親から家業を引き継ごうとする後継者・跡継ぎは、多くの悩みを抱えている事と思います。
将来への不安、現在の自分の能力不足、社員とのコミュニケーション、先代との意見の違いなどなど。
ただ、これらは一つの問題を解決すると、ほとんどのものが解決することがあります。
それは私たち後継者・跡継ぎの心の状態です。
私たちは上手くいかない理由を外に求めがちですが、親子の事業承継がうまくいかないのは私たち後継者・跡継ぎの内面の問題が大きいのです。
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Contents
自信がない、能力が足りないとないない尽くしの後継者・跡継ぎ
後継者・跡継ぎは不足しているものにフォーカスしがち
家業があり、親の事業を事業承継しようと親の会社に入社した後継者・跡継ぎは、傾向として「ないもの」を気にする傾向があるのではないでしょうか。
代表的なものは、「自信がない」です。これを裏返すと「(将来が)不安」という言い方もできると思います。
もちろん、誰しもが初めて経験することに対しては、自身がなければ、不安もあります。しかし、それを超えてやるから自身もつくし、不安も解消されます。
逆に言えば、やってみなければ永遠に自信はつかないですし、不安は消えません。
よく、「自信がないからやめたい」、「不安ばかりの会社を辞めたい」という話を伺いますが、やってみないとこの感覚は消えません。
一方、新しいことをやってみるという事は好奇心を満たす行為でもあり、やったことのないことを経験することで病みつきになる可能性だってあるはずです。
不安の先に喜びがあるかないかの確立を五分五分だと考えたとき、50%の確率で良くなるかもしれないところへ行こうとするのではなく、100%の確率で不安を感じ続ける「現状維持」を選んでいると言えるかもしれません。
もちろん、動きたくても、先代の指導(?)もあり動けないという人もいるかもしれません。
ただいろいろと話を伺っていると、それさえも、「先代に止められてホッとしてる自分」を見つけることはないでしょうか。
ハッキリ言いますと、私自身そういう部分はあったと思います。新しいところへ踏み出したいんだ!という思い、それを先代にさせぎられたように感じるやり取りがあり、現状にとどまる。それが逆に、安心感を感じる物だったようにも思います。とまれと言われて、内心ほっとしていたかもしれません。
能力そのものよりも、チャレンジすることへの恐怖
こう言った考えを見てみると、どうも、私たちは前に進まない理由を「自信がない」「能力が追いついていない」と言いつつ、それを単なる言い訳として使っているような気がしてきます。
拙著『親の会社を継ぐ技術~後継者のゆく手をはばむ5つの顔を持つ龍とのつきあい方~』にも書きましたが、実は問題は自分たちの外ではなく、内面にあるのではないかというのが現時点での私の結論です。
私たちは親に押さえつけられている、という体をとることで、自分がチャレンジしないことを正当化していたりはしないでしょうか。
そのことをハッキリとさせる質問があります。それはこんなものです。
「あなたはそんなにつらいし、親の会社を辞めたい、と言い続けているのになぜ辞めないのですか?」
この質問を投げられて、きっと「従業員のために」とか、「会社を存続させなければ」とか、「親のために」とか、いろんな言い訳が出てくると思います。
もしその理由に本当にコミットしているなら、やめたいなどとは言わないはずです。
それでも辞めたいという言葉が頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消えしてるとしたら、理由はほかにあるはずです。
私は、「辞めて、自分の道を歩む勇気がなかった」というのがその時の偽らざる心境です。皆様はいかがでしょうか?
