を取る家庭は減って、多くの人がネットに依存し始めてます。
1日2回発行の新聞より、タイムリーに記事が更新されるネットのほうが多くの人にとっては便利に映ります。
通勤の満員電車で新聞を開くのは気を使いますが、スマホ画面ならだれに気兼ねするものでもありません。

そして、新聞販売店の儲けの一つである折り込みも一時と比べると少なくなっているのではないでしょうか。

 

この新聞販売店、営業を頑張れば一時的には売り上げを上げることができるかもしれません。
しかし、5年後、10年後をイメージしたときに、果たしてその状態は続いているのでしょうか?

後継者の三つの役割の一つ

後継者は経営革新を行うべし

件の彼の業界もまた、新聞販売店ほど顕著ではないにしても、私の目から見れば衰退の始まっている産業です。
その業界に対して、ただ営業を頑張る、という一手に頼って今もビジネスを続けています。
しかも、そのことに疑問さえ感じていない様子なのです。

 

久保田章市氏によると、後継者には三つの役割がある、といいます。
その一つが、引き継いだ会社の経営革新を行う事だとおっしゃっています。
この事に、私も全面的に賛成です。

 

彼には、彼の業界で今後起こるであろうこと、今のままでは彼のビジネスが先細りになるであろうこと、今後彼が行うべきことなど、私の考え方をお伝えしました。
しかし、残念ながら今一つ彼には届いていないように感じられます。
恐らく彼は、同業者が同じ方向を向いて頑張っている、だからそれで何とかなるはず、と考えているようです。
同業者と足並みをそろえていれば、先代も、同業者も、社員も、取引先も、あまりあなたに反発することはないでしょう。
しかし、多くの同業者は自分たちの業界が沈んでいくことなどは、予想さえしていないかのような振る舞いの企業が多いようです。

社会の変化と社業の変化

ところで、今やほとんど見かけなくなった個人経営の書店の店主も、きっとそう考えていたに違いありません。
周囲の同業者も、過去のまま同じスタイルで本を売ってるから、私のところも大丈夫だろう、と考えていたのではないでしょうか。
本を買う人はいなくならないし、駅の近くにある書店で地域の住民とコミュニケーションを取りながらやっていけるはず。それが多くの本屋の店主の考え方だったのかもしれません。
しかし、少なくとも私に限って言えば、今や雑誌でさえ個人経営の書店で買う事はまれです。

かつては、事務所を構えて待っていれば相談者がやってきた弁護士事務所もCMを打ち、流れ作業のビジネスを築いています。
税理士事務所だって、企業会計の多くの部分をフリーの会計ソフトが担うようになってきました。
士業と呼ばれる、仕事の質が変わりそうもなかった業種でさえ、これだけ変化をしてきている時代です。
どんな業種であれ、これまでと同じことをやっていって上手く行くとはとうてい思えません。

 

”彼”の欠けてる視点は、お客さんが求めるものの変化なんです。
もっというと、社会の変化といえるかもしれません。

 

社内の組織は上手く回っている、先代ともうまくやっている、
けど社会で起こっている変化には全く無関心。
同業者を通じてしか社会を見ることができていないのです。

これは今の時代、非常に危険なことのように私は考えています。

そんな事を伝えた後、彼は言いました。
「確かに、そういう見方はしてなかったかもしれない。よく考えてみたい。」

 

彼のその後の事は伺えていませんが、私が絶対に正しいというつもりもないし、彼が間違いであるというつもりもありません。
そんな見方もある、という事だけを知って頂けたなら、あとは彼の選択です。
20年後お互いのやり方で上手くビジネスができていればいいよね、と後姿を見送りました。

 

 


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