頑張れば頑張るほど孤立する。
親子経営の後継者は、そんな思いを持つ方が多い。
その理由はいくつかありますが、今回はリーダーシップを誤解している可能性について考えてみたいと思います。
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Contents
親子経営の後継者が置かれる環境
後継者に重くのしかかる5つのプレッシャー
親子経営における後継者は、いつもプレッシャー(ストレスと言い換えてもいいかもしれません)にさらされています。
ざっくり分類するとこんな感じではないでしょうか。
(1)親からのプレッシャー
早く成果を上げよ。早く実績をつくれ。やり方は俺のやり方を見習え。
こういったプレッシャーは常に受けているでしょう。
それは言葉として発せられるときもあれば、視線から感じるときもあるかもしれません。
親子で経営する際、子どもである後継者は、親のプレッシャーから逃れることは難しいでしょう。
(2)周囲の眼というプレッシャー
親子経営の後継者の多くは、親との比較から逃れられない。
つねに、親が基準で、親との対比で自分の偏差値が決められるようなイメージでしょうか。
周囲は口に出すかどうかはわかりませんが、そんな目で見ているように感じられます。
(3)失敗が許されないというプレッシャー
周囲の眼と関連しますが、後継者は失敗が許されないムードの中で仕事をしていることが多い。
なぜなら、大胆な試みがうまくいかない場合の批判者に囲まれている事が多いからです。
冒険をして失敗すれば「ほら見たことか」と言われることが予想できるし、既定路線で進みうまくいかなければ、「後継者の能力不足」を指摘される。
(4)ゴールが定められてるプレッシャー
目標はその人の能力に応じて決めるのが一般的でしょう。
しかし、親の事業を継ぐという前提で入社した後継者にとっては、経営者として事業を引き継ぐというゴールは、原則固定されています。
途中での軌道修正はなかなか難しい。
100点以外は許されないテストのような窮屈さを感じることでしょう。
(5)辞めることができないプレッシャー
どんなことでも、「辞めたいときにやめられる」というのは心を軽くしてくれます。
マラソン選手のインタビューで「いつでもやめてもいい、と思いながら、あとちょっと、あとちょっと、と走っているとごるが訪れる」なんて言うのを聞いたことがあります。
親子経営者の後継者においては、原則として途中での辞退は許されない印象が強い。
ほとんど味方のない状態で、闘う後継者。
見方によっては、「ボーン・アイデンティティー」のジェイソン・ボーンのようにカッコいいですが、現実ではそんなプレッシャー願い下げです(苦笑)
「頑張る」方向性
こういったプレッシャーに日々さらされながら仕事をしているともはや自分には選択肢は何一つ残されていないかのように世界が見えてくるものです。
あっちに行こうと思えば、このプレッシャー。
こっちに行こうと思えば、あのプレッシャー。
四方をプレッシャーに取り囲まれて、身動きできなくなってしまいます。
身動きできなくなった時、とる行動は「最も”今の”自分にとって安全な道」を進むことです。
将来のことは考えないようにして、今の心の安らぎだけを意識する。
そうすると、強者との衝突を避け、無難な道を進む。
本能的に、こういった選択肢をとる傾向があります。
結果として、先代をコピーすることを無意識に目指します。
先代の仕事のやり方、先代の考え方、そして先代のリーダーシップ。
たいてい昭和時代の経営者は、ワンマンなことが多いので、気づかないうちに自分もワンマンを目指してしまうのです。
組織を破壊するリーダーシップ
リーダーの資質を考えてみよう!
さて、ここで少し時間をとって、リーダーのあるべき姿を考えてみてほしいのです。
いくつか挙げてみてください。
1.
2.
3.
4.
・・・
いかがですか?
