創業者

親子経営で、なぜ親は子のやる気をそいでしまうのか?

ある時、先代が私を怒鳴りつけました。
「あの件はどうなってんねん!?
どうせ中途半端でほったらかしてるんやろ。」

私としてみれば、何のことだかさっぱりです。
よくよく聞いてみれば、あるお客さんからの問い合わせがあり、
私としては処理済になった案件の事を先方が持ち出したものでした。

事実関係のわからない先代は、とにもかくにも私が悪いと決めつけて怒鳴りつけたわけです。
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社員のモチベーションを下げてはいけない

やる気のある社員が腐った魚の目になるまで

今の時期、ビジネス街を歩くと、ピカピカの新入社員さんを見かけます。
どこかフィット感のないスーツ姿で、カバンも靴もまっさら。
表情には、多少の不安も見えますが、総じて目をキラキラ輝かせています。
誰もが初めての社会人生活に夢や希望を抱いて、一生懸命仕事を覚えようとしています。
しかし、それが1年、2年とたつうちに、段々とその目が濁り始めます。
きっと、同期で飲みに行っても、新入社員の時には希望に満ちた夢を語っているのでしょうが、
段々と会社や上司の愚痴が増えていき、いつしか、いつ会社を辞めるか?なんていう話になるのかもしれません。

はじめは、やる気満々だった社員が、肩を落とすようになる原因はどこにあるのでしょうか。
仕事で壁にぶつかったり、嫌なお客さんに出くわしたり、という事もあるでしょう。
しかし、原因は上司を中心とした人間関係にある事が多いそうなのです。

職種にあこがれ、上司との人間関係でやめる

たまたま見かけた資料に、興味深い事が書いてありました。
アメリカでの調査になりますが、社員が就職するのは職種にあこがれてだといいます。
一方、辞める原因のほとんどは、人間関係。
それも直属の上司との人間関係が、引き金となっている事が多いそうです。

社員は、やる気満々で入社しているわけです。
そして上司との人間関係でやめていく。
こう結論付けるのはあまりに短絡的かもしれませんが、社員のモチベーションを下げているのは上司なのかもしれません。

逃げることができない上司

普通の家庭でも親子の関係は難しい

ところで、親子経営における子供の上司は、多くの場合親であることが多いでしょう。
しかも、その人間関係は、会社を辞めたところで断ち切れない関係にあります。
仮に相性が悪かったとしても、逃げ場はないわけです。
一般のサラリーマンなら、会社を辞めれば、ウザい上司と顔を合わせずに済みます。
しかし、後継者はそうはいかない。

商売をしていない家庭で、年に数回の帰省や電話程度の関係でさえ、親子の関係というのは難しいと言われています。
距離を置きたがっている人は、けっこう多いのが実態ではないでしょうか。
それを毎日顔を合わせるのが親子での商売です。
しかも、それが嫌だと会社を辞めれば罪悪感が追いかけてくるわけですから、逃げ道はどこにもありません。
上司ろの関係は会社を辞めたところで、背後霊のように後継者に付きまといます。

親は子供を信用していない

冒頭の言葉を覚えていますか?
私は、親からこういわれました。
「中途半端で仕事を放置しているだろ。」と。

そんな事を言われるのは、その時に始まった事ではありません。
「あれをやれ、これはこうやれ、ちゃんとしろ。」
「そんなことするな、それはおかしい」
本人は意識していないと思いますが、親の多くは子供を信用していません。
子供の個性を伸ばすこと考えているというより、子供から見れば自分の言うとおりに動く操り人形が欲しいのではないかと思えるくらいです。
もしかしたら、親は自分の庇護のもとで、子供が生きているという実感が欲しいのかもしれません。

それでも、こうこぼすわけです。
ウチの二代目は頼りない、と。

過干渉が生み出す現代の病

こういった親の過干渉は、子供の成長に様々な影響を及ぼします。
理由の見えにくい不登校などはその典型のようです。
ああしろ、こうしろ、あれはするな、これはするな、と言われ続けた子供は、どうしていいかわからず動けなくなるのです。
幼少期の経験は、不登校などの形としてあらわれます。
親子経営では当然仕事にも支障をきたしますし、会社に行くのが嫌になります。

しかし、会社を飛び出せば、罪悪感が付きまとい、別の意味で苦しむ事を知っているのでその選択もできない。
そうやってうつ病になった仲間も実際に知っています。
結局、彼は首をつって亡くなったそうです。
皮肉な話ですが、彼がもっていた罪悪感は親に返ってきたのかもしれません。

