非常識な後継者50の心得

非常識な後継者50の心得(34)周囲とのバランスを優先する癖に気付き、自分との対話を始めよう

親の会社を事業承継する後継者・跡継ぎ・二代目社長は、人との争いを好まない人が多いように感じます。
その結果、社内では親の意見や社員の意見を重視し、自分の意見は後回しにしているかもしれません。
あるいは、そのように意識的にというより、気が付けば「相手の意向」を先読みしすぎて、相手を傷つけぬよう、自分の意見を捨てて他者に無意識に同意しているかもしれません。

こういった状態は、短期的には組織に立つ波風を防止できるかもしれませんが、あまり長くは持たないのではないでしょうか。
特に、後継者・跡継ぎ・二代目社長自身のメンタルが非常に追い込まれてしまいがちではないかと思います。
結果、社内の雰囲気や人間関係にも悪影響を及ぼしがちです。

相手を優先する癖がついた後継者・跡継ぎ・二代目社長

自分でも気づいていなかった意思決定プロセス

実は、私自身、五十余年生きてきて初めて気づいたことがあります。
それは自分の意志決定プロセス。
どういうことかを例で示したいと思います。

例えば、複数名でお昼を食べに行こう!という事になったとします。
当然、「何を食べるか?」という話になります。うどん・そば?普通の日替わりランチ?サンドイッチ?などなど。
この時に、私はだいたいこう言ってました。
「特にこだわりはないから、皆の行きたいところで選ぶ」と。

この時点で、私は本当に何のこだわりもないつもりなんですが、ある時ふと気づいたのはぼんやりとお好み焼きがいいなぁ、と思っていたときもあったように思います。
けど、それも「あえて主張するほどの欲求でもないから」と口には出さずにいます。

そうやって、自分の意見を浮上させることなく沈みこめ、周りを優先する。
その場はそれで収まるのですが、自分の却下された意見はふつふつと澱のようにたまっていきます。
私の小さな「意志」は他人に受け入れられないどころか、まず自分に受け入れられずに沈められていくのです。
これ、実は自覚症状が出にくいのですが、とてもつらいことになります。

後継者・跡継ぎ・二代目社長が自分の夢を語りにくい理由

調和ばかりを考えて自分の意見を沈め続けた結果…

こういった思考パターンは、恐らく子どもの頃からのものじゃないかと思います。
たとえば、親が経営者だったりすると、親は比較的自己主張が強い人が多いと思います。
傾向として、外に向けた顔はいい人が多いので、子どもへのしつけも厳しめの過程が多いようです。
そして、親の跡を継ぐのは第一子である長男や長女であることが多い。

この事から考えると、そんな後継者・跡継ぎ・二代目社長は、親からの強いプレッシャーに逆らわないことを学びます。
そして、下に生まれた弟や妹との間に立ち、そこそこ争いが起きないように振る舞おうと頑張ります。
特に、「お兄ちゃんだから我慢しなさい」「お姉ちゃんなんだからしっかりしなさい」という事で、自我を抑えることを親からは学びますから、結果として自己主張をしない傾向にあります。
末っ子が上手に、しかも気軽におねだりをするのを、自分には出来ないなぁと思っている長男長女は多いような気がしますが、いかがでしょうか。

親からのプレッシャー、下の兄弟の自己主張の間で、後継者・跡継ぎ・二代目社長は子どもの頃から、自分が我慢することで家庭内の平和を保つ癖を持っているのではないでしょうか。
これが家庭を出てからの人生でも無意識に継続しているのではないかと思います。

その結果、状況を見て、その状況から考えた自分の方向性を出す癖を作ってしまい、そもそも自分が何を思い、何をやりたいかに鈍感になってしまっているのではないでしょうか。
後継者・跡継ぎ・二代目社長に「夢は?」と聞いても、固まってしまう人が多いのは、こういった環境から来る思考のクセが大きくかかわっているのではないでしょうか。

自分との対話を始めよう!

もし、そのように、自分の意思より周囲の状況を尊重する癖があるとしたら、それを一切捨ててしまえというつもりはありません。
なかなかそうできるものでもないですし、社会の中で生きていく術として身につけたものですから、捨てる必要はないと思います。
ただ、それでも自分の本心をわかってそうするのと、それを知らないのとでは大違いです。

今まではもしかしたら、「シチュエーション・ドリブン」とでも言いましょうか。
周りの環境に合わせて生きていた、という生き方をされているのではないかと思うのです。
しかし、これからは外形的にはシチュエーションに合わせた動きをしたとしても、自分は本当はどうしたいのだろう?という問いを常に頭に描くことをお勧めします。
会社の中で感じるフラストレーションや、自身の自己肯定感の低さに悩んでいるとしたら、実は自分で自分の考えをしっかりと尊重していない状態があるからではないかと思うのです。

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