この数か月の間で私が学んだ最も重要なこと。
それは人間が生き残るための重要な機能です。
その機能が、実は、私たちの問題を作り上げている。
その機能は、自身の生存を脅かすものを排除しようとする。
言ってみれば、敵を認識するわけです。
事業承継の中で敵がいるとしたら誰でしょうか?
先代ですか?
私はそう考えていた時期がけっこう長かった。
しかし、その考えそのものが、間違っていたのかもしれません。
私の著書です。
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皆さんは、命の危機を感じたことがありますか?
子どもの頃、車にひかれたとか、
がけや階段から落ちたとか、
車で事故りそうになったとか。
命の危機というのは大げさでも、何かしらのピンチを感じたことはあるのではないでしょうか。
もし、それがあまりにつらいくて耐えられない、というものならお勧めしませんが、
そうでなければその時の様子を思い出してみてください。
私の場合、特に印象深いのは足の骨を折ったときの経験です。
中学校の体育の時間、跳び箱を飛ぶときのことです。
思い切って無理めな跳び箱にチャレンジしてバランスを崩し地面に落ちていく。
この時には、周囲の音は耳に入らなくなり、スローモーションで景色が動く。
なんだか着地点だけが、スポットライトを浴びたようにみえていたのを覚えています。
頭のなかは意外と静かに、しかしフル回転をしていました。
とにかく、頭から落ちることを避ける。
この事だけが何をおいても優先されました。
そして、変な形で足をついていました。
どこでどう足を出したかは覚えていないのですが。
その後、我に返ると、周囲の雑音が戻ってきて、自分がどこにいるかが認識される。
心配げに声をかける友人の姿が見え、足の痛みを感じたのはそれからでした。
これ、どうやら脳に備わった機能なのだそうです。
生命の危機を感じたとき、人は不要と思われる情報の一切をシャットアウトして、自分の命を守る情報だけを見るようにする。
優先されるのは、身の回りの危険の排除です。
この反応は、リアルな生命の危機だけに反応するのでしょうか?
実はそうでもないようなのです。
たとえば、部屋が暑いとか、寒いとか。
お腹が空いたとか、空気が悪いとか。
程度の差こそあれ、安心・安全な環境から遠のくと、人は意識をそこに集中させる。
はやく、この状況を脱せよ、と警報を鳴らすのだそうです。
これは、身体的なストレスですが、精神的ストレスもまた同じ反応を生み出します。
辛い事がおこると、つらいところから逃げよという警報として、脳はつらい事に集中し始めます。
痛みから目を離さないようになってしまうのです。
さて、後継者の悩みの多くは、先代や自分の置かれた環境からもたらされます。
悩むということは、そこにストレスがあるわけで、安心・安全な環境ではない、ということに他なりません。
当然視野は狭くなり、本来なら耳を傾ける情報も耳に入らず、アドバイスも聞き入れない。
そうやって、どんどん自分の世界に入り込んで、孤独とストレスで潰されそうになってしまいます。
脳は、警報を鳴らします。
早くここから立ち去れ、と。
すると、会社を辞めるとか、先代を追い出すとか、とにもかくにもストレスのもとを排除しようと躍起になります。
親子対決の根底にあるのは、原始的な脳の機能だったのかもしれない、というオチ。
ストレスを受けると、視野が狭くなる。
ですから、普通ならできる判断を行うことが難しくなってきます。
この状態が、意固地な状態ですね。
こんな相談事例がありました。
会社の状態も悪くないし、社員とのコミュニケーションもとれている。
ただ、先代のワンマンぶりが気に食わない。
だからなんとかせねばならない、という話。
第三者が冷静に見れば、
「それ、そんなに焦ってやる必要ないんじゃない?」
と思うわけです。
「それとも、具体的な問題が発生していますか?」
と聞いても、これといった返答はない。
つまり、差し当たって困ったことがあるわけではないけど、先代を何とかしたい、というのです。
気持ちはわからないわけではないのですが、そこまで焦らなくても、と思うのです。
しかし、それは第三者の視点で見ているからであって、彼自身にしてみればストレスの元凶なわけです。
何より優先して排除すべきもの。
とはいえ、ここで人としての想いとして、先代を会社から追い出すというのは世間的にどうかと思う。
じゃあ、自分が辞めるのか辞めないのか、という極論に行ってしまうわけです。
蛇に睨まれた蛙状態だと正常な判断が下せません。
こんな時に、提案したいのは「視点の変更」です。
この視点をまずは、自分が蛙とすれば、蛇の視点で見てみる。
そしてさらには、それを観察する第三者の視点で見てみる。
それができるようになると、物事の構造が理解しやすくなります。
心の中で起こっている事が見えやすくなるんです。
後継者は、第三者の視点を持ってみてみる。
たぶんこれができるだけで、状況は随分変わります。
幽体離脱するような気持でトライしてみてください。
後継者の敵は、親でも、社員でもありません。
ましてや、自分自身でもありません。
どっぷり当事者としてかかわってしまう、危機回避脳の特性なのです。
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