なぜ親子の関係が上手くいかないのか

子供は親の操り人形ではない

なぜ親子関係が上手くいかないのか。
私が感じる回答はシンプルです。
子を信用していないからです。

本来、自分の子が一人の人間として、考え、自分の人生を生きようとしているときに、余計な手出しは無用です。
転んでひざをすりむいても、自分で立とうとしている子供がいたとします。
子供を信用していれば、その姿をじっと見守るものでしょう。
しかし、親子経営では、自分で立とうとしてる子供を、
「こまったやつだ」
と言いながら手を出すのです。
「ほら、まず手をついて、足を踏ん張って。」
子供にしてみれば、自分が思うようにやらせてくれ、と思うのですが先回りして強制される。
それも愛情の一つの形であることはわかります。
わかるんですが、子供の可能性や自主性の芽をつぶしている事にそろそろ気付いてほしいのです。
結果として子供に自分の能力を試す機会を与えていないのです。
親にしてみれば、「そんなことは上手くいかないことはわかってる。」から、やってはいけない、といいます。

それは、自力で立とうとする子供に、
「どうせ立てないのだから、やめておけ。」
と言っているようなものです。

親は子供を信用せず、子供の能力を伸ばそうともしないのです。
なぜなら、子供の能力が高まれば、親である経営者の居場所がなくなるからです。

親は自分のために子供を使う

年齢を感じ始め、出来ることが少なくなってきた親経営者。
これまでは、誰もが自分を頼って相談してきたけど、最近誰も自分のところに相談に来ない。
そういう状況は、本来喜ぶべきことです。
経営を継承するつもりであれば、という前提ですが。

しかし、そういった状況になると、親経営者は一抹の寂しさを覚えます。
結果、子供の言葉を遮り、独断で社内で演説めいた独演をやってみたり、社員に勝手な指示を出したり。
仮に、子供が社内の方針を決めていたとしたら、それを全く無視することもいとわないでしょう。
これは、生存競争なのです。
自分が、誰かから頼られるための。

子供をこき下ろして自分が代表の座に返り咲くことも割と多い事例です。
そうやって、また子供はやる気を失っていく。
そんなスパイラルの中でもがいているのが日常茶飯事に行われています。

これから子供を社内に迎える先代社長にお伝えしたい事

既に社内に、後継者として子供がいる場合、これから子供を社内に迎える場合、
先代社長にお伝えしたいのは、
子供の強みを伸ばすことを最優先してください
という事です。

厳しく育てるのも、優しく育てるのもいいのですが、優先すべきは後継者の強みを伸ばすことです。
余計なおぜん立てをしてください、と言っているわけではありません。
少なくとも、自分で立とうとする後継者の邪魔をしないでほしいという事です。
そのためには、失敗もさせなければなりません。
転ぶ前に杖を差し出さないでください。
そうやって、責任というものを学んでいきます。

ある意味、これは後継者にとっては過干渉よりキツイ時期を経験することになると思います。
ただ、この厳しさと、過干渉で受けるストレスとは質が違うものです。
早い時期にキツイ時期を経験したほうが、経営の継承という観点からはより良くなるはずです。

まずは気づくことから

色々と親経営者に対する厳しい意見を書いてきました。
こういうことを言うと、感謝が足りないとか、自分はどうなんだ、と言われます。
ただ、目的が経営の継承、という事であるなら、おそらく間違っている事を言ってるわけではないと思います。

もちろん、後継者にも問題があることも少なからずありますし、たいていはどちらかの一方的な問題ではないはずです。
後継者は弱い存在です。
だからこそ、彼に向ける心配と過干渉はやってはいけないものです。
先代が手を出せば、先代のせいにできる逃げ道を作るのですから。

ごくたまに、先代経営者からの相談のメールがあります。
状況は崩壊寸前。
もはや子供は口も利かない状態。
何とかできないだろうか?と。

そんな末期的症状になる前に振り返ってみて頂きたいとおもいます。
先代の言葉の端々には、後継者の自尊心を傷つける毒が仕込まれている事に。
先代の言葉や振る舞いが、後継者のやる気を失わせている事に。

 

もちろん、後継者は後継者で、そういった干渉にどう対応するかは自分で考える必要があります。
上司をマネジメントすることも、重要なマネジメントの一つと言われています。

 

親子経営での経営の継承は、まずは無意識に巻き起こされる負のスパイラルに気付く事がスタートになるのではないかと考えています。

 

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