後継者

下着市場のライバルが下着メーカーではなくなった現在

たまたま何かの記事で見かけたのですが、現在のワコールのライバルってユニクロなんですってね。
ワコールと言えば、日本の女性向け下着の草分け的存在で、恐らくずっとその業界をけん引してきたんじゃないかと思います。
そこに来て、ユニクロがそのシェアに迫る勢いと言います。
いったい何が起こったというのでしょうか?

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その世界の専門家では難しい時代?

顧客はストレスがお嫌い?

ワコールと言えば、戦後の女性用下着のトレンドを作り続けてきたリーダーだと思います。
女性を美しく見せるということに下着というジャンルからアプローチし、そのブランドは国内外にずいぶんと浸透していたのではないかと思います。
しかしここにきて、ファストファッションとよばれる比較的手軽でスタンダードなファッションブランドユニクロの攻勢を受けていると言います。
その急先鋒が、ブラトップというキャミソールにカップをつけた商品だと言います。

男性の私にはわからない世界なのですが、やっぱり女性はそういった下着による締め付けがイヤだったのかもしれません。
確かに美しく見せたいという思いはあるけど、楽なのがいいという思いもある。
ユニクロが有利なのは、「楽」な下着とそれでも大丈夫な、全体コーディネイトの提案ができるところかもしれません。

キレイに見せないけど、楽なほうがいい。
そんな要望をうまく叶えたのが、ユニクロの躍進のきっかけだったのではないでしょうか。

パラダイムが変わる時

たぶん、下着専門メーカーは、たとえばブラという一つの商品について、
どう作ればよりきれいに見えるか、
どういう構造にすれば着心地がいいか、
そんなことを一生懸命考えてきたと思います。
しかし、部分的な提案だと、どうしても限界があります。

自動車だとわかりやすいですね。
どんなにエンジンに心血を注いでも、ブレーキやサスペンションがダメならいいクルマはできません。
逆に、エンジンがそんなにハイパワーでなくとも、足回りがしっかりすると「楽しい車」と評されることがあります。

代入してみると、ワコールはエンジンだけを徹底手系に磨き上げた。
一方で、ユニクロは車全体のコンセプトを作り上げた。
この違いがいま、いろんな業界で起こっているような気がします。

Jody BloemersによるPixabayからの画像

顧客に違和感はまったくない

業種の隔たりを乗り越えるときの不安

これはあくまで想像ですが、ワコールが逆に「胸がキレイに見えるファッション」を提案したとします。
ブラウスだとか、ジャケットだとかを開発するわけです。
たぶん、社内では結構いろんな苦労があったり、反対意見が出たりするんじゃないかと思います。
そして実際に、失敗する確率もかなり高いと思います。

けど、顧客にしてみればたぶん、「ふーん、ワコールがトータルコーディネイトはじめたんだ」という程度の驚きじゃないでしょうか。
そのうえで、良ければ受け入れるし、そうでなければ受け入れない。
ただそれだけだと思います。

専門家というブランディングの欠点

専門家というと、特定分野に造詣が深いイメージがあります。
そうすると、顧客の求めるものが、その専門家の専門分野と合致すればよいわけですがそれがだんだんとズレ始めているんじゃないかと思います。
たとえば「下着の専門家」に求めるものは何でしょうか?
専門家はきっとこう考えます。
・いい下着とはなんぞや?ということを追求する

下着のみならず、例えば法律家や税理士、医師は、
良い法律家とは、税理士とは、医師とは、ということを考えると思います。
そしてその模範は、たいていそういった業界の「倫理規定」に規定されています。
そこには多くの場合「クライアント」の利益に資するとあるはずです。

しかし、税理士は「正しい税務会計」のために働いていたり、
弁護士は「法曹界の秩序」を守るために働いていたりします。
すごく斜めな視点で見ると、業界の専門性が高ければ高いほど、業界を守るために働いていることはけっこう多いものです。

顧客がそういったことに敏感に気づくようになったかどうかはわかりませんが、
ある違和感を感じ始めているのは事実じゃないかと思います。
「業界的に正しい事より、自分にとって心地のいい状態を作ってくれるプロと付き合いたい」
という人が増えてきたんじゃないかと思います。

Edward LichによるPixabayからの画像

人は基本、面倒くさがり

さて、下着問題については、これまでは下着屋さんは、いい下着を作ればよかった。
顧客は、いいものの中から選び、トータルでコーディネイトすればいい、という考え方だとおもいます。
けどもう顧客は、考えることが多くて、これ以上考えたくない、と思っているかもしれません。
そう仮定すると、そもそも楽できれいに見えるにはどうすりゃいいのよ?ということへの答えを求めてるんじゃないかと思います。
それをユニクロは持っていて、ワコールは持っていなかったということかもしれません。
(ワコールの名誉のために言うと、未だ、下着市場でのワコールのシェアは絶大です)

それ以外の業界でも、マニアックに、小難しく、専門選を追求するのはいいと思います。
けど、それをお客さんにわかってもらおうとしないほうがいいと思います。
それよりも、「こんなに簡単に、お客さんが思っていることは実現できますよ」というメッセージのほうが届きやすい。
だから、「過払い金請求」の世界は活況なんじゃないでしょうか。
良し悪し、好き嫌いは別として、「私はこんなにプロ意識をもってやってます」と言ってもなかなかお客さんは集まらないけど、「過払い金なら〇〇へ」と言えば一気に顧客が集まる。
手っ取り早く困りごとを解決してほしい、というのが大多数のお客さんの要望じゃないかと思うのです。

そういうお客さんに、ちょうどいいバランスで提案したのがユニクロだったのでしょう。

特定分野の専門家→解決の専門家

今までのビジネスの主流

これまでのビジネスの専門性は、自分の分野を業界的分類の中で深めていくのが専門性でした。
システム系の話だと分かりやすいと思います。

一昔前は、ネットにつながらなければ、
・PCの問題 →PCメーカーのサポートへ電話
・モデムの問題 →モデムメーカーや通信業者へ電話
・ハブなどの問題 →メーカーへ電話
・セキュリティソフトの問題 →ソフトメーカーへ電話
まあ、こういうことを一通りたどって、最後の最後、「いったいどこの問題か、わからなかった」ということはけっこうありました。

当時の私にとって、PCの専門家も、モデムの専門家も、ソフトの専門家も必要なかったんです。
必要なのは、ネットワークをちゃんと再開できる専門家です。
ネットがつながらない状況を打破してる専門家が欲しかったのです。

MartinelleによるPixabayからの画像

今のビジネスを見直してみる

ここで今の自分を見直してみます。
自分の会社って、たとえばPCメーカーだから、PCのサポートだけしておこうという感じでしょうか?
そうでなくて、顧客が困っていること、やりたいことをそのまんまサポートできる体制を作っている、もしくはその方向に向かっているでしょうか?
もちろんそれが常に正しいとは思いません。
しかし、もしも今の会社の考えが古いとすれば、そういったことをチェックするのが一番のヒントが埋まっているかもしれません。

中小企業の後継者として親の会社を引き継いだ場合、狭い世界の専門家であるケースが多いと思います。
その専門性は、強みではあるのですが、その強みを「顧客の意向」との中ですり合わせをしていく必要があります。
専門家としての正しさを追求するのみではなく、顧客の望みの中でその専門性をどう役立てるか?という考え方を持つ必要があるのではないかと思います。

もしそのずれがあるとしたら、後継者として見直していく候補の一つとして、考えたい部分ではないかと思いますがいかがでしょうか。

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