後継者

親子経営の終着点はどこにあるのか?

ある会合で昼食を食べている際、たまたま同席した二代目経営者。
ぼそっと、頂いたご相談はどんどんエスカレートし、
彼は米粒を飛ばしながら語り掛けてきます。

「オヤジは口を出さないと言ってますが、僕はおやじに支配されているんです!」
思いつめた彼には、何が起こっているのでしょうか。





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私は、会社の事に口を出さない。
そんな風に言う先代経営者は時折見かけます。
実際には口を出さない人もいれば、口を出す人もいるようです。

今回ご相談いただいたのは、本当に口を出さないタイプの父を持った後継者。
それなのに、なぜその父に支配されているのでしょうか?

目は口程に物を言う

引退後すっぱり会社から身を引いた先代社長

今回たまたまお話しさせていただいた後継者は、古い知人でもあります。
実は、彼のお父様のことも私は存じ上げており、なかなかに鬼軍曹的印象を持った強いお父様だったように記憶しています。
そんな、仕事命!というタイプのお父様が社長を引退したのは、もう10年以上も前。
正直、当時は随分驚きました。

あの社長がおとなしく引退して、会社に関わらないなんて…と。

実際のところ、会社の実務に口を出すことはないようで、
「割と自由にやらせてもらってます」
という話をきいていました。
だからてっきり、代替わりが上手くいっているものだと思ったのです。

暫くすると、会社にもあまり来なくなり、名実ともに引退されたという話をきいていました。
しかし、現実はそうでもないようなのです。

口は出さないけど○○も出さない

「確かに、会社の事に口は出しません」
相談者の二代目社長は続けます。
「口は出さないけど、奥の席でじっと座っているんです。」

実務を離れて長い先代は、このところの会社の動きについていけているわけではありません。
しかし、会社の奥の席にどっかと座り、社内を監視している。
まぁ、それだけなら見て見ぬ振りもできるのかもしれません。
その二代目社長は言います。

「会社の財布は完全に親が握っています。」

この事が言外に何を言おうとしているかはおそらく二代目のかたなら察しが付くのではないでしょうか。

営業し、売上を上げているのは後継者率いる現役社員。
しかしそのお金を牛耳るのは先代社長。
なんともいびつな構造が見えてきます。

事務所の奥に鎮座する先代

この二代目社長は、何か新しい事を始めようとするときに必ず通らなければならない通過儀礼があります。
それは、会社の奥にある会長室に行き、机に向かう先代に話をしなければなりません。
声をかけると、帳面からギロリと顔をあげる先代。
この眼光鋭い先代に対して、何をやりたくて、どれだけ予算が必要かを事細かに説明しなければなりません。
当然、その過程で問われます。

「で、それでどれだけ効果があるんだ?」と。

まったく新しい事をやろうとしているのに、効果のイメージはつかみにくいもの。
自分なりに、「いける!」と思うからやりたいわけですが、なかなかいい加減なことも言えません。
いえ、きちんとしたデータを整理して出して説得しても、返ってくる言葉は想像できます。
そんなフワフワしたこと考えてないで、まじめに仕事しろ!

件の二代目社長は口ごもります。
何とか説得を試みて、決済が下りる時もあれば、下りないときもある。

「そんなやり取りの一つ一つに、疲れ切ってしまうんです。」
彼は、ポツリとそんな言葉を吐き出しました。

二代目の個性と先代の心配

二代目の好奇心

もともと相談のあった二代目経営者は、好奇心が旺盛なタイプです。
彼は販売業の会社を経営しているのですが、一件一件売り歩く今のビジネスモデルに限界を感じています。
社員に発破をかけるしか方法がなく、営業社員の力量だけに頼る会社の現状に問題意識を持っているわけです。
これを何とか転換したい。
販売の自動化であったり、マーケティングの実践であったり、やりたいことはたくさんある。
しかし、それをテストしようとすると、お金をかけずにやる事には限界があります。

