後継者

後継者にとって古いものを捨てること

年末に近づくといろんなものを整理し始めると思います。
家庭では、いらない服を捨てるとか。
しかし、人によっては迷うかもしれません。
これを捨てたら、いざというとき「あの時捨てなければよかった・・・」なんて言うときが来るんじゃないかと後悔しそうで怖い。

一方で、いらない、とスッパリ捨ててしまう人もいるでしょう。
しかしそれは、本当は捨てるべきものではなかった可能性もあるんじゃないかと思います。

会社でもやはり、おんなじことが起こります。
後継者にとって、そのようなことに対する自分の判断の基準を持っておきたいものですね。

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空白の法則、というのを聞いたことがありますか?
私はこの言葉を、経営コンサルタントである神田昌典さんの著書で目にしました。
簡単に言うと、人の周りには常に何かで満たされている。
そこに新しいものを入れようとすると、まずは古いものを捨てて空白を作る必要がある、というものだったと記憶しています。

それを象徴する話があります。
ヤマト運輸を育て、宅急便を発明した小倉昌男さんの著書、「小倉昌男 経営学」にはこんな話が紹介されています。
親から引き継いだ会社は、他の運送会社同様、大規模の輸送をベースにしていました。
その中でも、小倉昌男氏は、最大の顧客であったデパートとの取引から撤退の撤退を決断したといいます。
会社の売り上げを支える、最大顧客を切ってしまったわけです。
理由は、その顧客のあまりにも理不尽な要求に、社員のモチベーションは下がりまくっていたから。

その時点で小倉氏は、従来の大規模輸送から個人宅配という会社の方向性の転換を進めておられたようですが、まだ個人宅配は世に定着する前のことだと思います。
業界の誰もが、個人宅配などビジネスとして成立するはずがない、とバカにする状況でのことです。
本書を読んで、そんな大それた決断、なかなかできるものではないな、と尊敬の念を抱かずにはおれません。
結果として、そのことが個人宅配への注力(大口顧客を失った以上もはや後がないためそうせざるを得ない状況となった?)となり、今のように個人宅配が当たり前の時代が到来しました。
たぶん、ずるずるとデパートとの取引を続けていたら、ヤマト運輸の今はなかったのかもしれませんし、個人宅配がここまで発達するにはもう少し時間を要した可能性も高そうです。
ヤマト運輸は、従来の大量輸送というビジネスを捨てたからこそ、個人宅配という大きな柱を手にできたのかもしれません。

 

ところで、私が父の会社を継いで間もないころ、お客様は神様です的感覚は強かったと思います。
ましてや私は、後継者であり二代目です。
なんとなく「父の作ったものを守る」という役目を強く意識していました。

となると、取引の大きなお客様はもとより、小さなお客さまであったとしても、失うことは自分にとって失態以外の何者でもありません。
だから、意見の合わないお客さまでも、何としてでも取引を続けていただけなければならない、と七転八倒していました。
その結果、お客様にとって当社のカラーが合わないお客様、当社の戦略や、方向性と合わないお客さまであっても、何とか引き留めようと努力していました。

しかし、それではお互いが不幸です。
そのお客様には本来、もっと意向とマッチした業者があるかもしれないし、私たちにとっても不自然な努力が必要という、効率の悪さがあるかもしれません。
そう考え始めたとき、そのお客様がいるべき場所が当社ではない、と感じたとき、別の業者をご紹介したりするようになりました。

お客さまだけではなく、一つ一つの仕事、商品、社員・・・
身の回りのすべてにおいて、手放すべきものは何かをある程度意識しています。
あるものを失うというのは恐怖ですし、周囲の評判も気になります。
実際のところ、古いお客様から「お父さんの時代は、そんなことは言わなかった」と何度唾を吐かれたかしれません。

しかし、何でもかんでも持っているものを持ち続けようとすると、行動はどうしても他人指向になりがちです。
Aという顧客に嫌われないようふるまう一方、Bという顧客にも嫌われないようにする。
結果として、軸も戦略もない、風見鶏のような経営をやらかしがちになってしまいます。
だから、手放すべきものは、手放すべきタイミングで手放さないといけないようです。

 

ところで、その時に、自分に課してる問いがあります。
「その決断は、逃げではないか?」
というものです。

単に嫌いだから、面倒だから、捨てる、手放す。
こんなことをやってしまうと、何も残らなくなるだけではなく、成長の機会を失ってしまいます。
私は数年前、やりたくない仕事をトコトン自分の手元から手放しました。
それが得意な人にお願いしたり、今それをやることが必要であろうと思われる人に任せています。
やりたくない仕事といっても、単なる好き嫌いというより自分が活かせるかどうか、という判断をしているつもりです。

時々逃げもあるかもしれませんが、意識してみていると本当に捨てる覚悟をしてるか、逃げているかがだんだんわかるようになってきます。
もちろん、未だに見えてない部分もたくさんあると思いますが、そこは少しずつ・・・ということだと思います。

中長期的にみると、「逃げた」場合はだいたい、似たような問題が数か月後、数年後、追いかけてやってきます。
何度も経験して、頭を打って、自分なりにそれを感じました。
だからもし、似たような性質(似たような形ではない)の問題がたびたび襲ってくる場合は、要注意だと私は考えています。

逃げることと、捨てることは違う。
そんなことを感じ始めてから、一時は余計に迷うことが増えました。
しかしそんな中、いろいろな判断をする中で、徐々に選択の仕方が、昔よりかは上手になったような気がします。
これもまた、練習が必要なのかもしれません。

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