ここで、ホーガンアセスメントシステム社の調査による、
トキシックリーダーシップ(組織を破壊するリーダーシップ)の5つの特徴を上げてみましょう。
1.うぬぼれが強く、自信過剰で他者の意見を無視する「自己中心的」特性
2.野心的で、権力や影響力の強いポジションを求め、目標に対して集中力、エネルギー、スタミナを発揮する「権力志向」
3.社交的で愛想がよく、受けの良いイデオロギーを支持する「カリスマ性」
4.成長期に重大な問題やトラウマになる出来事を経験していたり、苦労話や起こりそうにもない話をする「ネガティブ志向」
5.共通の脅威に対し支持を集めたり、外部からの脅威という認識を新たに作り上げたり、大げさにあおったりして権力を正当化する「共通の敵づくり」組織を壊す「トキシックリーダー(Toxic Leader)」にならないために(富士ゼロックス総合研究所)
あなたが目指すリーダー像とかぶる部分、若干は見つけられないでしょうか?
表現は少しネガティブ寄りになっているものもありますが、実はこれまで「これぞリーダーシップ」と言われる項目がいくつか含まれています。
組織を破壊するマネジメント体系
ついでですので、組織のマネジメントについても見てみてみましょう。
リーダーがどんな施策で社員を動かそうとすると、組織は壊滅状態になるかです。
これは、ピーター.M.・センゲ著『学習する組織』(P24~26)を学習院大学各員教授である斉藤徹先生が講義資料としてまとめられたものを引用します。
• 評価によるマネジメント
短期的な指標、可視化された数値を重視
• 追従を基盤にした⽂化
恐怖による管理、上司を喜ばせることで出世
• 結果の管理
経営陣が⽬標を設定、社員に⽬標を達成する義務を賦課
• 正答 vs 誤答
専⾨的な問題解決を重視、意⾒が不⼀致の問題は軽視
• 画⼀性を重視
相違は解消すべき問題、減点主義でバランス優等⽣を重視
• 予測と統制
マネジメントすなわちコントロール、計画→組織化→統制
• 過剰な競争と不信
競争こそ⾼業績の原動⼒、社員の不安や不信は軽視
• 全体性の喪失
問題の断⽚化、組織の細分化、つながりの軽視
言葉として難しいと感じられる方もあるかと思うので、割とリアリティな言葉で意訳すると・・・
●今週、今月、今年などの売り上げやノルマ重視
●上司に従わなければ罰があり、上司を喜ばせれば出世する文化
●ノルマが上から降ってきて、そのノルマの達成度が管理される(過程は重視されない)
●物事が正しいか、誤りかで判断される(多数決的文化)
●マニュアル化、ルール化を重視し、個性を発揮させる土壌がない
●変化や突発性をよしとしない(前例主義)
●社員を競争させる文化(社内キャンペーンなどで優劣をつける)
●自分だけが良ければ、社内で生きていける社風
といった感じでしょうか。
ああ、昭和な会社、って感じですね。
ブラック企業的長時間労働の会社の社員が生き生きしている理由
こういった会社、今でも規模の大小を問わずたくさんあります。
たくさんというより、ほとんどの会社がこういう形ですよね。
けど、何となく違和感を感じることもあるんじゃないでしょうか。
たとえば、Googleだって、Facebookだって、メルカリやZOZOTOWNだって、なんか自由そうだな、って。
今の時代、好業績企業ほど、社内が自由。
たぶんこの会社の社員さん、けっこう朝から晩まで忙しく働いてると思います。
ある意味、ブラック企業とよばれても仕方がない、と思えるような労働時間である企業もあるんじゃないでしょうか。(推測ですが)
それでもだれもブラック企業とは呼ばない。
それは、会社と社員が対立していないからじゃないかと思うんです。
そう、対立していない。
実は、後継者が「頑張れば頑張るほど孤立する」というのは、後継者と社員が対立している証なんじゃないでしょうか。
新しい時代のリーダー
昭和時代の「上司は嫌われるのが仕事」という常識
ここまでの話をひとまとめにすると、昭和時代の新米管理職へのアドバイスとして全国で数限りなく使われた言葉がわかりやすいのではないかと思います。
「上司なんて、嫌われるのが仕事だよ」