だから、なんとか会社の仕組みづくりのために先行投資をしたり、経験を積んだりしたい。
しかし、
「ちょっと試してみよう」
というレベルの話でさえ、あの眼光鋭い先代の許可を得なければならないわけです。
二代目の推進力を試すかのような関所が、会社の奥にはあるわけです。

二代目経営者が個性を発揮できない理由

もし実際にこういったシーンを経験されていない方が見ると、
「そんなの、気にせず無理やり先代社長を説き伏せばいいのに。」
そんな風に思うかもしれません。

しかし厄介なのは、彼は生まれたときからこういった親子の関係性の中で生きているのです。
もはや、
何かをやりたいと感じる → 親にこっぴどく否定される → あきらめる
というループが体に染みついています。

このブログの中では何度もお話ししていますが、彼が先代に否定されていると感じている事のいくつかは、
もしかしたら先代にその意図はないものもあるかもしれません。
しかし、金庫番が金庫の前で監視している状況の中では、子供のころから繰り返すパターンの中で委縮してしまうのです。

先代経営者の視点は?

ここで先代経営者の視点を見てみましょう。
想像の域を出ませんが、先代から見た後継社長は仕事に対しての甘さや詰めの甘さを感じているでしょう。

たとえば、自分の子供が高校生になって初めて友人と旅行を計画したとします。
親としては、気になって仕方がないわけです。
ちゃんと現地にたどり着けるのか?
現地で変な事件に巻き込まれないか?
夜遅くまで街をうろついて危ない目に合わないのか?
などなど。

親は基本的に子供を、子供の能力や可能性を、信用していないわけです。
この子ならできる、とは考えていないわけです。

それは、子供が大人になっても同じです。
今までせっせと営業をしてたのに、ネット集客?
そんな浮ついた話がうまくいくわけないじゃないか。
この息子(娘)は、嫌なことから逃げてるんじゃないか?
楽して儲けようなんて甘い事を考えてるんじゃないか?
そんな心配を寄せるわけです。

親は子供を信用していないから、口を出したくもなれば、手も出したくなるわけです。

失敗しなければ学べない事

しかし、実際には失敗しなければ学びはありません。
簡単に儲けようと、集客用ホームページを作ろうという申し出。
これを先代が拒否したとしても、先代がいなくなればそのフラストレーションを発散するかのようにやりだすでしょう。
やらなかったとしても、それは後悔として二代目社長の心に深い傷を刻みます。

その責任を先代が取れるのでしょうか。
とれるわけがありません。
順序から言えば、ビジネスの前線を先に去るのは先代です。
というか、そもそも経営の継承はそれが目的のはずです。

その目的を忘れている先代経営者は多いと思います。
「いやいや、もう少ししっかりしてからでないと…」
先代経営者はそんなことをおっしゃいます。

おそらく、その日は永遠に来ないでしょう。
親子とはそういうものだと思います。

経営のバトンタッチは親子の成長物語

まとめに近い話をすると、経営の継承は親子がともに成長する過程で完了するものです。
親は子離れし、子は親離れする。
本来それは、子供の反抗期といった時期に完了するように計画されているようにも思えますが、ほとんどの場合はそこでは完了していないわけです。
それでも、別々の仕事をしていれば、物理的な距離が次第にお互いの依存心を薄めることもあるでしょう。
しかし、親子経営においては、本来、距離を取っているはずの時期に親子が毎日のように顔を合わせる状況に身を置く。
生物学的には、もしかしたら異常な状態といえるのかもしれません。

その関係を上手くマネジメントするなんて、なかなかできるものではないのです。

それをする唯一の方法は、身近にいる環境にいてなお、それぞれが何物にも依存(先代の場合は会社や後継者、後継者は先代)しない状態に地震を成長させる事にほかなりません。
いいか悪いかは別として、たいていは、この物語の終焉は親の死や就労不能状態で幕を引かれます。
しかし、理想的なのは双方健康な状況において、握手ができる状態でしょう。

そこを目指すためには、後継者のみならず、先代においても人間的成長が不可欠なのです。

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