後継者が喧嘩になりがちな親との対話に使いたい自己主張の方法

親子で事業承継を行う際、親と子の争いは少なからず生まれます。
その理由を簡単に説明すると、親子の話し合いは相手を従わせようとする主張だからです。
そして、そんなほころびが大きくなった結果、けんか別れという最悪の事態を招きがち。
しかし、もしそれを回避する方法があるとすればどんなものなのでしょうか?

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なぜ親子の確執は生まれるのか?

親子の生存競争

このブログの中では、このテーマについては何度もお話ししています。
従ってここでは、大まかな要約でお伝えしたいと思います。
結論から言うと、親子の確執は親子の生存競争です。
具体的には、親は自分の社内での立場を確保するため、無意識に他人を排除しようとします。
排除というより、依存させるといったほうが正しいでしょう。
それが後継者であっても、です。

一方、後継者は自分を認めさせたい、という思いがあります。
それはだれに対してか、というと親に対してです。

自分の立場を危うくしたくない親と、
自分の立場を確保したい後継者である子。
その旗取り合戦を無意識に繰り広げているのが、事業承継における親子の関係です。

言葉に現れる徴候

こういった徴候は言葉に現れやすい。
たとえば、後継者から見た先代である親の言葉は、「押しつけがましい」と感じます。
上から目線の発言が、癇に障るのです。
もちろん、先代はそんなつもりで言っていないのですが、なぜか子からみれば押しつけがましい。

あれこれ口を出されることは、自分が信頼されていない証と感じられるものです。
その都度、後継者は「ああ、自分は信頼されていないのだな」と肩を落とします。

先代にとっては、自覚のない押しつけがましさへの子の反発が理解できません。
「いいかげん、放っておいてくれよ」と子が主張したところで、親は任せているつもりであることも多い。
だけどついつい、子どもがつまずきそうに見えると、口や手を出してしまう。
これは、子に対する愛情でもありますが、自分の立場を確保する意味も裏には隠れているわけです。

イエスバット法は親子関係では使い物にならない

イエスバットは相手を受け入れない話法

相手との会話の中で、マイルドに反論する方法として有名なのが「イエスバット法」。
営業の教科書などでも紹介されているので、知っている人も多いと思います。
どういうものかというと、相手と違う意見を言う際、一度は相手を肯定しましょう、というものです。

たとえばセールスの現場でのこんなやり取りを指導しています。

【悪い例】
お客様「いやぁ、いい商品だと思うけど、ちょっと高いよ」
営業「いえいえ、全然高くはないですよ。なぜなら・・・」

【改善例】
お客様「いやぁ、いい商品だと思うけど、ちょっと高いよ」
営業「はい、確かに高いと感じられることもあるかもしれませんね。しかし、こう考えてみてください」

反論するのは両方同じですが、一旦相手の意見を肯定することで、反論がマイルドになる、という考え方です。

相手が欲しいと考えているとき、「買えない理由」を挙げている段階では確かに効くかもしれません。
しかし、そもそも真っ向から意見が対立するときには焼け石に水です。
なぜなら、「しかし」という言葉で、相手を真っ向から否定しているからです。
お互いの想いを話し合う際に、このような小手先での「受け入れてます」ポーズはむしろ余計に相手をムカつかせることさえあるかもしれません。

アイ・メッセージという選択

実は、心理カウンセリングなどの世界では、あまりこのようなイエスバット法はあまり議論されることはありません。
心理的に敏感になっているクライアントに、このような「わかっているそぶりをしているけど、わかるつもりもない」という姿勢ではクライアントとの信頼関係は築けないからなのでしょう。

カウンセリングでは、クライアントをまずはすべて受け入れることから入ります。
実は親子のような、非常にセンシティブな関係の中では、このカウンセリングの技術が有効なのではないかと思います。
その中でも、比較的簡単に使える自己主張の方法に、「アイ・メッセージ」というものが普及しています。

これは相手の言葉を否定することなく受け入れ、そのうえで自分の意見を言う方法です。

なぜ心理カウンセラーを参考にするのか?

