後継者

ルイ・ヴィトンのフェイスシールドから考える二代目社長の会社改革

コロナ禍において、今までのイメージとは違った商品が売れ始めている側面もあるようです。
その一つが、フェイスシールド。
マスクをつけなきゃいけないけど、例えば人前で話をするなどの場合、マスクだと声が通りにくかったり表情が見えにくい。
そこでアクリル製の透明なもので顔を覆うことで、唾液などの悲惨を防止するもの。

このフェイスシールドに、かのハイブランド、ルイ・ヴィトンが商品を発表したそうです。
一般的には1000円程度から買うことができるこの商品、皆さんはいくらぐらいの価格をイメージしますか?
少しだけ考えてみてください。

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「顧客を選ぶ」というブランドの戦略

Hans BraxmeierによるPixabayからの画像

普通の感覚を飛び越えた人だけが得られる栄誉

ルイ・ヴィトンに限らず、とびぬけた価格の商品を扱うブランドが結構いろいろあります。
こういう商品は、歴史であったり、ストーリーであったり、ブランドの持つ価値でビジネスが成り立っていると考えられそうです。
しかしどうもその本質は、「それを持つことができる人はある意味選ばれた人」というところにありそうな気がします。

たとえば、フェラーリ。
自動車のなかでも、ひときわ特殊な輝きを放つこの自動車メーカーのクルマは、いろんな意味で扱いが大変だというイメージがあります。
普段使いで気軽に乗れるようなものでもないでしょうし、メンテナンスも手間やお金がかかるようです。
ある人に聞いたのは、それを買うお金があったとしても、それなりにフェラーリを買うというのは勇気のいる行為だとおっしゃっていました。
買うという事だけでなく、それを所有し続けることにはそれなりに覚悟がいるのでしょう。

そういった利便性とか、実用性を自動車に求める人では持つことができない「所有・管理の難しさ」がそのフェラーリというブランドを特別なものにしているような気がします。

冒頭のルイ・ヴィトンのフェイスシールド。
私は、一般のものが1,000円程度というからなんとなく、1万円~3万円程度かな・・・なんて思いました。
けどたぶんこれでは、ちょっと話のネタに買えそうな人も多そうな気がします。
そこで正解を見てみると、税抜きで10万4千円とのこと。
この価格を見たときに思ったのは、「それなりに勇気をもって買う顧客だけを相手にビジネスをする」という思いを見たような気がしました。
一般的な値段から逆算するというより、一般的な値段から考えて「普通の人はここまで出さないだろうな」という価格設定が前提なのではないか、と勝手に推測しています。

ブランドの本質

私はブランドに関する専門家でも何でもありませんが、この事例を見て感じたのはハイブランドの本質は「普通の人が買うことのできない(あるいは買う気も起らない)値段設定なのにあえて買おうとする」という特別な顧客だけを相手にビジネスをしている、という事なのだという事です。
手軽とか、便利とか、使いやすいとは対極にある、「一部の人しか手にできない」もの、つまり、これを持っている自分は特別である、という事を感じさせるものなのであることがハイブランドの価値なのでしょう。

ただこれは、単に高い値段をつければいいというわけでもなく、当然それなりのストーリーやこだわりがあってこそできることだと思うのですが、最も大事な点はブランドは選ばれた人間の証であり、有名なブランドロゴはその選ばれた人という世界の住人であることの証のバッジのようなものなのだと思います。

二代目社長のビジネス

rawpixelによるPixabayからの画像

良くも悪くも何でも屋になりがち・・・?

世界的に知れ渡ったブランドと、自分が親から譲り受けた会社。
これを比べるのも何となく心地の悪い話ですが、ちょっとだけ参考にできるものがないかを考えてみましょう。
先にお放した通り、世界的なブランドの多くは、特に価格などを通じて、顧客を限定しています。
普通では考えられないほど高価だけど、それを乗り越えてきてくれる人だけが顧客であり、それ以外の顧客に対してはかなり排他的です。
ある高級自動車ディーラーや、ハイブランドの店舗では完全予約制で、一般の顧客がそうそう入れないようになっているところもあるという話を耳にします。
逆にこれが一般化してしまうと、顧客である層からきっとクレームが来るのだと思います。
誰でもが買えないからこそ価値があるのだ、と。

一方、一般の中小企業の場合、小回りが利くことが売りであることも多いです。
また創業当初は、どんな小さな顧客も、どんなに自分たちの方針に合わない顧客でも、お金を払ってくれるならそれはありがたい顧客。
だから誰にでも気に入ってもらおうと、それぞれ個別のサービスをしたり、個別対応で顧客の要望にこたえる形で事業が広がってきた背景もあるのではないかと思います。
そうやってサービスや商品が一般化すると、だんだんと他社との差別化が難しくなり、結局、値段か、小回り(つまり顧客のワガママに付き合う)重視か、利便性(24時間対応だったり納期の無理をきかせたり)という方向に触れがちです。

するとお金も残りにくい割には忙しいという状況になってしまう会社になってしまっているケースが多いように思います。

捨てる勇気

これをそこそこ効率が良い会社にしたり、そこそこ差別化戦略をとろうとすると、顧客を選んでいく必要が出てくるシーンがけっこうあると思います。
こういう話を先代はあまりよくは思わないし、二代目社長にとっても一か八かの要素が強いのでけっこう怖くて勇気がいるのですが、自分達が目指す方向があるとすればそこに合わないお客様とはたもとを分かつことが必要となるケースも少なからずあります。

たとえば、宅急便を発明したクロネコヤマトの小倉昌男氏は、当時、会社の最大の取引先との契約を捨てたそうです。
これは相当勇気がいることで、私も「お前にできるのか?」といわれるとちょっと足が震えます(苦笑)
で、逆に他の顧客が育ってからそうしたいという思いもあるのですが、多くの経営コンサルタントの方が経験則ではあるようですが、「まず捨てないと入ってこない」と口をそろえているのでそういうことなのかもしれません。

もちろん、できる事ならリスクは避けたいところなので、可能な限り準備をしてから、会社の方針に合わないお客様との関係を考えるというかたちをとりたいとは思いますが、感覚的に「この顧客とは今別れる必要がある」という直感がある場合には、その直感にかけてみることも必要なこともあるかもしれません。

一人で考えるか?みんなで考えるか?

このような重要な決定を、自分一人でする、というのが多くの二代目社長のパターンだと思います。
ただ一方で、社内の人間に問うてみるというのも一つの方法だと思います。
そのためには、それなりに常日頃から、社員とは胸襟を開く環境を作ることが大事だと思いますが、オープンな感じで相談できる組織になると、みんなが認識することで問題を共有できます。
もちろん最終責任はリーダーである二代目社長がもちますし、場合によっては「シャチョー、そんな顧客切っちゃいましょう!」と威勢よく言っていた社員が、本当にそうなって会社が窮地に追い込まれるとさらっと逃げてしまうなんてこともあるかもしれません。まあそこの責任は自分でもつ、というのが立場上避けられないところではありますから、そこだけはご注意を。

ただそういったことをさ強い引いて考えたとき、問題を共有することでできる一体感もあると思います。それはかけがえのないものになる場合もありますので、ぜひ、相談して見られてはいかがでしょうか。

 

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