もし私と同じ思いなら、まずはそういう思いを自分が持っているという事をぜひ、受け止めてあげてください。
そういう自分が弱いとか恥ずかしいとか考えず、「ああ、自分は勇気がなかったんだな」とぼんやり受入れてあげてください。
つまり、私たちは本当は一度は言った以上は親の会社での責任を全うしたいのです。
だけどそれはそれでつらいこともたくさんあるから、そこから逃げ出したいと思います。けど、逃げる先がないから、逃げられない。
そんな八方塞がりの状況があるのではないでしょうか。
後継者・跡継ぎである私たちにとって大事だけど足りないもの
不安から逃げ続ける後継者・跡継ぎの心理
前段でお話ししたことが、本当だとしたら、私たちはいろんなものから逃げよう、逃げようとしていることが分かります。
親の会社でい続けることは不安でつらい。
けど、そこから飛び出すのも不安。
周囲を不安の壁で囲まれた結果、そこから抜け出せずにいるというのが私たちの現状です。
これを打破するために必要なのは、「不安だけどやってみる」という気持ちが必要です。
たとえば、初めての自転車、初めての鉄棒、初めても車の運転、初めてのアルバイトなど、すべて大なり小なり不安はあったと思います。だけど、やってみたわけです。
だから、うまい下手はあれど、そこそこはできてきているわけです。
しかし、仕事に関することで言うと、それなりに長いスパンで付き合っていくものなので、軽いノリでは決められない…と思っているかもしれません。
やり始めると辞めるわけにはいかない、と感じているかもしれません。
だから不安も大きいのですが、どうせ辞めるときはやめるし、上手くいかないときは上手くいかないんだから、軽いノリではじめてしまえばいい。論理的にはそんな風に考えられそうです。
それでも不安を超えられない。
それはなぜかというと、自分の事を信じることができていないからではないでしょうか。
自分を信じるにはまずは自分を受け止めることから始めよう
こう言った不安に耐え、乗り越えるためにはどんなことができるでしょうか。
そこでまずは、「不安」の成分を考えてみましょう。
不安の元は、自分が考えるストーリーです。
何かを始めるときに、こうなるかもしれない、ああなるかもしれない、といういろんな妄想ストーリーを頭に描くのではないかと思います。
その妄想ストーリーの中で、自分がどういう状況になる事を恐れているかというと、メンツがつぶれることを私たちが恐れているのです。
以前何かで読みましたが、たとえば生きるのがツラくなって自ら命を絶つ人は、本当につらいからそうするのではなく、「このままいくと自分の対面が保てなくなる」という時にそういった行動に走るのだそうです。
じゃあ、どんな時にメンツがつぶれるのでしょうか。
それは例えば、失敗をしてしまうこととか、自分の能力が不足していることが人に知られてしまうこととか、自信のなさが露呈してしまうとか、そんなところでしょうか。
実はこれは他人から見れば、案外どうってことのない話なのですが、自分一人が異様に気にしている事が多いようです。
あるいは他人はすでに知っていることも多いと思います。
隠そうとしても、にじみ出るものがあるんですね。
こう言ったときは、実は他人がどうこうという以前に、自分で自分を認めていない、受け止めていない、という事があります。
たとえば、自信がないというのはまさに、自分の能力が欠如しているという認識です。
これを「自分は大丈夫」と思い込もうという指南はたくさんありますが、それは飛躍しすぎです。きっと受け入れられない人が多いと思います。
そうではなくて、「ああ、自分は自信がないと思っているんだな」と自分の気持ちを認めてあげる事、受け入れてあげることが大事です。
こうすると何が起こるのかというと、今まで見ようとしなかった「自信のない自分」を自分が受け止めている、というような心理作用があります。
つまり、自分の存在を、自分の感情を、まずは自分で認めてあげるという事をしています。
自信がないから良いとか悪いとかいう判断は一切せず、ただただ、今ここに自身がないと思っている自分がいるんだな、と認めてあげます。
精神的な独り立ち
誰かに認められなくても大丈夫
後継者・跡継ぎの多くは、誰かの承認や賞賛を求めがちです。
たとえば親に認められたい、ほめられたいというのが代表的なものです。
他には、社会的に認められたいとか、賞をもらいたいとか。
こう言った他人の承認を求める行為は、前進するための原動力となる半面、「認められるかどうかは相手次第」なところがあります。
会社のトップになってなお、先代の承認・賞賛を求め続ける人も少なからずいらっしゃいますが、先代はあなたに合わせて賞賛の言葉を口にするとは思えないのではないでしょうか?
ということは、自分で自分を認めてあげることができれば、確実に自分は満足できるようになります。
なのに多くの人は、自分を責め続けているのです。
これではだめだ、
これでは足りない、
もっと頑張らなければ、
もっそ業績を上げなければ、
ときりがありません。
責め心からくる自虐はもうそろそろやめにしませんか。
そうすると徐々に不安は遠のいていきます。
なぜならば、自分の力を信用できるようになってくるからです。
どんな未来が訪れようとも、自分は何とかやっていけるという感覚を持つことができれば、不安は消え去ります。
その第一歩が、「今自分は不安を感じてるんだな」「今の自分は恐怖を感じてるんだな」「今の自分は、十分の仕事ができていないと感じてるんだな」と自分と感情の気間を作り、感情の中にいる自分を認めてあげることです。常に意識していると、ある日、大きく心境が変化する可能性があります。
そうすることで状況をフラットに見ることができ、不安や不満が少しずつ緩んできます。
たとえば、待ち合わせに友人が30分遅れたとします。
自分との約束を軽視しているとイライラして待つ30分もあれば、
ちょうど一人で思考を整理する時間ができたと思って脳内ひとり会議を行い有意義に待つ30分もあります。
どちらを選ぶかでその後の位置にの在り方も随分変わるのではないかと思います。
普通の人はそういった選択を無意識でしてしまっていますが、「自分は友達が自分の約束を軽視してると思ってるんだな」と感情と距離をとると、冷静になり、違う選択も可能になります。
感情に流されそうなときは、ぜひ試してみてください。
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