いやいや、親子の経営と心理カウンセラー、いったいどこに共通点があるのか?
そんな疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
そこに対する私の答えは、親子で経営する、事業承継するというのは特殊な心理状態にある、と考えているからです。
親が子を支配する、という一般家庭にありがちな状態を、さらに経営者と部下という社会的な縛りで強化した特殊な状態です。
この濃厚な関係性の中での会話は論理的に行うこと不可能に近いと思います。
だから話し合いは常にけんか別れに終わるのです。

また、親には罪悪感があり、子には劣等感があるという、あまり好ましくない心理状況も散見されます。
そういった中では、どちらかがまずは相手を理解する、というステップが必要になってくるのだと考えています。

カウンセリングの基本は、相手の話に耳を傾け、理解し、尊重することです。
したがって、クライアントの考えに正しいか間違いかを判断して、相手に押し付けることではありません。
この役割を親子のいずれかが行う必要があるわけです。

本来年長者である先代がその思いに至ればいいのですが、より切迫した悩みを持つものが変化へは柔軟であることが多いと思います。
結果として、後継者がその役割を担うことが多いのではないかと思っています。

アイ・メッセージの使い方

「私はこう思う」

アイ・メッセージといっても、iPhoneのiMessageとは別物です。(念のため)
簡単に説明すると、「私は〇〇だと思う」というメッセージの発信の仕方です。
ありがちな議論では、「そうではなくてこうである」的な話し方が多くなりがちです。
つまりは、相手の意見を真っ向否定して、自分が正しいと主張するのです。

例えばこんな感じです。
先代「お前のためを思ってやってやったんだ」
後継者「そんなの私のためにはなっていないのです。あなたはこうするべきなんです」
という感じですね。

完全に後継者は先代を否定しています。

これをアイ・メッセージで語ると、
先代「お前のためを思ってやってやったんだ」
後継者「あなたがやってくれたことについて、私はちょっと辛く感じています。なぜなら、私はこうしてくれることを期待してるからです。」
という感じ。

要は、相手に何かを強制するのではなく、自分が感じた感情や、自分の考えを「私は」という主語で話すということです。

相手の考えは尊重したうえで、自分はこう考える、という構造で会話を進めます。
すると相手は、自分が否定されているわけではないので、落ち着いて話を聞くことができる傾向がある、ということです。

第三案の提示

さらに、お互いの胸の内を語り合ったのち、どちらかの意見の落ち着くとやはり勝った負けた、正しいか誤りかで双方を判定することになります。
教育学者のトマス・ゴードン博士は、この結論を「第三案」を創り出すことで解決すべきだ、と主張しているようです。
お互いの意見の内取り入れることができるものを取り入れたうえで、新しいアイデアをひねり出す。
そうすることで、お互いの自尊心が保たれることになります。

まとめ

ここにご紹介した話は、一見小手先のテクニックのようにも見えます。
しかし実際のところ、しっかりと「相手を受け入れる」という思いがもたなければうまくいかないことも多いでしょう。
単に言葉を治すというより、姿勢を変えていくというキッカケが言葉である、ということなのだと思います。

私自身、「なぜオヤジは自分の意見を聞き入れてくれないのか?」「なぜオヤジは自分の考えを受け入れてくれないのか?」と思っていた時期はずいぶん長かったと思います。
しかし一方で、先代である親のことを理解しようとしたことはあまりなかったような気がします。
主張はするけど、相手の主張は聞き入れない。
これはやはり不公平ですね。

親である先代の主張を聞かない理由の一つが、親の言葉の端々に感じる「押しつけがましさ」「上から目線的発言」でした。
親なんだから当たり前、という人は多いと思いますが、私にしてみればこれから会社を引っ張る主役は自分なのに、という思いがあったと思います。
親より勉強もしたし、実務上でも親を超える部分は持っているという自負もあるときから自分の中に芽生えました。
それでもいつも、親は上から目線。
その状態にずいぶんと、ムカついたものです。

しかし、「上から目線」と感じるメカニズムがわかるとその思いは少しずつ緩んできました。
これは親の問題でもあり、子である後継者の問題でもあるわけです。
これは心の余裕とも密接な関係があると考えています。
相手を受け入れる心の余裕ができたなら、おそらく多くのことが解決に向かっていくんじゃないかと思います。

こういった体験を通じて、本来の自分の姿を取り戻してください。

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