親の会社を継ぐという事は親そのものと向き合うこと

親の会社を、「楽だから継ぐ」という後継者は思ったほど多くないと思います。
私も手放しで親の会社なら楽ができるという事はあまり考えたことがありません。
ただ一方で、最後の最後は家族だから何とかなる、という気持ちもなかったわけではありません。
がっちり出来上がった組織とは違い、多少のわがままは許されるかもしれない、という期待値がなかったと言えばうそになります。

さて、親の会社を継ぐというのはけっこう大変だ、というのが最近の後継者(候補)の人たちの認識じゃないかと思います。
それは、仕事が大変とか、仕事でトップに立たなきゃいけないから大変とか、組織を率いなければいけないから大変とかいう考え方もあります。
しかし本質的な部分は、親と向き合うところが問題になることがほとんどのように思います。

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親の会社を継ぐというのは楽な事なのか?

一般的認識と現実のギャップ

最近は少し様子が違うのかもしれませんが、私が若いころ、親の会社を継ぐというと決まってこんな風に言われました。
・将来は社長だね
・お金持ちはいいね
・将来安泰だな
・悠々自適だね
で、親の会社を継いで20年近くになりますが、現実になったのは「社長になった」ということぐらい。
逆に言うと、同世代の後継者・跡継ぎさんでも、未だ社長にさえなっていない人もいます。

一時期、中小企業の社長も羽振りが良かった時期もありますが、今はなかなか厳しい会社が多いと思います。
社長の収入のみならず、会社そのものがあまりよくない状況であるケースも多く、手放しで「いいね」と言える状況ではない会社が多いかと思います。
なかなか決算書を見せてもらえなかったけど、ある時見せてもらったときにはもはや後がないような債務超過だったりする話もよく耳にします。
逆に、会社のお金周りがそこそこ潤沢な場合は、社内のモラルが低下していることもあったりもします。

いろんなセミナーでご一緒させていただく一般のサラリーマンの方なんかとお話すると、「親の会社を継ぐことにそんなに苦労があるなんて思ってもみなかった」とよく言われます。

経営者は家業を継ぐ大変さを知っている!?

しかし、ネットの情報を見てみると、けっこういろんな起業家・経営者が親の会社を継ぐことについて語っています。
高橋がなり氏は動画で語り、ホリエモンはインタビューに応えていますが、どちらもなかなかな回答です。

ぼくは事業承継なんて基本的にめんどうだからやめちゃえ、って思っているから。引き継ぐ企業の価値がマイナスであることも多いし、たとえプラスであっても、残存者利益を狙うか、今のうちに売っちゃうかという二択があれば、僕は後者をおすすめします。精神的に楽だし、トータルの労力は少なくて済む。自分の好きなことができるしね。だって、多くの場合、感情論でしょう。親に申し訳が立たないとか、世間の目が気になるとかみたいな。

ホリエモンが「家業を継ぐ」のをおすすめしない理由(DIAMOND online)

ホリエモンが言う「感情論」を切って捨てるとなると、伝統を守るとか、会社の理念を存続させるという事は難しくなるかもしれません。
それも一つの選択かもしれませんが、多くの場合親子の事業承継は、かなりウェットな話であることは間違いなさそうです。

「仕事」という現場で展開される「親子」問題

親子の事業承継の難しさは「問題の本質が見抜けない」ところ

さて、色んな問題があるから中小企業の事業承継は難しい。
大企業のように組織がガッツリ出来上がっていて、そこの頭だけ変えるという物とは違います。
たとえて言うなら、大企業は巨大ロボットで、中小企業はアイアンマンスーツ。(余計わかりにくい?)
社長がスイッチ操作をするように会社を動かす大企業と違い、中小企業は社長の動きと会社がダイレクトにリンクします。
会社に人格さえも持ち込まれるのが中小企業です。

普通、仕事とプライベートはわけるべき、という考えがまだ支配的だと思います。
なぜかというと、それが混ざり合うと、けじめがつかないからです。
けど、親子の事業承継の現場においては、それが当たり前のように行われます。
人はそう簡単に頭を切り替えられるものではありません。

そもそも、社内で一番仕事とプライベートを分けようと主張する先代が、そこに家族関係を持ち込んでいるというジレンマが起こっているのが親子の事業承継です。
なかなかにややこしいのは当たり前と言ってもいいかもしれません。