職場を活性化したいけど、社員はついてこない。
自分も上から成果をつつかれ、頭を悩ませる新米課長に、
先輩がアドバイスするシーンとしてありがちじゃないかと思います。
この言葉には、成果を上げるには、社員に強制しなければならない。
社員の尻を叩くことこそが上司の仕事である。
そういう含みがあるんだと思います。
つまり、嫌われる(対立する)ことをいとわず、社員を動かせ(強制せよ)。
昭和の組織マネジメントは、そんな常識を持っていたのでしょう。
後継者の考えたいリーダーシップ
昭和のリーダーシップというのは、けっこうリーダーにとってつらい。
そんなツラいリーダーシップを発揮しようと、後継者は頑張っていて、社員とはコミュニケーションが難しくなり、その後継者を先代も後押ししてくれる様子もない。
まさに孤高の戦士となってしまうわけです。
しかし、エイミー・C・エドモンド著『チームが機能するとはどういうことか?』で、人を活かす(正式には組織の心理的安全性を創り出す)リーダー像を明確にしています。
これも学習院大学各員特別教授の斎藤徹先生の講義資料からピックアップしてみます。
• 直接話のできる、親しみやすい⼈になる
• 現在持っている知識の限界を認める
• ⾃分もよく間違うことを積極的に⽰す
• 参加を促す
• 失敗は学習する機会であることを強調する
• 具体的な⾔葉を使う
• 境界(規範)を設ける。超えたら責任を負わせる(やっていいことといけないことの限界値を事前に示しておく)
昭和的リーダーとは、真逆に見えます。
なぜなのでしょうか。
新たな術式を素早くマスターしたチームの特徴
今までのリーダーシップは、基本的には「リーダーが正しいから、リーダーの言葉に従え」的なニュアンスを含んでいたと思います。
答えが明確な時代には、これが効率が良かったと言えるかもしれません。
しかし、リーダーにミスは許されず、リーダーは常に身体的にも、知的にも、判断能力においても一番でなければ人はついてきません。
一方で、エイミー・C・エドモンドがイメージするリーダーは、組織の一人一人の能力を活かす組織です。
その著書の中では、心臓外科チームの事例がありました。
まったく新しい術式に自然になじんだ外科チームと、なかなかうまくいかず失敗続きのチームの違いは、
「チーム内で何でも意見が言い合えるかどうか?」だったといいます。
そこで、「未知の領域の仕事を成功させるにおいて、チーム内で自由に発言しあえる組織であるほうが有利である」といった風に結論付けています。
今の時代は、会社の方向性が見えなくなってはいないでしょうか?
従来の延長ではあと何年もつかわからない。
思い切った改革が必要なんだけど、どうかじを切っていいかわからない。
昭和的リーダーは、きっと一人頭を抱えているに違いありません。
しかし、未知の領域へ進むには、チーム全体の集合知がその解決法を見出すきっかけになる可能性は高い。
そのために必要な土壌づくりを行うために必要なのが、上にあげたリーダー像ということです。
無理をしないほうが結果はよい・・・かも?
上記のリーダー像を見てどう感じましたか?
「これだったら、素の自分に近いぞ・・・」
そう思った方、結構いらっしゃるんじゃないでしょうか。
私の知る限り、親子経営の後継者がすでに持っている資質とかなりかぶります。
なのに、それを隠して、わざわざ社員と対立するような自分を演じている、なんてことはないでしょうか?
「そうはいっても、5つのプレッシャーがあるし・・・」
と言いたい気持ちはわかります。
けど、良ーく考えてみると、これってあなた自身の受け取り方の問題であるものが多くありませんか?
だいたいはだれかに直接的に「こうなるべき」と言われたこと、ないんじゃないでしょうか?
いわれたとしても、言ってるほうは適当な発言だったりしないでしょうか?
気にしすぎている一面は少なからずあるような気もします。
まあ、そのあたりの話はまた違う場でお話しできればと思いますが、リーダーとしての自分の在り方を考える一助となれば幸いです。
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