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誰も言わない「親と働く」という事の本質

実は、親子の事業承継では、誰一人語ることのない本質があります。
それは、目の前に現れる現象に気を取られて、なかなか見えない部分といえるかもしれません。
この本質部分を少し意識してみるだけで、随分と今の悩みが小さく見える可能性が高いのではないでしょうか。

こんにちは。
田村薫です。

きっと、大抵の子供なら、親に対する秘密の一つや二つはありますよね。
もし、あなたが男性なら、中学のころにはベットの下にいかがわしい内容の本を隠したりした思い出があるでしょう。
最近の子ならスマホで動画を見たりしてるんでしょうが(笑)
また、
「今日、俺さ、初めての彼女ができたんだよ!」
「私、さっきファーストキスしてきた!」
といった事をいちいち親に報告する人って、あんまりいないと思います。

けどね、友達とはしますよね、そういう話。

じゃあ、そんな友達との会話の輪に、親がいたとすればどうでしょう?
きっとあなたは、あなたではなくなるでしょう。
なんだかつまらない自分が、そこにいるわけです。

これが、親の会社で働く、という事の本質です。

 

 

お互い大人になったからと言って、なんでも包み隠さず親に話しますか?
少なくとも、私はそうではありません。
となると、親とともに働くという事は、自分を檻の中に閉じ込める行為とさえいえます。
親の会社を継ぎたくない、と語る後継者が理由に挙げるのは、

  1. 親の事業の将来性に対する不安
  2. 自分に経営者が務まるか自信がない

といったものですが、本当はこれは言い訳でしかありません。
窮屈な状況で働きたくなんかない、というのが心の奥底にある本心ではないですか?

 

しかし、同業の先輩も、コンサルタントも、そもそも後継者自身も、その本質を言語化できていないから、誰一人そう教えてくれないのです。

 

そういった自由を得ることができない檻の中で、動物園のライオンのようにぐるぐる回る。
餌が与えられれば、それを食らい、生き延びる。
毎日その生活を繰り返していると、それが日常になってしまいます。
初めのうちは、檻の中を好奇の目で覗くお客さんや取引先、無責任な第三者の顔が気になるのですが、そういった情報を遮断するようになります。
気にしないふりをするのです。

日常においては、そんな現実と折り合いをつけながらやってはいくものの、自分でいることを辞めることなどできるはずもありません。
だからふとした時に、正体不明の感情がわきあがってきます。

「このままでいいのだろうか?」
「仕事が楽しめない。」
「会社に行くのがつらい。」
「なんとなく不安。」
「人生を無駄に浪費してるような気がする。」

 

だから、何かを変えようとする。
会社を変える、仕事のやり方を変える。
もがけばもがくほど、檻の壁にぶつかり痛い思いをする。
傷つき、苦しみ、時には涙することもある。
そこであきらめる人もいるかもしれません。
しかし、あなたはまだあきらめ切れないからこんな文章を読んでいるのではないでしょうか。

「親を超える」という言葉がよく語られます。
それは、同じ仕事で、同じやり方で親より高い業績を残すことだと思われているようです。
確かにそれを実現したときには、一時的には癒されるかもしれません。
しかし、少しすれば、また気持ちの悪い感情がわきあがってくるのではないでしょうか。

「親を超える」の本当の意味は、親からの反対を恐れて行動できない状態から抜け出すことだ、と私は考えています。

さらに言えば、その檻は誰がつくったわけでもありません。
いかがわしい本の話や、初めての彼女(彼氏)の話や、ファーストキスの話を親としないと決めたのは自分です。
そうしなさい、といった人は誰一人いないはずです。

 

じゃあ、初めから家業なんて継がなきゃよかったんだ。
そう思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかしこれは、家業を継ぐ過程で凝縮され強調されるだけであって、どんな人にも多かれ少なかれあるもです。
わかりやすい形で現れるからこそ、檻の存在に気付きやすいわけですからラッキーといえるかもしれません。
まさにここは、個人の価値観ですが、映画「マトリックス」であったように、真実を知らずに平凡な日常を送ることを選ぶか、真実を知り本当の人生を取り戻すか、という分岐点が明確に提示されているように私には見えます。
ま、今だからそう言えるんですが、かつては家業を呪いましたけどね(^^;

 

ところで、檻を抜け出せ、と言っても「実は俺、中学の時に、ベットの下にエロ本隠してたんだよね。」なんてカミングアウトしなさい、と言ってるわけではありません(^^;

 

親に変に気を遣うとか、
親が絶対的に正しいとか、
いい子でなければいけないとか、
そういう感覚、捨てちゃっいませんか?という提案です。

そのコツは、心の中から「でも」という言葉を追い出すこと。

「〇〇したら面白いだろうな、でも・・・」
「△△できたらいいよね。でも・・・」

この「でも」の後にはたいてい、もっともらしい理由が並びます。
論理的で、隙がないのです。
そして、多くの場合はいかにも先代が言いそうな言葉が続くものです。
それはあなたの本心ではなく、「でも」の後の言葉を作り出すのは、あなたがつくった心の中に住む親のアバターです。

この「でも」を減らしていくと、少しずつ先代の言動が気にならなくなってきます。
小さいころから親に気を使い続けたのですから、そろそろ本音を口にしてもいいのではないですか?
そうすると、ちょっとずつできることが増えてくると思いますよ。

100ある「でも」を一気になくそうとすると、本人も周囲も相当に刺激が強すぎます。
まずは、自分の心の中の「でも」に気付く事から始めるのがいいかもしれません。

 

それだけでも、今まで見えなかったものが見え始めると思いますよ。

 

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  1. 2016年 11月 28日