さて、後継者・跡継ぎにとっては、その仕事をやっていくにあたっての適性、経営者としての適性など、いろんな要素が必要となってきます。
ここが難しいところですが、大きな会社なら業種は関係なく「経営者」としての手腕を持っていればどこでもやっていけます。
しかし、中小企業は現場と経営がほとんど境目なく入り乱れているところがややこしさの原因の一つ。
後継者・跡継ぎに関して言えば、現場の仕事のスキルも必要だけど、経営者としての戦略も必要。
これを一気に学んでいかねばならぬのですから大変です。

後継者は悩み多き人が多いですが、こういった、様々な悩みが混在するので本質がつかみにくいのです。
・現場での仕事について、自身のスキルについて
・経営者としての知識や資質について
・親と子(先代と後継者)としての人間関係について
で、ごっちゃ混ぜにして「自信がない」とか、「辞めたい」という事になっちゃいがちです。

悩みは細分化すると解決しやすくなる

こういった複雑に絡み合った悩みは、相互作用をしていることも多いのですが、絡み合ったままではなかなか糸口がつかめません。
そういう時は、今目の前で起こっている現象はどんな範疇の悩みなのかを細分化していくと対処しやすくなる可能性があります。
たとえば、
このままでは会社はダメだと思う→会社改革を立ち上げる→先代に反対される→反対を振り切ってやっても社員がついてこなかった
という一連の現象をとらえると問題の本質が見えない。
しかし、会社はダメだと思うなら、まずはどこを変えればいいのか?
会社改革に先代が反対するのはなぜなのか?
先代を説き伏せてやっても社員がついてこないのはなぜか?
という事にはそれぞれの原因があります。

とはいえ、細分化しても一つひとつにすべて対処する必要はたいていありません。
大事な肝を捕まえれば、連鎖的に改善されることが多い。
そして最も大事なのは、自分の心の持ちようを変化させることです。

親は自分を映す鏡

子である後継者は親から生き方を学んでいる

同族嫌悪という言葉をご存知でしょうか?
簡単に説明すると、似た人や物にたいして強すぎるライバル心をもったりしてそれが嫌い、という感情に発展したりすることです。
たとえば、スポーツで他のチームの上手い人は素直に「すごい!」と思えるけど、同じチームの上手い人には嫉妬心を感じるとか、
似たようなキャラで、キャラ被りがあったりすると相手とのライバル心がむき出しになっていたり。
もっと深刻なのは、例えばどんくさい同僚を見て、けっこうイラっとするシーンがあるとしたら、それは自分のどんくささを同僚の中に見ている可能性があります。

親子って、いがみ合うことが多い。
それはこの同族嫌悪がもとにあるんじゃないかと思います。
私たちは、親に似ています。
なぜなら、生まれてから人間形成をする過程の中で、社会での振舞いのお手本を親に設定しているからです。
頭の中に親の人格が入っているようなものなのです。

つまり顔かたちや遺伝子的な意味だけでなく、振る舞いや言葉遣い、価値観なんかも親そっくりなはずです。
だからこそ、そこに自分の嫌な部分を投影して親を見ます。
だから一度スイッチが入ると、親にイラッとしつづけたりします。

これは親子での経営だからというより、普通のサラリーマン親子でもありがちなシーンです。
しかし私たちは、プライベートでも仕事でも、濃くかかわらざるを得ず、逃げ場がないから親との関係悪化が止まらないのです。

人間関係は自分を写している

親子関係というのはいわば濃い目の人間関係です。
私たちは、仕事という責務の中で「相手をコントロールしよう」という気持ちが沸き上がってきます。
自分が正しいから、相手は自分の言う事をきくべきだ、という考え方です。
そういった感情を私たちが抱くのは、そもそも親が子供である後継者に対しての支配欲求を発揮するから、というところが起点なのかもしれません。
かといってお互いで支配しようと、マウントの取り合いをすると、結局親子の確執が悪化し会社さえ傾かせてしまいます。
しかし、人は自分の振る舞いを見て反応します。
だから私たち後継者が変れば、先代も変わります。

具体的には先代をコントロールしようとせず、先代を受入れるようになれば、先代も後継者である私たちを受け入れてくれるはずです。
親子の確執は、相手を動かそうというところから始まるのですが、その解決法はとてもシンプル。
自分が変ればいいだけなのです。

これはすぐに結果のあらわれることですから、騙されたと思って試してみてください。
驚くほどの変化を1か月以内に感じられるのではないでしょうか。

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